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第46話 あの時の話

 石田の問いかけにその場にいた、事情の知らない者達は悲鳴にも近い驚きの声をあげる。


 そして山田が指で涙をさっとふき取るようなしぐさをしながら石田に少し微笑みながら答える。


「石田さん知ってたのね? そう...そうなの......。私、お父さんの仕事の都合で東京に引っ越さなくちゃならなくなったの......。だから佐藤さん、私はみんなと同じ中学では会えないの......。ご...ごめんね......」


 そう言うとまた山田の目からは涙が溢れ出す。


「わっ...私、手紙書きます!! 山田部長、私と文通してください!!」


 佐藤も目に涙をためながら山田にそう言った。


「佐藤さん、ありがとう......。私も手紙書くわね......」


 山田が少し微笑みながら佐藤に言うと、その場にいた女子全員が「私も書く!!」「私も書きます!!」と山田に駆け寄りみんな抱き合い泣きじゃくるのであった。


 その様子をノブは少し離れて見つめている。

 勿論、ノブの目にも涙が溢れていた......





 『六年生を送る会』も涙の中で無事に終わり四、五年生で後片付けをしている。


 そんな中、一人廊下側から教室の窓ふきをしていたノブに山田が近づいてきた。


「ノ...ノブ君......」


「えっ? あっ...はい......」


「ノブ君は私が東京に引っ越す事、知ってたんでしょ? 何だか初めから様子がおかしかったから......」


「は...はい、知ってました。だから直接山田部長に聞こうと思ってたんですが、なかなか聞けなくて......。そしたら石田さんが先に聞いちゃったもので......」


「そうだったのね......。黙っててごめんなさいね......」


「い...いや、そんなことは......」


「私も突然のことだったんで動揺してて頭の中が整理できてなかったの。それでようやく今日、瑞穂と楓だけに引っ越しの事を伝える事ができて......」


「そうだったんですね。ほんと突然で僕も驚きました......」


「さっき私が泣いている時にノブ君が私のところに来て私の頭に手を置いて何か言ってくれるのを少し期待してたんだけど......」


「えっ!? そうだったんですか!?」


「うそ...うそよ......。 冗談よ......。照れ屋のノブ君がそんなことできるわけないじゃない。あっ! でも運動会の時に石田さんにはやってたわね!?」


「あっ...あれは、なんか思わず、つい体と口が勝手に動いてしまって......」


「そうよね。そうだと思った。でもあの一年生の頃の泣き虫少年がほんとに強くなったわね。お姉ちゃんとても嬉しいわ......」


「そっ...それです!! それを聞きたかったんです!! 山田部長は僕の事を、ず...ずっと覚えていてくれてたんですか!?」


「うーん...そうねぇ......。ずっとというかあの時の記憶は残ってたけどノブ君の顔はうる覚えだった。でもノブ君が演劇部に入部した日、私が脚本をみんなに書いてもらうって話をした時、とても不安そうな顔をしていたノブ君と目が合ったの覚えてるかな?」


「えっ!?」


「あの時......。あの時、目が合った時、この子どこかで見た事がある顔だなあって......。そしたらすぐに私が三年生の時の運動会の記憶がよみがえってきたの。そしてすぐにあの時の泣き虫少年がノブ君だとわかったわ......」


「そうだったんですか......。でも何故、今までその事を教えてくれなかったんですか?」


「うーん...そうねぇ......。ノブ君が覚えてないかもってのもあったけど演劇部に入った時はまだノブ君が一年生の頃の泣き虫君と変わらなかったからかな。今言ってもノブ君は嫌じゃないかと思って......」


「えっ? そうですか......?」


「うん、そうだと思う。でも演劇部を通じてノブ君が面白い脚本を書いて副部長になって......。そうしている内にノブ君は凄く成長していったわ。そしてそろそろあの時のことを言ってもいいかなって思っていたら運動会の時に石田さんにした行動を見てしまったら......。私...、居ても立っても居られなくなって思わずあんな行動をとってしまったの......。あの時はごめんね。あれからそのことに全然触れずにいたし......。逆に私の方がノブ君よりも弱くなったのかなぁ? それに私も少し照れくさかったのかもしれないわね......」


「そうだったんですね。話を聞けて良かったです。ずっとそのことが気になってたから......。でも山田部長は僕なんかよりずっと強いですよ!! だって僕だったら東京に引っ越すなんてなったらショックで家から出たくなくなるだろうし......」


「フフフ......。私だってショックよ。さっき泣いてたからわかるでしょ? やはり慣れた街にずっと住みたい気持ちはあるし......。でも親の都合だから仕方がないしね......。だから私は演劇部の部長として精一杯の演技をして親には笑顔で東京行くことを賛成したの。そして私は東京の中学、高校で頑張って勉強して大阪の大学に入学する目標をたてることにしたの!!」


「そっ...そなんですか!? す...凄いですね!! きっと部長なら目標達成できますよ!!」


「ありがとう......。と...ところでさ、ノブ君は私に手紙は書いてくれないのかな?」


「えっ!?」


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