第5話:新たな力
俺は、俺に恋する受付嬢アイリス(確定事項)のために、装備と服装を多少ではあるが綺麗にしていた。
こびりついた泥を落とし、安物の石鹸で身体もついでに一緒に洗い、心身ともにリフレッシュ。
「うーん、サッパリ。心なしかいつもより体が軽いぜ」
しかし、人間とは不思議なものだ。
一度綺麗にしたものを汚すのには、ひどく抵抗がある。
つまり……、俺は”ドブさらい”の仕事をしたくなくなっていた。
「……ふっ。いつまでもドブをさらっている俺じゃない。ステップアップの時が来たってことか」
ドブさらいは卒業。だが、そうなると稼ぎはスライム狩りだけとなる。
一匹倒してせいぜい銅貨一、二枚。
これではアイリスとの将来設計(妄想)に支障をきたす。
俺は決めた。
スライムも卒業し、『一角ウサギ』を狩る。
しかし、一角ウサギの角は危険だ。
一見、ただの角が生えただけウサギだが、それなりの速さで突っ込んでくる。
刺されたら普通に痛いし、出血する。せっかく洗った服も血で汚れる。あと痛い(重要)。
そんな危険な相手に対して、今の短剣ではリーチが短すぎて心もとなかった。
「そろそろ、コイツともお別れってわけだ」
俺は年季の入った愛用のナイフを指先でクルクルと回す。
「さて……新たな武器。この俺に相応しい、圧倒的リーチを誇る逸品を探し求めますか」
――数時間後。
俺は何の成果も得られなかった。
「なんだよ! クソ! 高すぎるだろ! 槍だの長剣だの、なんであんなに高いんだ? 完全に冒険者をカモにしたボッタクリ市場じゃねえか!」
武器屋のおっさんに「金がないなら木の枝でも振ってろ!」と追い出され、俺はぶつくさと文句を言っていた。
「あーあ、こりゃ大人しくドブさらいに戻るしかねーかな……」
そんな弱音が漏れた時、俺の視界に飛び込んできたのは、鍛冶屋の裏手にあるゴミ置き場だった。
「ん? これ……槍じゃねーのか?」
ゴミの中から突き出たそれ。
手に取ると、穂先が根元からポッキリと折れており、ただの重い鉄の棒と化していた。
「なんだよ、使えねーな。切っ先がなきゃただのゴミ……」
放り投げようとした、その瞬間。
俺の脳内に勝利の神託が舞い降りた。
「……待てよ。相手は所詮ただのウサギだ。わざわざ刺さなくても、ぶっ叩けばいけんじゃね?」
俺は、さっそく鍛冶屋のオヤジに交渉を持ちかける。
「オヤジぃ、これゴミだろ? もらっていいか?」
「あん! たしかにゴミだが鉄の素材にはなるんだ、タダってわけにはいかねえよ」
素材としての二束三文の価値。
それをふっかけられた俺は、懐から唯一の資産を取り出した。
「……じゃあ、コイツと交換だ! 中古だが、どこも欠けちゃいねえ現役のナイフだぜ!」
「あーん? ……まあ、屑鉄よりはマシか。いいぜ、持っていきな」
交渉成立。
俺はただの鉄棒を手に入れ、代わりにまともな武器を失った。
普通の冒険者が見れば、狂気の沙汰だろう。
だが、俺は確信していた。
「ひゃっはー! 槍のリーチを保ちつつ、一角ウサギを打撃で粉砕! 剣や槍で斬ると毛皮が傷ついて価値が下がるが、殴打なら皮は無傷! まさに一石二鳥の『資源保護戦術』だ!」
それに、鉄棒のこの無骨な様。……悪くない。
「ふっ。これからは鉄棒ではなく相棒だ。お前を『グングニールの棒』と名付けよう」
そうして俺は『グングニールの棒』と共に、一角ウサギの待つ草原エリアに赴き、狩りを開始する。
そしてまさに目論見通り、一角ウサギの突進を棒で叩き伏せ、無傷の毛皮をゲットしていく。
俺の天才的な戦闘センスと身体強化魔法、そして相棒『グングーニルの棒』によって大成功を収めたのだ。
「うひょー! これからはスライムより稼ぎが1.5倍だぜ! 以前のパーティでは5人で山分けしていた事を考えると、更に倍率5倍! 1.5掛けることの5倍で7.5倍!? 圧倒的勝利! ざまあ!!」
計算式がめちゃくちゃな気もするが、気分は最高だ。
新たな武器(相棒)と、効率的な稼ぎを手に入れた俺は、また一つ勝利を重ねてしまった。
「そういえば……、一角ウサギって肉も食えるのか? もし食えるなら、これからの飯代はタダ! 狩れば狩るほど食費が浮く! 勝利の節約術だな!」
俺は更なる勝利の予感に、胸を躍らせながら手元のウサギ――その食材に涎を滴らせるのであった。
ざまぁ!
次回、いざ実食!
※この作品はAIちゃんとの共同執筆となります。




