3話「学校=人気絶頂」
「おはよう!」
元気な挨拶で私は、教室に入った。
「おはよう、未来ちゃん!」
「おはよう、未来さん」
「うん、おはよう、皆!」
沢山のクラスの女の子達が私に挨拶をしてくれる。
そう、私はクラスの中でそして学校でも人気のある生徒なのだ。
女生徒には仲良くしたい女子ランキング一位を独占しているだろう。
そして男子生徒には付き合いたい女ランキング一位だろうが……。
私には渚がいるのでこちらはどうでもいい。
そしてもちろん後輩達にも慕われている。
つまりダークヒーロー麻宮とは違い、学校のヒロインなのだ。
そう、私はヴィランではない、今朝のあれは……いわゆるヒロインの闇堕ちという奴だろう……。
ヒロインの闇堕ちは物語の展開上盛り上がりが起きるが、今朝のはいわゆるカタルシス不足だったので私がヴィランに見えてしまっていただけだ。
本来、闇堕ちヒロインはそれだけで人気が出るはずの存在であるはずだ。
そして今の私は光堕ちヒロインという状態なのである。
そうして席に着き、暫く女の子達と会話をしていると……。
ダークヒーロー麻宮と私だけが手に入れられる渚が教室に到着する。
ところで麻宮がダークヒーローで、私がヒロインなら、渚はヒーローなのだろうか……?
いや……確かに……私は渚の言葉で救われた、私にとってはヒーローだ。
だけどそんな安直なのだろうか彼は……?
否、そんな訳がない。
そもそも渚は、物語の都合で振り回されるキャラではない、都合の良い解釈ばかりで物事を考えるならさしずめ作者か……?
いや、それも違うだろう、作者は物語をコントロールできるものだが、私に拘束される事を渚が望むはずはない。
なら、物語を自由に解釈できて、尚且つコントロールはできない……。
なら、渚は読者という立ち位置が自然だろう。
何故なら読者はヒロインが好きになるから物語を読み続けるもの。
つまり渚もいずれは私に夢中になるという事だ。
「あ、未来ちゃん、改めて今朝はごめんね?」
ダークヒーロー麻宮が近づいてきて、またもや謝られる。
これじゃあ、ますます、私がヴィランに見えてしまう……。
まさか……!
これは麻宮のダークヒーローとしての戦い方なのだろうか?
相手が弱みを見せた瞬間に自分だけはいい子のフリをして、格付けをする。
それがお前のやり方か……麻宮……!
「いや! いや! いや! 大丈夫だよ……! 気にしてないから! その戦い方もね……ダー……! 麻宮さん……!」
危ない、危ない、またもやダークヒーローと言いそうになってしまった。
「ありがとう! 未来ちゃん! って! 戦い方……?」
「え!? ああ……! ナンデモナイヨ……ウン……」
「ええー? ホントかな〜? もしかして私の事許してないんじゃないの〜未来ちゃん……えい!」
「ちょっと〜! やめてよ〜!」
麻宮は私の事を突いてくるが、ダークヒーローの攻撃等、読者に応援されている私には効きもしないのだ。
ね、渚……。
そうして渚の方を見ると……。
「渚くん! 未来ちゃんの弟なんでしょ?」
「ああ……そうだけども……?」
あの男……また他の女と話してる……。
つまり、私は読者に見捨てられたヒロイン……?
嫌だ……負けヒロインにはなりたくない……。
それにしてもそう考えると、異様にさっきの突っつきが効かないと言っていた私は、作者は人気だと思っているが、読者には応援されていない哀れなヒロインムーブに感じ、心にダメージが入る……。
まさか……これも麻宮の策略なのだろうか……?
いや、そんなはずはない、流石にダークヒーローとはいえ……そんな卑怯な作戦で私を追い詰めるはずがない。
何故なら看板ヒロインになるには最低限まともであることが条件なはずだからだ。
それに、私は学校では人気絶頂のヒロイン……大丈夫……。
私は人気……だよね……?
「それにしても未来ちゃんって可愛いね?」
「え? 急になに……?」
お前じゃない……ダークヒーロー麻宮……。
「いやーなんか可愛い娘を見るとつい! 触りたくなっちゃうんだー……えい!」
「ちょっと!」
またもや、麻宮は卑劣な攻撃を仕掛けてくるが……最早私には効かない、読者が応援しないならと……孤軍奮闘の構えに入った。
そう、私は作者の寵愛を受けしヒロイン……なら、これで負けることは……。
「ヒャン!?」
「あれー? 可愛い声だすんだね? 未来ちゃん……!」
「ちょっと……やめてよね、ここ学校なんだから……」
ダークヒーロー麻宮は、まさにダークヒーローという笑みをしている。
というか待ってほしい……私は作者の寵愛を受けしヒロインですらなかったのだろうか……?
確かに孤軍奮闘すると言った手前、作者の寵愛等、期待できもしないというか……そもそもこれは物語ではないから……実際には私の一人相撲なのだが……それでも……奇跡を信じていたかった……。
「ほれー! ほれー! ほれー!」
「ちょ……! ひゃ! ひゃん!」
こうして、私は暫くの間、ダークヒーローに攻撃され疲弊するのだった。




