第26話 デジャヴ
石田が転んでしまった!!
その隙に深井はあっさり石田を抜き去った。
そして石田が擦りむいた足の痛みを我慢しながら立ち上がろうとしていた間に三組、四組と次々に抜かれていった。
石田は足元に落ちていたバトンを拾い、そして立ち上がり、足を引きずりながらゴールを目指し歩き出した。
「浩美頑張れ――――――っ!!」
真っ先に声を出したのは敵チームである親友の岸本であった。
それに続きノブ達一組、また会場の観客全員が石田を応援した。
石田はみんなに大きな拍手で迎えられ無事にゴールすることが出来た。
そしてノブ達の前まで来ると突然両手で顔を隠しながらしゃがみ込み泣き出したのである。
ノブは石田が泣いている姿を初めてみて驚いた。
「み...みんな......。ご...ごめんね......。せっかく久子が一位でバトンを渡してくれたのに......グスン.....。絶対勝つって言ったのに......。ほ...ほんとごめんなさい......。うぅ......」
石田は顔を隠したまま泣きじゃくった。
それを見ていたノブは突然、しゃがみ込んでいる石田の前に立った。
そして自分より身長のある石田が今は小さく身体を震わしながら泣きじゃくっている姿をじっと見つめると、ノブもしゃがみこんだ。
そして石田の頭に手をソッとのせてこう言った。
「石田さんはよく頑張った。ほんとよく頑張った。足も痛いはずなのに最後まで諦めずよく頑張ったよ。俺達、石田さんのお陰で勇気を貰えたよ。だから謝らくていいし、泣かなくてもいいよ。相手は違うけど敵は俺が絶対とってやるから......」
ノブの話を泣きながら聞いていた石田が泣き止みノブの方を見上げてこう言った。
「ほんとに?......」
その瞬間ノブは何か不思議な感覚に襲われた。
この今の会話どこかで聞いたことがある......
ノブが一年生の時のリレーで転んでしまいクラスがビリになったあの日
ノブは片隅でしゃがみ込みこんでいる。
そして足の痛みと悔しさと恥ずかしさが入り混じり泣いていた。
その時、しゃがみこんで地面を見ているノブの視線の先に女性用のスニーカーが見えた。
そしてその女の子もしゃがみこみ、そっとノブの頭の上に手をおいた。
「君、よく頑張ったね。足も痛いはずなのによく最後まで走ったわ。ほんとに偉いよ。よく頑張った。だから泣かなくていいのよ。顔を上げて。大丈夫、お姉ちゃんが敵をとってあげるから」
女の子の話を聞いてるうちにノブは気持ちが落ち着き泣き止んだ。
そして顔をあげると同時にこう言った。
「ほんとに?」
目の前には細くてノブよりもずっと背の高い髪の短い女の子が立っていた。
ノブは涙と太陽の光で女の子の顔はよくわからなかったが口元は笑っているのはわかった。おそらく二年か三年の上級生だろう。
そしてその子はノブに背中を向けて自分の仲間の所に歩いて行った。
あの時と同じだ。
ノブはあの悔し涙を流した自分と石田が重なり、思わず自分が言われた言葉を自然に口にしていたのだ。
あの時の女の子っていったい誰だったんだろうか......?
ノブが思い出そうとしていると
「ありがとう......。水井君、私の分も頑張ってね......」
石田は立ち上がり寿や他の仲間に支えられながら走り終わった人が待機する場所へ向かうのであった。
その光景を六年生の待機場所から山田部長が見つめていた。




