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夕焼け色の猫  作者: 鈴寿
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初めての友人

ほんの些細な不安を感じた途端に、それは引き金になる。頭に途轍もない重力が覆い被さり、喉が締まる。潰されそうな、どす黒い恐怖の塊が頭の中いっぱい、身体の中の全てを蹂躙し、窒息しそうだ。何か見えない物に追いかけられているような感覚に、考えるより先に、勝手に脚が動き出すー。恐怖を払い退けるようにバタバタ走り回るが、唯唯、身体の奥からの窒息感がもっと増大するだけだった。両手もブルブル震え足首の辺りにイライラする熱が籠る。喉の奥がどんどん締まって、奥の方からジワジワと粘液が沸きだす。ー。震える指で必死で蛇口を緩め、コップに一杯、又一杯の水を口中いっぱいに注ぎ入れる。ーハァッ~…ハッ…ー。やがて身体の緊張がスッと緩み、やっとの形で人間に戻った途端、息が出来るー。不安感に飲み込まれる時間がない、平安の有り難さを知る時だー。日々の疲れを感じた時、起こるようになった…。水晶に集中出来る力も、なくなるのだー。パニック障害ーそのものズバリのパニックを引き起こす、それも突然だー。今回初めて外出先で発作が起こったー。自律神経を癒す一つになればと、家から少し先の温泉付きホテルに着いた途端だったー。先日、福ちゃんを通し、ひょんな事から知りあった藍さんにペットシッターを依頼する運びになり、少しばかり遠出をしている。但し泊まる事はせずディユースである。写メールや、今の情報、熱心な意見等小まめに送ってくれている。自宅のペットカメラでも時々観ているが、本当に猫が好きなようで、福ちゃんに優しい表情で接し、始終楽しそうだ。何時ものペットシッターさんが病気になったという事にして、彼女の朝の通勤時間に合わせ、部屋の前の壁にポスターを貼った。ーそしたら、なんと、彼女はそれを破って取り外し、バッグに忍ばせていた。ーなんだか覗き見しながら笑ってしまった。キョロキョロ周りを見定めながら、誰にも渡すかと言うような、挑戦的な面持ちだったからだ。それから直ぐにメールが届き、丁寧な対応が出来る人と知る事になった。福ちゃんの前で泣きじゃくる彼女を、なんとなく頬っておけず、間接的な手助けを始めたのだった。もともと特別必要性もなかったが、ペットシッターなら猫好きの彼女にとって力になるだろう。代金も少し多めにして、取り敢えず私の温泉ホテルも頻繁に利用し、パート代も嵩めば、少しは安心感が出るのではないか。そう考えた。福ちゃんにこぼしていた言葉から、眠れない食べれないでは身体に良くないと思い、ア○ゾンや、ネットスーパーで、少し口にしても身体の栄養源になりそうなお八つを用意したー。愛猫を、ほぼ面識もなかった他人に託すのに、ちょっぴり、不安がない分けではなかったが、ペットカメラのシッターぶりを観ていて直ぐ安心出来た。何より私と合うのではないかと思ったからだった。私という人間は、親も回りも撥ね付けて生きて来たが、彼女は誰共に傷付きながら戦って、戦って、歩いて来たのだ。正反対なようでもあるが、初めて他人に親近感を感じた。短いメールも楽しみに見るようにもなって行った。彼女とは違う形ながら、私も独りで生きて来たー。私にとって、彼女は、初めての友人と呼べる存在になって行ったー。

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