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24.告白とさよなら

コツコツと歩を進める度に足音が響く広い聖堂内

規則正しく建ち並ぶ柱にはこの世界に存在すると言われている精霊神達の彫刻が施されている

天井はドーム状になりレスティアの神話をモチーフにした絵画が高い天井一面に描かれていて

万物の神と精霊神に祈りを捧げる中央祭壇の後には

この世界の聖母とされているセレスティナの像がありその後ろからは聖母セレスティナが産んだとされる精霊神がステンドグラスに描かれてそこから差し込むように青と白の光が聖堂内を照らしていた



今、この場所にいるのは私とセナ王子二人だけだ。

神官もいない、一緒に来ていたセバスさえ外で待機している。


この場所はレスティア国内で最も精霊の加護が強い場所で外部からの攻撃は全て遮断されるような強力な結界が聖堂全体に施されている

その為、聖堂内においても争い事を持ち込む事はこの神聖領域を穢すに等しい行為であるとし、武器の持ち込みも厳重に禁止されている



「…車の中以外で、周りに護衛の一人もいないなんて、ここ以外ありませんね」


「お前も俺も周りが放っておいてくれない身の上だからな…だからここしか無いと思った。

…婚姻の儀の前に、俺達が正式に夫婦となる前にどうしてもここに来てお前に伝えたかった事がある」


聖堂内を先に進むセナ王子が祭壇の前で振り向き私の前に片膝を付いた

そうして私を強い眼差しで仰ぎ見て言った


「ユリアナシンフォニア お前に俺の愛を誓う

俺の心全てをお前ただ一人に捧げよう

だから、どうか俺の妃となり、一生俺の側にいてくれないか。国や家の為では無い、どうか俺の為に共に生きてくれ、お前無しではもうどうにも生きられそうに無い。

どうか信じてくれユリアナ、お前を、お前だけを愛しているんだ。俺のものになってくれ」


それは純真で直向きな愛の告白で

その告白に胸を打たれた私の瞳からはポロポロと涙が溢れ頬を濡らした

心が震えていた 愛しい 愛しい 愛しい と

そのただ一つの感情が際限なく心に降り注ぎ

由梨(わたし)の心を満たしていった


「…セナ様、貴方を信じます。

貴方が私に心を下さるのなら、由梨(わたし)の心は貴方のものです。愛してる。貴方だけを、

きっとずっと、この先どんな事がおきようとも、

どこへいこうと、ずっと貴方を愛します。

貴方の側にいる事がゆるされるまで、どうか私を離さないで、ずっとずっと貴方の側にいたいのです」


私はその場に崩れるようにしゃがみ込んで両手を広げてセナ王子の首に腕を回した一連の動作にセナ王子が両手を広げ私を受け止めてくれた

片膝をついていたセナ王子は体勢を崩してそのまま泣きじゃくる私を包み込むように抱きしめて祭壇にもたれかかり、私が落ち着くまで

ずっと愛している、好きだと囁きながら髪をすいて頭を撫でてくれていた





「…ここでは口付けをされないのですか?」


いつもなら空きあらばキスの雨が降り注ぐのにセナ王子はなんだか我慢しているように見える


「っバカ。お前、こんな状況で口付けなどしてそれだけで済むわけ無いだろ!ただでさえもう俺は限界ギリギリなんだよ、でもお前は公爵令嬢だし、大事に大事に育てられた身の上なのはわかっているから初夜まで我慢してやろうと必死で耐えているんだろ?それを…自ら誘惑するなど…ユリアナは俺にここで襲われたいのか?」


セナ王子が真っ赤な顔で私から顔を逸らして私の肩を掴み身体を離した


「ご…ごめんなさい。

そんな我慢してくださっていたなんて私知らなくて、口付けてほしいなんて…思ってしまって」


「〜〜っ…だからそれも誘惑になってるんだって…いい加減きづけ」


セナ様は熱を孕んだ瞳を一瞬だけ見せた後、その瞳をギュッと閉じて直後、私の頭を両手で支えて収まりきらなくなった劣情をぶつけるように熱い唇を私のそれに押し付けた

唇を離さないまま長い長い沈黙の後でようやく二人の唇が離れて、キスはしないような事言ってたのにいきなりきたそれに呼吸も忘れてその、感触に酔いしれていた私から乱れた呼吸が漏れる


見ればセナ様も首まで真っ赤になって呼吸を乱していた。

(やばい…かっこかわいい…)


