24.手紙
待って。私が魔法に掛けられた可能性?
……あるわよね。だって私が一番邪魔だったはずだもの。私が身を引けばありがたかったでしょう。
どうしよう。お父様達に相談する?
……違う。まずはちゃんと自分で考えなきゃ。
やっぱりおかしいわ。私はいつから判断を人任せにするようになったの?
そもそも、なぜ私はやられっぱなしだった?
私はそんなにか弱いご令嬢だったかしら。
……怖い。魔法ってこういうものなんだ。
こんなに違和感なく思考を変えられるなんて。
失恋の痛手で心が弱ってるのだと思ってた。
……もちろん、それが無いとはいわない。
でも私はもともと大人しやかな性格ではないわ。殿下が浮気した時点で絶対に問い詰める。だって他人と共有なんてどんなに好きでも気持ち悪くて無理だもの!浮気を止めないならこちらの有責でもいいから婚約破棄したわよね。お父様達も止めなかったと思うし。
……どうしよう。殿下に謝らなきゃ。私でコレなら一番執着されて真横で魔法を重ね掛けされまくった殿下は別人になっても仕方がないわ。
きちんと謝罪しなかったことは許さないけど!
ほら、私はもともと悲劇のヒロインじゃないのよ。先輩と話してヒロイン病は怖いって言ってたのに、まだ罹患したままだったなんて。
でもどうして?何故今頃魔法が解けたの?
変わったこと……領地に来たから?もしかして学園自体に影響が残ってるのかしら。だから魔法が解けたと思っていても、通ううちに魔法の影響を受けるとか。だから殿下もおかしくなっていた?
これは専門家に調べてもらわないとさっぱり分からないわよね。
でも、これではっきりしたわ。
──魔法は魅了なんかじゃない。
だったら先輩達は?そもそも先輩だけが掛からない理由がないわ。もしかして殿下への妙な対抗心も魔法の影響があるとか……
ん~、もともとの性格を知らないから判別できないわね。
今、分かるのはこれくらいかしら。
ここからはお父様と方針を決めましょう。
「お姉様、お手紙と小包が届いてますよ!」
「あら、どうしてあなたが配達員になってるのかしら?」
「お父様が渡すかどうかずっと悩んでたわ。だから、お姉様は本当は強いから大丈夫!って貰ってきちゃった」
手紙は全部で3通。フィデルにビアンカ、それと先輩から。小包の方は……これは殿下から?
何かあったのかしら。お父様と話す前に目を通しておいた方がいいわよね?
自室に戻り、手紙から開けていく。
まずはフィデルから。
「リーゼロッテさん、お元気ですか?
こちらは先輩とビアンカが落ち込みまくっていて面白い事になっています。
ビアンカにはしっかりお仕置きをしておいたので安心してください。悪気がないことが悪いと少しは脳味噌に浸透したと思います。先輩への悪気はあったしね。
迷惑なやつですが、リーゼロッテさんと仲良くしたい気持ちは本当なので、もう一度チャンスをくれると嬉しいです」
……なんだかフィデルのお腹は黒い気がする。
でも、ビアンカのことが大切なのね。二人はとてもお似合いだわ。
次はビアンカ。
「リーゼ、体調はいかがですか?
私はフィデルに叱られました。私はずっとリーゼのためだと言いながら自分の欲の為に動いていました。
先輩みたいにもっと貴方に頼りにされたかった。でも私は加害者側で先輩はヒーローでした。本当はヘタレ男のくせにって悔しかったの。
今は反省していますし、先輩には謝罪しました。
これからは卑怯な真似はしません。だからお願いします。友達でいさせて下さい。
貴方がいない学園はとても寂しいです。
早く元気になるよう祈っています」
ビアンカは本当に私を好きでいてくれたのね。先輩に謝罪できてよかった。確かに、あの乱入事件はヒーローのすることじゃなかったわ。いっそのこと魔法の影響かも、と教えてあげたら泣いて喜びそう。でもヘタレ男って。まだまだ教育が必要みたいよ、フィデル。
ビアンカの猪突猛進ぶりはどうなのだろう。魔法の影響?……でも、素な気もするわね。
でも、そんなビアンカは面白くて嫌いじゃない。何だか可愛いもの。でもこれからはもう少し抑えてもらわないとね。
もう一通は先輩。
封筒の差出人を見て、今更だけど、ギルベルトって名前なんだなと新鮮な気持ちです。ずっと先輩と呼んでいたから別人のようなくすぐったい感じです。
「逃げ回ってばかりいて本当に悪かったと思っています。君の前ではずっと格好付けていたのにあんな醜態を晒してしまって、どんな顔をしたらいいか分からなかったんだ。
俺はクールぶっていたけど、本当は君の名前も呼べない小心者です。それなのにプライドだけは高くて、殿下をライバル視していたくらいだ。俺は、なんでも持っている殿下のことが死ぬ程羨ましかった。
だから、好きな女の子くらい俺のものにしてもいいんじゃないかって思ってしまったのです。
入学式で君の笑顔に一目惚れしました。それは殿下に向けたものだったけど。
殿下のことをマニアックだって言ったのは嘘です。俺も同じなんだ。笑顔一つで君のことを好きになりました。
だから殿下にはずっと馬鹿でいてほしかった。公女の見た目だけを好きになって、暴力も簡単に振るえる愚かな王子。そこから君を救い出すヒーローになりたかった。
自分のことばかりでごめん。本当は全然守れてなかった。
本当は顔を見て謝らないといけないことは分かっていますが、取り急ぎ手紙を送ります。
君が元気になったら今度こそ謝罪と告白をさせてほしい。元気な姿で戻ってくるのをずっと待っています」
……先輩は不器用なのね。言われてみれば名前を呼ばれたことはなかったかも。私も先輩呼びだし二人とも可笑しいわね。
あの時、告白があまりにも早口で捲し立ててたから内容がよく分からなかったけど、まさか入学式で好きになってくれていただなんて。
手紙とはいえ告白は恥ずかしいわ。それに、その頃なら魔法のせいではないのね?
謝罪と告白か……帰りづらくなったわ。
ごめんなさい。告白については考えるのを保留にさせて。まだそれどころではないのよ。
気恥ずかしいような居た堪れないような気持ちに蓋をするように手紙を封筒に戻す。
最後は殿下からの小包ね。
これは……陶器?




