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珠景色の春風鈴  作者: 美珠夏/Mishuka
第7章 祖母と孫
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夢と進路相談


 小鈴(こすず)を交えて楽しむ夕食のひととき。

 何気無い雑談から始まり、珠景姫(みかげひめ)が居た頃の思い出話で盛り上がった。

 全員が箸を置く頃には、明日香(あすか)の進路の話題になっていた。


「私さ、水族館で働きたいんだよね」


「高校を卒業したら、島を出るの?」

 小鈴(こすず)の質問に、明日香(あすか)は迷うことなく頷く。


 夢奥島(ゆめおくしま)には水族館が無いため、夢を叶えるには島を出る必要がある。

 都会への憧れもある明日香(あすか)にとって、故郷を離れる決断は容易だったのかもしれない。


「いつから水族館で働こうと思ったんです? この前まで、雑誌のモデルさんになるって言ってたじゃないですか」


「現実的に考えて無謀。珠景姫(みかげひめ)くらい美人だったら諦めなかった」


「完成度が桁違いですからね。今テレビで頑張っている子達ですら、相手になりません」


「あの歳のまま現代に居たら、すぐにオファー来ちゃいますよね。モデルやアイドルとして活躍する姫様も、見てみたかったです!」


 珠景姫(みかげひめ)の事を楽しそうに語る色歌(いろか)小鈴(こすず)を見て、明日香(あすか)は微笑を浮かべる。

 話題が逸れそうになったタイミングで、栄一(えいいち)が口を開いた。

「それで、水族館に興味を持ったきっかけはあるのかい?」


「高校の修学旅行で、初めて水族館に行ったの。元々、海の生き物が好きだったから、本当に楽しくてさ。飼育員にお仕事の内容とか聞いて、私もやってみたいって思った。辛い仕事もあるだろうけど、あの環境なら絶対頑張れる」


 楽しそうに夢を語った後、明日香(あすか)はどこか不機嫌そうに口を尖らせた。

「でも、お母さんには反対された。一人暮らしなんて出来るわけないって」


「お父さんは何て?」

「そもそも最近話してない……ねえ、おばあちゃんはどう思う?」

 真剣な眼差しを向けられ、色歌(いろか)は自分の考えを口にする。


明日香(あすか)。あなたは、自分らしく生きられる環境に生まれたんです」


 今の時代に、長姫制度(おさひめせいど)は無い。

 戦争に勝つ為に命をかけて戦う事も無ければ、過酷な環境での苦しい生活も強いられていない。自分の意思で人生を決められる環境を、明日香(あすか)は生きているのだ。


 平和な世界は当たり前じゃない。

 戦争が起きなくても、災害や事故によって命が奪われる事もある。

 夢を叶える前に、十七歳で途絶えた人生もあるのだ。


「本気で叶えたい夢があるなら、迷わずに挑戦してください。失敗しても良い。自由に夢を追い、幸せに生きてくれたら、それで良いんです」


 色歌(いろか)は切ない表情で微笑む。


「それが私達の幸せだから――」

 姉妹の思いが重なり、一つの声になる。

 色歌(いろか)の言葉を受け取ったは明日香(あすか)、真剣な表情で深く頷いた。


明日香(あすか)ちゃん」

 名前を呼ばれ、明日香(あすか)小鈴(こすず)の方に顔を向ける。

「絶対に叶えてくださいね」

「うん。頑張る!」


「これは、夢を叶えるための魔法の言葉なんです」

 一瞬、色歌(いろか)の事を見た後、小鈴(こすず)は笑みを浮かべた。


「私も応援していますよ。悩んだ時は、いつでも相談してください」

「おじいちゃんも明日香(あすか)の味方だから、たまには頼ってね」

 色歌(いろか)栄一(えいいち)からも応援の言葉をもらい、明日香(あすか)は嬉しそうに笑う。


「絶対に叶えるからっ!」

 夢と希望に満ちた表情の明日香(あすか)を見て、色歌(いろか)小鈴(こすず)と目を合わせて微笑む。


 長姫制度(おさひめせいど)を終わらせて良かった――


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