春の夕空、旅立つあなたへ
淡く綺麗な春の夕空。
長い冬を超え、夢奥島にも春が来た。
高校を卒業した明日香は、友人と共に就職する街へと旅立つ。
フェリー乗り場がある港で、色歌は明日香と別れの時間を過ごしていた。
「卒業おめでとうございます。明日から、憧れの新生活ですね」
「うん! めっちゃ楽しみ」
「今日が最後では無いので、短めに思いを伝えて終わろうと思います」
そう。永遠の別れではないのだ。
明日香が帰郷した際には再会を果たせるし、会いたくなったら水族館まで足を運べば良い。生きている限り、いつかまた会えるから。
「夢を叶えても、上手くいかない事や辛い事はあります。でも、それはどんな道に進んでもある事です。なので、夢見た職場で仕事を楽しんでください。明日香らしく生きてくれたら、私も安心です」
「ありがとう。たまに連絡するから、その時はよろしくね」
「ええ。楽しみにしていますよ」
「おばあちゃん」
明日香は色歌に駆け寄ると、子供のように抱きついた。
「私、おばあちゃんの為に生きるから――」
「明日香……ありがとう。では、一つだけお願いをしても良いですか?」
抱擁を解き、色歌は孫娘の顔を見つめる。
「いつか、曾孫の顔を見せて欲しいです。それまでは、何とか生き続けますから」
「分かった。約束する」
明日香が差し出した小指に、色歌も小指を絡ませる。
約束を交わした後、明日香は栄一の方に目を向けた。
「おじいちゃん。写真撮って!」
栄一に写真撮影を頼んだ明日香は、色歌の横に並びピースサインを作った。
色歌も同じようにポーズを取り、笑顔を見せる。
祖母と孫。十八年間続いた二人の日常が終わった。
「あとで写真送って! 私、もう行かなきゃ」
明日香は荷物を持ち、友達が待つフェリー乗り場へと走って行く。
少し離れた場所で足を止めた明日香は、振り返って大きく手を振った。
「またねっ!」
希望に満ちた表情の明日香は、港に居る誰よりも輝いていた。
違う場所で生きていく家族へ。
また会える日まで、どうかお元気で――
《読者の皆様へ》
珠景色の春風鈴を読んで頂き、ありがとうございます!
第7章はここまで。
色歌と明日香の物語、お楽しみ頂けましたか?
次の章で、珠景色の春風鈴は完結します。❀
最後まで読んでいただけたら、嬉しいです!
評価や感想もお待ちしています(*´꒳`*)
これからも、
美珠夏/misyuka作品をよろしくお願いします!
作者の宮本 でした ˙ᵕ˙ )ノ゛




