第27話 男子リレー開始!!
いよいよノブ達の出番が来た。
石田達へのリベンジもある。
一組メンバー四人はいつになく緊張した面持ちだ。
そして第一走者の田尾がスタートラインに歩いて行った。
「田尾、頼むぞーっ!!」
村瀬、大石が大きな声で叫ぶ。
他の組の第一走者も同じくスタートラインに向かっていく。
その時、ノブの背後から女の子が大きな声で叫ぶ。
「分かっているわよね、あんた達!? 三組が絶対に一位になるのよっ!!」
声の主はなんと演劇部次期部長で五年三組の佐藤恵だった。
佐藤は同じ三組同士の下級生、木口達に発破をかけていた。
「達也(木口)!! 克己(平田)!! あんた達負けたらお姉ちゃん許さないわよ!! ここで三組が勝って次の五年男女も勝って差をつけないと六年生は男女とも一組が速いんだからっ!!」
「わ...分かってるって、めぐねぇ......。そうガミガミ言わないでよ......」
木口が困った顔で言い返す。
「めぐねぇ......。頼むから静かに応援してよ......。は...恥ずかしいから......」
あのヤンチャな平田さえも佐藤の前ではタジタジである。
実は佐藤は木口や平田達とはご近所さんで小さい時から実のお姉ちゃんのように彼等の面倒を見てきた間柄であった。
なので二人は未だに佐藤に頭が上がらないのである。
そして佐藤がノブに気が付いた。
「あっ!? ノブ君!! ノブ君達には悪いけどリレーはこの子達が勝つからねっ!!」
佐藤は自信満々の表情でノブに言った。
ノブは困惑した表情で頭を掻き苦笑いをしながら、第二走者が座る位置に向かおうとした。
その時、平田がノブに話しかけてきた。
「お~い、水井~!! 別に今日も転んでくれていいんだぜ。ヘヘヘ......」
そう嫌味っぽい言い方をした瞬間
バンッッ!!
という凄い音がした。
佐藤が平田のお尻を蹴り上げたのだ。
「克己!! あんた何を言ってるの!? 転ぶのを期待してどうするのよ!! 勝負は正々堂々とやって勝つからいいんじゃないの!! もしかして、あんたバカなの!?」
佐藤はいつもとは違う種類の怒った顔で平田を怒鳴った。
「ごめんごめん、めぐねぇ......。じょ...冗談だよぉぉ。べ...別に水井が転ぶのを期待なんかしてないしさぁぁ......。水井もごめんごめん......」
平田は焦った顔をし、お尻を押さえながら第二走者の位置に向かった。
「ほんと、めぐねぇ頼むよ......。平田を蹴って怪我でもしたらリレーどころじゃないじゃないか......」
木口が強い口調で佐藤に言ったが
「はぁぁああ!? あんたもバカなの!? うちの演劇部副部長にあんなことを言って次期部長の私が許すとでも思ったの!? あんた達と幼馴染だからといって、それとこれとは話が別なのよっ!! いずれにしても正々堂々と勝負して勝ちなさい!! わかったわね!?」
ノブはさっきまで緊張していたが佐藤のお陰で何か重いものが取れたような気がした。それと同時に佐藤のことを頼もしく思い感謝すらした。
さすが次期部長 ありがとうございます。
ノブは心の中で佐藤に言った。
よ――――――い!
パンッッ!!
スタートのピストルの音が鳴り、一斉に第一走者が走り出した。
一組田尾と三組山本が予想通りの完璧なスタートダッシュをした。
二組、四組にドンドン差をつけてミサイルのような走りを見せる。
「さすが田尾だ」
大石、村瀬が呟いている。
二人は抜きつ抜かれつの攻防で第三コーナーを抜けほぼ同時に第四コーナーを曲がろうとしている。
ノブも平田もどちらが先に来るかわからないのでギリギリまで一位と二位のレーンの間に立って待っている。
そしてついに田尾の足が更に回転数を上げ山本を振り切り先頭でノブにバトンを託した。
ノブが走り出してすぐに平田も山本からバトンをもらい鬼の形相で走りだす。
ノブと平田の差は一メートルも無いと思われる。
しかし平田はその差を全然詰める事ができない。
「一体どうなってるんだ!? 水井は絶対に俺より足は速くないはずだ!!」
平田は少し焦りながらノブを追いかける。
背後に平田の圧力を感じながらノブは走り続けているが心の中は何故か穏やかだった。
さっきの佐藤の言葉、石田との約束、その瞬間に思い出した『あの子』の言葉、そして何より一年生の時に思いっきり走りたかったのに転んでしまいちゃんと走れなかったが今はこうして思いっきり走れる喜び......
色々な思いがノブの体を軽くし、いつも以上のスピードを出している。