色気がすごく直視出来ずに私はすぐに俯いた


「…もう次は我慢出来ないから発言に気をつけろ。

舌も入れないで離してやれたんだ。俺すごく無いか?あーーー、これ以上二人きりとかやばいだろ

もう出ようユリアナ。お前の貞操の危機だぞ」


「え!?そんなに!?」


「そんなにだよ!!この小悪魔が、もうお前覚えておけよ、これ貸しだからな。婚姻したらもう今日我慢した分も上乗せだから、俺のやりたい事全部する!絶対する!今決めた」



ぜえぜえあらい息をつきながらセナ様は床に手をついて何かすんごく耐えているのがわかるその様子に

大丈夫かと心配になり私は声をかけた

「…あの…セナ様…」



その刹那、あの日の現象が何故かセナ王子を包み込む様にして突如展開された


(うそでしょ!?…これって…)


私達がこの世界に来る前にみた半透明の数字にセナ王子が包まれている


でもあの日とは違う

私にはその現象は展開されていなかった

セナ王子だけがあの現象に飲み込まれ倒れ込んでいた


「セナ様…」


セナ王子はすぐに意識を無くしたように私の問いかけに返事をしない


焦った私が流れる数字の羅列に手を伸ばそうとした瞬間


プツッとそれらは消えて無くなり倒れ込んだセナ王子だけがその場に残っていた

私はすぐにセナ王子にかけより頬に触れた


「セナ様!セナ様!返事をして!セナ様」


「あーーーうるっさ…」


気怠い声を漏らし

ゆっくりと開かれたセナ王子の瞳が私の顔を見て大きく見開いた


「…ユリアナ。ユリアナがいる」


瞬きを忘れたようにセナ王子が私を凝視している


「あの…セナ王子?」


「王子?…俺が?」


そう言って半身起きあがったセナ王子は急に頭に手を当て小さく唸った


「大丈夫ですかセナ様!?どこか具合でも悪くなったのですか!?」


私が心配して顔を覗き込むとセナ王子は飛び跳ねる様に私から距離を取りだした

何かがおかしい…


「っまてまてまてまて!???

今ついさっきまで何してた!?つかこの身体あっつ!えっ…ユリアナの唇やわ…感触がもろに残って…てゆうかなんつー破壊力だ。そうか、ユリアナの身体に大人の女性が入るとこんなエロく…この王子良く耐えたな、童貞には刺激が強すぎるだろ」


「…だ…だれなの?…あなたセナ王子じゃないんでしょ?まさかあっちの世界の王子プレイヤーなの?」



(こわい…)


言動がどう考えてもおかしい。さっきの現象といい、今セナ王子の中には誰か別の人間が入っているようにしか思えない


「あっ、すまない、取り乱して、でも大丈夫だ。君には何もしないから…てゆうか、入った身体の記憶を受け継ぐようだからその…色々盗み見る様な状態になっているのはすまない…まさかこちらで君たちの関係が小説通りに進んでいるとは…なるほど、

あいつらが俺を使いに出したのが何となく理解出来てきたぞ」



「あの…何か色々状況を知り得た人なのはわかります。あなたは誰で、なぜセナ王子に入ったのですか?セナ王子の意識はどうなっているのです?」



「…記憶規制で君もユリアナの喋り方に近いな、それはまあ良いとして、セナ王子は大丈夫だ。それとまずは自己紹介だな。」



そう言って、話し出した人はまさかの夜月トオル

その人だった。

この世界の創造主であり、私が元いた世界を作り出した『神』とも繋がりを持つ夜月さんは『神』とアリスの交わした契約と元いた世界での現状、

そして聖女アリスが朱音の身体を返しこちらの世界にまた戻る選択をした事を明かしてくれた。

全ての事の成り行きと収束までを聞き私はついにその時が来たのだと悟った


ユリアナがこの身に帰ってくるという事…

それは私が元の世界へ帰れるという事…


そして、それと引き換えに、

私はもう二度とセナ王子には会えなくなるという事



「…俺は『神』に使いを頼まれてね、君たちの意識を元あった場所に帰す前に心の整理を出来る様に知らせに行ってくれと頼まれたんだ。

ああ、セナ王子の意識はあっちの世界の俺の身に入れ替わっているけど、俺の元の身体は深い睡眠状態にあるからあちらの世界を知られる事無くまたこちらに俺と入れ替わりで戻ってくるよ。気を失う前の数分の記憶と俺が入れ替わってた間の記憶も『神』が消去するようだから気にしなくて良い。」


