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夕焼け色の猫  作者: 鈴寿
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今、動こう。

゛急募!ペットシッター募集!。経験問わず、猫好きであれば可。夕刻短時間のパート。詳細は左記参照。〝 横にマンションの部屋番号と名前、携帯電話番号、メールアドレスが記載されていたー。思わず大きく息を吸い込むと、震える指で貼り紙を丁寧に剥がしバッグに入れ込んだ。あの、部屋番号!あの猫ちゃんのお家だ!。急いで電チャリの籠にバッグを放り込み、中から、少しばかり、くしゃりと歪んだ貼り紙を急いで出す。両手でシワを伸ばし、一文字一文字確認しながらメールを送る。゛吉野 藍 と申します。部屋番号3○○号、ペットシッター希望です。子供時代は何時も猫と一緒でした。只今時間が取れず昼にお電話致します。宜しくお願いします。〝ダダダッとタップすると、電チャリにグイッと股がりペダルを強く踏むっ!。「神様!。」あの猫ちゃんに会いたい!触れたい!声を聞きたい!。お金も少しは何とか入るだろうし。見つめてるだけじゃなく、触れられる。抱っこもさせてくれるかもっ!わぁっ~っ!。マンション裏手で人通りは少ないとはいえ、取られたくない!誰も見ないで!。雇い主さんっ2枚目作らないでぇっ!。ーあれ?私、力、あったんだー。やだ、今、身体動いてんじゃんー。うん、動こう!もう動くんだっ。突然に忙しく頭をフル回転させながら、勤務先へとペダルを漕いだ。やっとやっとの昼休憩になり、食堂ではなくロッカー室へと走った。ドキドキしながら電話を掛けると、思ったより若い、少しハスキーボイスの可愛い女性の声だった。最近都合で帰りが深夜近くになる事が多く、その折の愛猫の食事や、トイレの世話の依頼だった。何時も頼んでいたペットシッターさんが体調を崩し急遽の募集だった。子供の頃から猫と一緒に育った私には最適で、シッターに入る時間も指定はなく、夕方に食事、トイレ、エアコン調整出来ているかの確認、そして暫く遊びを取り入れてのおもり、約2時間。しかも一回、5000円!。雇用主さんの都合で面接もビデオ通話となったが、多分私より若い、黒髪のおかっぱ頭で上側だけ金縁の、薄い眼鏡を掛け、そして、やっぱり可愛いハスキーボイスだった。メールで依頼が来たら当日出動、そして様子を写メールする事になった。胸が弾んだ。あ~っ捨てる神あれば拾う神あり、かな?。ふふっ、うふふっ!。結局、早速、翌日からの依頼を受け、鍵は封筒に入れ私の部屋の郵便ポストに届けてくれた。そう私は猫様至上主義!。子供の頃は、ずっと一緒だった。でも、成長に伴い環境的に無理になったのだ。そうして、そして御披露目、本当におとなしい優しい女のコだった。茶トラに金目は、そのままに。でも実際近くで見ると艶々毛並みでピカピカ、それにもうもう、なんて柔らかな手触り。初めての、ふれあいにも全く動じず、ゆったり寛ぐ姿は、どんなに大事にされているか解るというものだ。ここ何日か氷のようだった手も、福ちゃんと手を繋ぐと、いや、私が手をしっかり握っているだけなのだが。そう、この猫ちゃんの御名前は福ちゃん!。あ~っ猫って、そこに居るだけで幸せよね~っ。うん、居るだけで良いの!猫は!。人間とは出来る限り、長く居たくもないけどさ。他人は疲れる。1人は楽。あぁ自然と笑顔になっちゃう~っ!猫様~っ!。ずっとずっと猫と一緒が良かったのに。産まれた家は薄暗いモグラの家だった。反吐が出る忌々しい家で私は戦い続けていたのだった。

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