48.祝福
告白から3日後、私達は船に乗っている。
行き先は母国。あれよあれよという間に私達の有給申請がなされ、船の手配が終わり、現在がここ。
「なぜ?」
「ロッテったらまだ言ってるの?」
なぜハルは平然としてるの?プライベートなことを見せることに慣れてるから?王族怖い。じゃなくて!
「だって!休憩から戻ったら祝われて、すでに出来上がってる有給申請用紙にサインさせられて!呆然としてるうちにエーファに荷造りさせられて!」
「うん。うちのチームワークは最高だね」
「そうだけど違う!」
あの後休憩室を出ると、めちゃくちゃ不機嫌な顔をしたギル主任が待っていて、
「遅い。というか、休憩室でおかしな事を始めるな!」
いきなり叱られた。
「あれだけイチャイチャしながらちっとも結婚しないと思ったら休憩室で告白。お前達頭おかしいの?」
恥ずかしくて死ぬかと思った。
まさかギル先輩に聞かれてるなんて!
そして先輩の手配は早かった。
あっという間にお祝いのパーティーが所内で開かれ(告白から3時間後)、皆に「やっとですか!」と祝われた。
次の日には船のチケットを渡され、怒涛の引き継ぎ作業。1ヶ月くらいは困らない様にしろというあり得ない言葉に反論は許されず半泣きで頑張った。
クタクタなのに終わればエーファに急かされ荷造り開始。寝たのが深夜だったのに早朝に起こされてご飯を詰め込まれ、気が付けば船上の人になっていた。
何これ……
「どうもね、みんなに心配されてたみたいなんだよ。何時になったら結婚するのか」
「……は?」
「端から見たら私達は恋人同士という認識だったみたいで」
「へ?」
「装置が完成しないと結婚できない可哀想な二人?みたいに思われていたんだって」
「……誰の話なの?」
「私とロッテさんの話」
ハルへの愛に気が付いたのが3日前なのに?
所内の皆はずっと前から気が付いてたの?
「……もう仕事場に顔出せない……」
「ね、恥ずかしいよね」
何、この青春な感じ。もう大人なのに!
「ギルがさ、幸せになれって言ってくれた」
ギル主任……先輩は戴冠式と同時に発表されたハルの臣籍降下と伯爵位の授与、それとギレッセンとの共同事業の発表をした後すぐに、仕事に参加したいと申し入れがあった。あんなにライバル視してたから少し心配だったけど、気付けばハルを理解してくれる大切な友人になっていたのだ。
学生の時にハルが望んでいた関係。
でも、ハルは少しだけ遠慮してる感じがした。たぶん私のせい。先輩が私に恋をしていたことを知っていたみたい。それなのに、元婚約者の自分が私を部下として側に置いていることへの罪悪感があったみたい。今ではもうギル先輩は結婚して幸せになってるけど、それでも気にしていたのだろう。
「祝われるのって嬉しいわ」
「……うん、そうだね」
そう。皆が祝ってくれた。あの頃、学園すべての人に否定された私達。それが今では祝福されて、あと押しまでされてここにいる。
本当に、魔法は終わったのね──
潮風が気持ちいい。
陽の光に輝く水面を眺め、私達を縛るものが本当に消えたことを感じた。
ハルと一緒に家に帰ると、お父様達は本当に驚いていた。そして、涙を浮かべながら喜んでくれた。
やっぱり、私が独り者のまま一生を終える事が心配だったみたい。
国王陛下にも泣かれて驚いた。案外腹黒いと思っていたのに、ハルのことは本当に大切なのね。陛下としてではなく、兄としての涙を嬉しく思った。
前国王夫妻も喜んでくれた。お二人は引退した現在もアルブレヒト陛下に色々と働かされているらしい。特に前王妃は本来なら北の塔に幽閉のはずだったが、ただ飯喰らいは許さないと様々な仕事を回されているらしく、ずいぶんと老け込んでいた。
前王妃様はひたすら謝っていた。ハルは謝る必要はないと優しい笑みを浮かべていたが、その手を取ることはなかった。
ハルはいまでも私以外の人に触れることが苦手なままだ。それでも握手など最低限の触れ合いは出来るようになった。それなのに、母親の手は取ることが出来ない。彼の心の傷が見えてしまう。
王妃様は寂しそうにしているけど、私は無理する必要はないと思っている。だってハルの方が大事だもの。すべてを許す必要はない。
そして───
「マルティナ様、お元気ですか?」
私達は今、本当の終わりを迎える為に彼女に会いに来た。




