第45話 お別れ会
「水井君!! 大変! 大変よっ!!」
石田が慌てて教室に入ってきた。
「い...石田さんどうしたの?」
「おっ...驚かないでよっ!? や...山田部長が東京に引っ越すらしいのよっ!!」
「えーっ!?」
ノブや一緒にいた高山も同時に驚きの声をあげた。
「うっ嘘だろ!? ま...まさか...そんな...。石田さん、それホントは冗談なんだろっ!?」
「じょっ、冗談なんか言うわけないでしょ!! 本当の話よっ!! さっき高田さんと大浜さんから聞いたんだからっ!!」
「......」
ノブはあまりの突然のことで頭の中が真っ白になっている。
その様子を見た高山がノブにこう言った。
「ノブ...。今日は久しぶりに全員集まって『六年生を送る会』をやるそうだから、その時に山田部長に直接聞いてみようぜっ!!」
「あ...あぁ、そ...そうだな......」
ノブは元気のない声で返事をした。
そして放課後、演劇部が使用している教室に久しぶりに演劇部員三十名全員が揃った。
みんなワイワイと話をして騒がしくしているが、ノブ、高山、石田の三名は一言も話さずうつむいている。
そしてそんな中、山口顧問が全員に話を始めた。
「皆さん、今日は久しぶりに全員が集まり先生とても嬉しいです。ただ今日で六年生の人達とお別れと言うのはとても寂しいという気持ちもあります。でも六年生の人達はこれから中学生になってあなた達、後輩の前を歩き色々な事に挑戦しながら成長していき後輩達の手本となって歩んで行ってくれます。だから皆さんも寂しいでしょうけど今日は笑顔で六年生達を見送りましょうね?」
「 「 「 はーい 」 」 」
「それでは五年生代表の佐藤さんから一言挨拶をしてもらいます。佐藤さんよろしくね」
「はっ...はいっ!!」
いつもは何事にも恐れない佐藤であるが今日に限ってはかなり緊張した表情をしている。そんな佐藤の姿を見て福田兄は笑いをこらえていいる。
「ろ...六年生の皆さん、長い間お世話になりました。そ...そして本当に有難うございました。わ...私達は六年生の皆さんをとても憧れていました。そしてこれからも皆さんを目標に頑張っていきたいと思って...い...います。中学生になっても引き続き...わ...私達の目標でいてください...。ほ...本当に...あ...有難うございまし...ウェ―――――――ンッ!!」
泣くのを我慢していた佐藤だったが、ついに耐え切れなくなり泣き出してしまった。
そしてそれにつられて同じ五年生の堤と後藤も泣きながら佐藤を抱きしめ、顔をくしゃくしゃにして三人同時にこう言った。
「 「 「本当に...、有難うございましたっ!!」 」 」
泣きじゃくる後輩たちを見ていつもは気の強い影の副部長高田や常に冷静な大浜もクスンクスンと泣き出した。
その横では安達や轟、他の女子達も涙ぐんでいる。
そんな中、一人冷静な表情をしている山田部長のことをノブ、高山、石田の三名がじっと見つめている。
それをまたいつもと違う態度の三人を不思議がり岸本が石田にソッと小声で話しかけてきた。
「浩美どうかしたの? 今日はなんだか様子が変だけど......」
「えっ? だ...大丈夫よ。ごめんね、なんか心配かけちゃって......」
「ううん。別に心配とかじゃないんだけどさ......。なんだか浩美もだけど水井君や高山君の様子もおかしいような気がしたから......」
岸本が石田にまだ話そうとしたが山田部長が挨拶を始めようとしたので岸本はそれ以上、話すのをやめた。
そして山田部長が後輩達に話し出す。
「みんな今日は有難う。そして今まで有難うございました。本当に楽しい演劇部でした。ここにいる六年生は四年生の時から一緒の人達がほとんどだから、なんか家族みたいな感じだったし、四年生や五年生の人達は新しい家族が増えたような気がしてとてもアットホームな居心地の良い場所だったなぁ......。そんな皆さんとお別れするのはとても寂しいけど......。でもまたいつか......いつか会えると...会えると思うし......」
ここで山田が言葉に詰まると
「山田部長!! 来年、中学ですぐ会えますよ!!」
佐藤次期部長が山田にそう言うと、その言葉に山田の涙腺スイッチが入ってしまい瞳から涙が溢れ出してきた。
それを見た高田と大浜が山田の傍に寄り三人でシクシクと泣き出した。
そして石田も我慢の限界がきてしまい泣きながら山田に声をかける。
「やっ...山田部長!! 東京に引っ越すって本当何ですかっ!?」




