第29話 稽古再開
「ノブ君、ほんと強くなったわね......。お姉ちゃん敵とれないじゃない......」
ノブは衝撃があまりにも強すぎてその言葉が頭から離れない。
五年生、六年生のリレーもノブはぼーっとしながら見ていた。
その様子を見て大石が心配して声をかける。
「おい、ノブ、大丈夫か......?」
その大石の言葉もノブの耳には入ってこなかった。
結局リレーの結果は佐藤が言っていた通り、五年生は男女とも三組が一位になったが六年生は男女とも一組が一位となり総合優勝は一組に決定したのである。
残すプログラムは点数の関係ない六年生による組体操のみとなった。
四年一組の応援席に戻ったリレーメンバー八人に対しクラス全員拍手喝采で出迎えた。
最終的に四年一組男子のリレーの一位が優勝の勝敗を分けた事を全員理解しているのだ。
高山や森重がノブに近づき、高山が興奮気味に話しかける。
「ノブお疲れさん!! お前達、凄かったよ!! ほんと見てて感動したよ!! まっ、まさか三組に勝てるなんてなっ!!」
ノブは無言でうなずき興奮している高山は引き続き話し出す。
「あと五年の佐藤さんも速かったけど、六年の山田部長の走りは凄かったよな!? 前に高田さんが山田部長の事を水泳だけはダメだって言ってたけど、逆にそれ以外は凄いってことだろうけど想像以上に凄かったよ!!」
実はノブは山田の走る姿をちゃんと見ていない。
『あの時の女の子』が山田部長だと分かってから何も目に入らなくなっていたのであった。
最終プログラム、六年生による組体操も無事に終わり、一組が総合優勝となり閉会式にて山田部長が一組代表として会場中大きな拍手の中、優勝旗授与が行われた。
こうしてノブ達の熱い熱い、そして何かとドラマティックな運動会は幕を閉じたのであった。
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十月中旬、ノブ達演劇部は十一月の文化祭に向けての稽古が本格的に始まっていた。
それぞれの役のイメージをみんな真剣に考えながら練習に取り組んでいる。
その横でカンカンと大道具や小道具を製作している音も鳴り響いている。
「大浜さん、なんか凄い怖い顔してるんですけど大丈夫ですか?」
佐藤が心配そうな顔で大浜に聞いている。
「えっ? 何、佐藤さん? 今私、カラスに成りきってるから急に話しかけないでもらえるかしら......」
大浜はそう言うとまた怖い顔をするのであった。
「カラスってあんな怖い顔しないとダメなのかしらね......?」
影の副部長高田が少し呆れた顔をしながら小声で佐藤に言った。
「私もハゲタカのイメージをって考えてるんですけど全然わからなくって......」
佐藤が困った表情で高田に言うとその横から同級生の福田兄がニヤリとしながら
「前に大浜さんが言ってた通りハゲのかつらをかぶって、くちばしをつければいいじゃないか。それで完璧なハゲタカになるよっ!!」
「なっ...何言ってるの!? 私は絶対にハゲのかつらはかぶらないからっ!!」
佐藤は目の色を変えて福田兄に言い返した。
「ホウ...ホウ......」
岸本がフクロウの鳴き声を練習している。その横で石田が片足を曲げながら上に上げて両手を広げフラミンゴを表現していた。
「ねぇ浩美? もう足は大丈夫なの?」
リレーで転んでしまい足を怪我した石田のことを岸本は心配して声をかけた。
「まだ擦りむいた足は痛いけど、痛くないほうの足で支えるから大丈夫よ。私のことより順子もリレーの時、足をくじいたんじゃないの? あんたこそ大丈夫なの?」
そう石田が聞き返すと岸本は
「あっ、バレてたの? さすが浩美ね。でも私はフクロウ役だからあまり足には影響ない役だし大丈夫よ。ありがとう......」
岸本は少し照れくさそうな表情で石田に言った。
「あれだけリレー前に二人でうちのクラスが勝つって言い合いしたのに結局、私達って二人とも足の怪我しちゃったよね。なんか恥ずかしいわね?」
石田も照れ臭そうに言うと岸本が
「まぁ思い出したら恥ずかしいけど、あの後の男子のリレーや佐藤さんや山田部長の走る姿を見てたら、そんなこと忘れるくらいの凄いリレーだったし......。あっ!! それと浩美が泣いていた時、水井君、浩美の頭に手をのせて何か言ってたみたいだけどなんて言ってたの?」
「えっ!? そ...それは秘密よっ......」
石田は少し赤い顔をしながら再び片足を上げてフラミンゴに成りきりセリフの練習を始めた。
岸本は首をかしげ不思議そうな表情をしたが、「まぁ、いっか......」と呟きホウホウと言いながら練習を再開するのであった。




