第39話 田中の暴走
数年が経ち洞窟でひっそり暮らしているコウモリのもとにスズメが尋ねてきた。
「チュンチュン...。コウモリ久しぶりだね......」
「はい、お久しぶりでございます」
「この洞窟暮らしも慣れたみたいだねチュン」
「はい、慣れはしましたがずっと暗闇にいますので目が悪くなり、空も飛んでいませんので全員運動不足ではありますが......」
「そうか。色々と問題はあるみたいだけど、とりあえずは平和に暮らしているんだね? チュン」
「はい、そうですね。何事もなく暮らしてはいますが......」
「そっか。でも残念な話があるんだチュン」
「残念な話?」
「そうだチュン...。まぁコウモリにとって残念かどうかはわからないけどチュン......」
「どういったお話で?」
「実はイナゴの大群がこの島に向かっているらしいチュン。その間、他の島の農作物や草などを食べつくしていき島の生き物たちは皆、他の土地に逃げているそうだチュン」
「そっ...そうなんですかっ!?」
「だから僕たち鳥の国と獣の国が話し合った結果、イナゴの大群と戦っても勝ち目がないという判断をして、残念だけど明日この島を脱出することになったんだチュン」
「ちょっ...ちょっと待ってください!! ここ数年私は洞窟暮らしでしたが基本的に私はこの島が好きです。前に住んでいたコウモリ村がイナゴにめちゃくちゃにされるのも耐えられません」
「そんな事言ってもチュン……」
「良い作戦があります!! いかがでしょうか? お願いです。私が考えた作戦を皆さんでやっていただけないでしょうか!?」
「チュン!? 作戦!?」
「この数年、私は自分がやったことを反省していました。命があるだけでもありがたいと...。ですので今は皆さんのお役に立って少しでも罪滅ぼしをさせていただけないでしょうか?」
スズメはコウモリの熱意を感じ、コウモリの考えた作戦を聞き、急いで鳥の国に戻るのであった。
ここで舞台の明かりが消え、舞台袖では福田、高山がしゃがみ込む。
「あぁ、ようやく長いセリフが終わった~っ!!凄く疲れたよ~」
「福田さん!!僕もですよ。ま...まさか僕がこんなに長いセリフをしゃべるなんて......」
「二人ともお疲れさま。とても良かったわよ。でも福田君は主役だからまだまだ長いセリフあるから頑張ってね」
山田部長が笑顔で二人に言った。
「は~い」
福田は疲れ切った表情で返事をした。そして山田部長が小声ではあるが勢いのある声で
「さぁ!!ここからは ”あの” 田中君の出番よっ!!」
そして再び舞台が明るくなる。
コウモリたちの島を目指して飛んでいるイナゴの大群の場面から......
ブ――――――ン...。ブ――――――ン......
イナゴ役の四名が大きな声を出して手を広げ飛んでいるように見せている。
また四名とも顔を緑色に塗って全身も緑色にしており、その姿を見て会場からは笑い声が出ていた。
「あれ三組の田中じゃね?」
「そうだ田中だ。あの変な奴だっ!!」
「王様!! 王様!!」
イナゴA役の六年安達が話しかける。
「なんだっ!?」
イナゴの王役田中が振り向き聞き直した。
「王様...。私、もうお腹がペコペコで耐えられませんっ!! 小さい島でもいいから、早いとこ降りちゃってご飯にしましょうよっ!!」
「そうですよ王様っ!! 私達はすぐにお腹が減る体質です。もうそろそろ近くの島に降りたほうが良いのではないでしょうか!?」
イナゴB役の轟もイナゴAの意見に賛同する。
「ぼ...僕はイナゴだけどそんなにお腹は減ってないけど......」
イナゴC役の浜口がそう言うと一人やせ細っているイナゴなので会場からは少し笑いがとれていた。
「うっ...うるさいぞお前達っ!! もう少しだけ我慢するんだ!! わしが目指している島には今まで食べたことの無い食べ物や草木があるらしい。わしはそれが早く食べたくて食べたくてたまらんのじゃっ!!」
田中の少し棒読みで、かん高い声が鳴り響いた。
それが会場では意外にうけるのであった。
しかし、それが田中にとっては自分の実力で笑いがとれたと勘違いし調子に乗ってしまい田中は脚本にないセリフを話し出してしまった。
「わしは本当は草なんか嫌いなんじゃ。甘い甘いイチゴやメロンを腹いっぱい食べたいのじゃ!! 野菜もいらん!! 野菜はお前達が食べろっ!! イチゴやメロンはやらんぞ~!! ブツブツ......」
田中の急なアドリブで三人は茫然とし広げていた手をおろし困惑した表情になっていた。
「小声で田中...。田中......」と轟が言うが田中は自分に酔っていて聞いていない。
とうとう田中の暴走が始まった……
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