「…後、何日後ですか?ここを去るのは…」


「…逆に。君と妹さんの心の整理に何日くらい必要?色々巻き込まれたんだ、それくらい希望を考慮してもらうといい…」



「…死ぬまで…なんて。ふふ、流石に無理な話しですよね」


「えっ…と」


夜月さんがセナ王子の成りで困った顔をする

その姿に私はくすりと笑った



「冗談ですよ、もう本気にしないで下さい。

妹の朱音だってレイル王子と色々ありますから

確かに気持ちの整理は必要でしょうけど、恐らく私よりかはあの子は大丈夫。好き半分、推し半分て所でしょうから。」


「君は?大丈夫…じゃなさそうだな」


「その成りで言わないでくれます?」


「…すまん」


「ふふ、夜月さんも記憶規制かかってますね。

…大丈夫です。私は。大人ですから、いつか時間が解決してくれるでしょうし。帰ったら私には没頭できるものがあるから」


「そうか…なら良かった」


そうして、私は共に過ごす時間が長い程、情を残す事になるだろうことを話し帰るのは二日後にする事を決めた


「朱音には私から伝えておきます。

あの子あなたのファンなんですよ、あっちに帰ったら姉妹で会いに行ってもいいですか?」


「ああ、俺はもう君たちの姿でアリスとユリアナに会ったからはじめましての感じしないだろうけど、

君たちは俺に会った事ないしな。

…そうだ。君の身体でユリアナが色々やりたい放題していたんだが、すまない。創造主としてさきに謝っておくよ」



セナ王子の目元が僅かに赤くなった。

夜月さんもユリアナと何かあったんだろうか?


「…私の身体に手を出してませんよね?」


「まさか、寧ろ出されそうになったのを必死で死守したわ、まあ、ちょっと油断したりはあったけど」



「…セナ王子と二年も恋愛関係に落ちなかったユリアナに迫られるって、夜月さんもしかしてすごいイケメンだったりします?」


「…どうかな、でもわりと君の好みかも知れないな、もしそうならこの童貞王子よりずっと大人のいいお付き合いがお互いできるかもな、なんせ君は俺の好みど真ん中だからね、本来俺たちが結ばれる運命だったかもよ?…なんて…あーー、笑えないわな。」


「はい、なんせ童貞王子にマジ恋して現在進行形なもので…ごめんなさい」



「まてまて、なんかおれ告って速攻振られたダサいやつみたくなってないか?」



「すみません」


「いや、二回も謝らないでくれ、マジでそんな気ないから。」


「知ってます」


「…君やっぱりユリアナに似てるわ、色々。うん。

色々…はーーー、じゃあもう用は済んだし帰るとするよ。」


「はい、ではまたあちらで…」


私はセナ王子の成りした夜月さんに手を振った

夜月さんは一度手をふり「また」と言って

セナ王子はまたあの現象に包まれ

あちらで眠っていたからか祭壇にもたれたまま

しばらく眠っていた

その眠りがとても深そうだったから

私はセナ王子が起きる前にと少しだけ泣いた

眠るセナ王子を見つめて唇にキスをおとす


「セナ様、ごめんなさい。貴方と約束したのに

私は2日後にはこの世界からいなくなります。

あなたになにも言わずに側を離れる私を許して…」


(どうかユリアナと幸せになって…

貴方がずっと幸せであるようにずっと祈ってる)


そしてセナ王子は目を覚ましたけれど、

夜月さんが言う通りキスした後の記憶が全て消え去た状態だった。


「…興奮し過ぎて気を失うだと…そんな事あるわけ…だが記憶がなんかぼやけて…」


「セナ様ったら、しっかりして下さいませね」


「う…ああ…すまん」


そうしてセナ王子と由梨(わたし)の最後の面会日が終わった

私は公爵家まで車で送ってもらい車から降りる前にセナ様に最後のキスをした


「…さようなら、セナ王子」


「セナ、だろ。あれから全然よんでくれはしないし…どうした?」


「…離れ難くて」


我慢していた涙が限界に達してひとすじ頬をつたった


「泣くほど?かわいいな…すぐまた会える」そう言ってセナ様が涙を指ですくいとった


「…そうですわね」


セナ王子が私の額にキスをして私はお返しにと彼の頬にキスを落とした


「さよなら」


私は早口でそう伝えてセバスがドアを開いたと同時に駆け出した


公爵家に入るなり侍女がセナ王子からのドレスの山をどうするかと声をかけてきたが私は「後にして」


そう一言だけ返して朱音がいる部屋に入った

バタンと扉を閉めると同時に私は崩れ落ちて泣いた


何事かと朱音が私にかけよって、私はこの日あった全てを話した


朱音もショックを受けているようだったけど、

一言いった


「帰ろう。お姉ちゃん、私達の元ある場所に」



そうして、私達は約束の2日後に来た時と同じように元の世界に戻ったのだった








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