2話「登校=敗走」
「おはよう! 渚くん!」
「おはよう姉さん……」
渚は私の挨拶にふぁ……とあくびをしながら返事をしてくれる……。
……嬉しい……。
「渚くん、今日は一緒に登校……! ……するんだよね……?」
そう、昨日の罰のおかげで暫くは一緒に登校する事になっていた。
「これから夏休み入るまでスキンシップをする……だけどね、だから一緒に登校するなんて言ってないんだけどな……」
「え……?」
そう、確かにあの時私はこう言ったはずだ……。
□ □ □
「渚くん……罰としてこれからは私に体を預けてね?」
□ □ □
「ほら、こう言ったんだよ? 私……」
確かに私はこう言った、これから体を預けてもらうと、ならば私の言う通りにするのは当たり前ではないか……?
「言ってたけど、だからスキンシップだろ? 体を触れ合う様なスキンシップをしろってことだろ?」
「む? む? む? むむー!? なーんで! そんな解釈するかなー……テストならゼロ点どころか補習だよ?」
私はあまりの都合の良い渚の解釈に驚きを隠せない……。
この男……やはりこう言う都合の良い解釈をしがちだ……。
はっ! まさか……!
渚……私の行動を許したのも……都合の良い解釈をしたから……?
考えなかった事にしよう……。
「じゃあどういう意味なんだよ……」
渚はムクッーと膨れた顔でそう拗ねる。
「だから、私の言いなり! ってこと! もちろん話し合った通り夏休みに入るまでだし、ラインは考えるからさ!」
「あー……そっか……悪い……今日は無理だ……麻宮と約束があるから」
「は?」
麻宮……それは……私達と同じクラスの女……やたら私の渚にしつこく付き纏う、なんか……その……むかつく! やつだ……。
「待ってよ? それじゃ私は暴走するよ!? 昨日みたいに!!!」
「はいはい、姉さん……! 落ち着けって、構ってほしいのは分かるけど、俺達、義姉弟なんだから、本物の姉弟みたいなスキンシップは気まずいっての……今回は罰だから受け入れるけど」
「ねぇ……やっぱり都合良く解釈しすぎじゃないかなー!?」
「え……? なにが?」
あ、もう駄目だこの男……やっぱり、あの時、私の物にしておくべきだったか。
いや、そんな事をしても手に入らないと分かっていたが……それでも……この男の解釈には呆れる……。
許したのも……信じているのも……どうせ、私が本当の姉弟みたいになりたいと解釈してるから出た言葉なのだろう……。
それがなんだか……悔しいのと同時に……何故そこまで渚は都合良く解釈するのだろうか……と気になったが……。
まあ、これはいずれ聞く……いや聞いて矯正する。
□ □ □
朝の支度を終わらせ学校に行く時間になった。
「じゃあ先行くよ姉さん、お弁当持っていくから」
「……はーい! ……ちっ!」
「え? 今……舌打ちした……?」
「ええー? なんのことだか分からない〜! さ、行っておいで!」
「あぁ……行ってくるよ……?」
渚は困惑した表情をしながら外に出ていった。
「学校行ったら覚悟しなさいよね……」
一人になった家で、渚と一緒に登校する麻宮と都合良く解釈する渚への怒りを抑えながら、私も支度をし、家を出る。
□ □ □
そうして家を出ると……。
「ちょっと渚! 私を待たせるなんてどういう事?」
あの女がいたのだ……。
麻宮蜜音、この私の天敵と勝手に呼んでいるだけで実は喋った事ない女……。
渚とよろしくやってる……ムカつく野郎だ……。
あ、一応、あの女、自認は女だから野郎ではない。
「悪い悪い、って……! お前が来ないからわざわざ俺は学校と反対方向のお前の家まで行ったんだろうが……」
なるほど……つまり私が支度をする時間、馬鹿みたいに私に見せつける為に家の前に居座る残虐的な行為をされていたわけではなさそうだ。
「つまり、早く迎えに来なかった貴方が悪いのよ!」
いや、悪いのは渚に迎えに行かせた貴方でしょ……。
そんな愚痴を心中で言ってると……あの女がこちらに気付く。
「あ、どうも! 渚のお姉ちゃん……というか同級生だよね……? 私! 麻宮蜜音! よろしくお姉様!」
は? こいつ、もう渚の彼女気取ってやがる……。
「おほほ、お姉様ですか……距離感が近すぎて思わずお嬢様の笑いが出てしまいましたよおほほ、……だって、渚と付き合ってる訳でもないのにねぇ……?」
完全に私はヴィランだが、まあ……私にとってはヴィランはこの女なのだ。
あ、ヴィランが喋る。
「えーと……私何かしちゃったかな……? あ、もしかして渚に迎えに行かせた事怒ってます……? ……ごめんなさい……調子に乗ってました!」
「え……?」
待ってほしい……ヴィランに謝られた……?
これじゃあ私だけがヴィランである。
まさか……この女……ちゃんと謝れると言う事は……ダークヒーロー枠だったのかな……。
「えーと……そう! そうだよ! ダメだよ! 私の弟に迷惑かけちゃ!」
取り敢えず体裁を保つ為に相手に合わせる。
「はい……反省します……渚! ごめんね?」
「いや……気にしなくていいが……そんなに姉さん、俺がパシリみたいになるの嫌だったんだな……」
「あ、うん……当たり前でしょ!」
合わせとこ、合わせとこ……。
「あ、それと麻宮さん……だっけ……その……私もちょっと嫌な奴だったよ……ごめんね?」
「いえ……私こそごめんなさいいきなりお姉様とか……」
それはそうである。
ダークヒーローだからって悪い行動は許されないのだ。
「さ、行こ! 学校に遅れるよ! 渚、それと……ダーク……あ、麻宮さん……!」
「『ダーク……?』」
二人が揃って反応する……が無視。
「あー、私、今日は早く学校に行きたい気分!じゃあ、お先!」
「あぁ……どうぞ姉さん……」
くっ! 覚えておけダークヒーロー、麻宮……。
こうして私はダークヒーローへの復讐を誓い一足先に学校に向かった。




