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珠景色の春風鈴  作者: 美珠夏/Mishuka
第6章 新しい時代の幕開け
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夏の夕陽を想う五色の花


 夕陽の光を浴びる桜は、綺麗に輝いていた。

 中庭の中心で咲く桜の前に並び、自然な笑顔を見せる五人の女性達。


 神島色歌(いろか)

 彩美(あやみ)小春(こはる)。彩美小鈴(こすず)

 侍屋敷(さむらいやしき)風瑚(ふうこ)。侍屋敷舞風(まいかぜ)


 珠景姫(みかげひめ)の侍女として生きた五人は、それぞれの道を歩み始める。

 だから、最後に記念撮影をしておきたかった。

 あの頃の姿を写真に残したくて、侍女だった時の服装で集合している。


「では、撮りますよ! 皆さん、笑顔でこっちを見てくださーい」

 写真家に声をかけられ、侍女達はカメラの方に顔を向ける。


 いつかの日常が、そこにはあった。

 この光景は、もう二度と見られない。


 桜と笑顔が咲く春に撮った一枚の写真。

 特別な一瞬が過去になり、大切な思い出に姿を変える。


「はい! これで終わりになります」

 カメラの横に立ち、写真家は一礼した。

 感謝を込めて、色歌(いろか)達も深く頭を下げる。

 記念撮影が終わると、色歌(いろか)に視線が集まった。


「改めて、結婚おめでとう」

 最初に口を開いたのは、風瑚(ふうこ)だった。

「今まで苦労した分、これからは幸せに生きて」

「ありがとうございます。風瑚(ふうこ)さんも、自由に生きてくださいね」


「そうする。私は一人で生きる方が楽だから、今の暮らしを続けていくよ」

 風瑚(ふうこ)は清々しい表情で話した後、色歌(いろか)を見て微笑む。

「またね。色歌(いろか)

「今までお世話になりました。どうか、これからもお元気で」

 お別れの言葉を伝えると、風瑚(ふうこ)色歌(いろか)の事を抱きしめてくれた。

 初めて感じる風瑚(ふうこ)の温もり。

 離れてしまうのが惜しくて、色歌(いろか)はぎゅっと抱きしめ返す。


「大丈夫。また会えるから」

 色歌(いろか)に優しく声をかけた風瑚(ふうこ)は、ゆっくりと抱擁を解いた。

 顔を隠すように背を向けると、風瑚(ふうこ)は中庭の入口の方へ歩き出す。

「私はこれで終わり。先に行ってるね」

「うん。ゆっくり歩いてて」

 遠のく風瑚(ふうこ)の背中に、舞風(まいかぜ)が言葉を返す。

 この流れも、どこか懐かしい。


 舞風(まいかぜ)とゆっくり話す時間は、いつも風瑚(ふうこ)が去った後に訪れる。 

「色ちゃんも、ついに結婚かぁ」

 感慨深そうに呟き、舞風(まいかぜ)色歌(いろか)をそっと抱きしめる。

 母の温もりに似た安心感を与えてくれる舞風(まいかぜ)を、色歌(いろか)もぎゅーっと抱きしめた。


舞風(まいかぜ)さんは、お母さんみたい」

 子供のように本音を吐露した色歌(いろか)に、舞風(まいかぜ)は穏やかな声で告げる。 

「ふふっ。実はね。もうすぐお母さんになるの」

「えっ!」

 抱擁を解き、色歌(いろか)舞風(まいかぜ)に目を向ける。


 舞風(まいかぜ)はお腹を優しくさすると、『本当だよ』と幸せそうに笑った。

 まさかの報告に、近くで待機していた小春(こはる)小鈴(こすず)も驚いている。

「あ、風ちゃんには内緒ね!」

「まだ伝えていないんですか?」


「いざ報告しようと思うと、なんか緊張しちゃってねぇ。いずれちゃんと伝えるつもりだけど、まだまだ出来なそう」


 ふと思う。

 長姫制度(おさひめせいど)が撤廃されていなければ、舞風(まいかぜ)の子供が次の姫になっていたかもしれない。

 その事実に気づいた瞬間、珠景姫(みかげひめ)の命が報われた気がして胸が熱くなった。


『――私はこの命で未来の子供に自由を与えたい』


 姉さんの言葉が心に重く響き渡る。

 あの頃はまだ分からなかった。


 次の姫は、色歌(いろか)達の世代の子供が対象となる。

 珠景姫(みかげひめ)風瑚(ふうこ)舞風(まいかぜ)小春(こはる)小鈴(こすず)

 五人の誰かが最初に産んだ女の子が、姫の宿命を背負う事になるのだ。


 大切な人の子供が苦しむ未来は、私も見たくない。

 全てが終わった今だからこそ、素直にそう思えた。


「いつか、この子を連れて遊びに来るね」

「また会える日を楽しみにしています。どうか、お元気で」

「堅いなぁ。色ちゃん、またねっ!」

 笑顔で手を振る舞風(まいかぜ)に、色歌(いろか)も手を振りかえす。

栄一(えいいち)君と、末長くお幸せに!」

 舞風(まいかぜ)は大きな声で思いを伝えると、風瑚(ふうこ)を追いかけるように歩いて行った。


 侍屋敷家(さむらいやしき け)の二人は、島の反対側にある夢岬(ゆめみさき)という地区に住んでいる。

 今日はの色歌(いろか)結婚式に参加する為、わざわざ帰郷してくれたのだ。

 これから政風と共に、帰路に着くだろう。


 残された色歌(いろか)は、順番を待っていた小春(こはる)小鈴(こすず)に目を向ける。

 すると、先に小春(こはる)が駆け寄って来た。


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