プロローグ 久遠の吹雪
ジャラリ
腕を上げた瞬間ボクの身体に幾重にも重ねられた鎖が擦れる
両腕、両足に枷がつけられている
凍えるような寒さが通る狭い部屋でボクは震える
震えながら、ボクは常に燃やしている
赦せない
ボクはただ、みんなの傷を治したかっただけなのに
赦せない
ボクはただ、みんなの役に立ちたかっただけなのに
赦せない
ボクはただ、みんなにを愛したかっただけなのに
それを砕いたあの剣士
それを焼き付くしたあの剣士
緋色の剣を持つあの剣士
人族が勇者と呼び、ボクたちを傷つけ続けるあの剣士
心にこびりつくような怒り
怒りを贄に燃え盛る黒い炎
名前を『憎悪』
ボクはあの剣士を殺したい。
ぐちゃぐちゃに、惨めに、この凍てつくような寒さのような酷薄さの中で
『悲劇』はいらない
冷たい涙を、温かい血を、暖かいものを奪った悲劇はいらない
もううんざりだ
あの惨状を見るのは
もううんざりだ
あれで怒りと後悔の涙を流すのは
もううんざりだ
あれで――罪のない人間が傷つくのは
『惨劇』を
雪に落ちる血のように心に深く浸透する惨劇を乞い願う
貴様が『弱者』として踏みにじったものたちの怒りは
踏みにじられた悲しみは
ボクの手によって終わらせる
ボクが、ボクであるために
そのためにボクは決意する
この悲願のためなら、そのためならボクは悪魔に魂を売ろうと
この悲願のために惨劇を生み出し続けると
それが果てしない吹雪のような絶望でも




