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(37)マスターと死神


 その珈琲店は、夜の(とばり)が降りる夕刻六時に開店する。そして店の入り口には、橙色のランプと変わった貼り紙があった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


  あなたの話を聞きます。

  ただ聞くだけ、何も解決いたしません。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 その扉を開けると、黒縁眼鏡をかけた秀麗なマスターがいて、味わい深い珈琲を出してくれる。そんなマスターの隣には、正式に契約を交わし専属の掃除係となった青年がいた。

 その青年は全身黒のスーツ姿で、短髪ではあるけれど、前髪が彼の瞳を半分以上覆い隠している。その瞳が透き通った美しい藍色をしている事は、親友であるマスターしかまだ知らない。


 そして彼が、本当は優秀な死神である事も、親友であるマスターしか、まだ信じていない事だった。



 店内のテーブル席には、ゆるやかなウェーブのかかったロングヘアーの女性がいて、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を持っている。

 そしてその向かいの席には、整った顔立ちに、少しモッサリとした『ちょいダサ』な服装の男性が座っていた。


 彼らは待ち合わせをしていた訳ではないようだが、店内で互いを見つけた瞬間、嬉しそうに見つめ合い同じテーブルに腰を下ろしていた。そんな両者の頬が、ほんのり赤く染まっている。



 --カロンッ。



 扉についたカウベルが、その珈琲店に新たなお客様の来訪を告げた。


「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ」

「あの、入り口の貼り紙を見て……」

「ではカウンターの、左端のお席にどうぞ」


 そのお客様を見て、掃除係の青年が驚いた顔をしてマスターにこっそり何かを耳打ちしている。


「帳さん。あの方は、新たに私が関わった人です」

「という事は……。死神さんにはお気の毒ですが、また幸せな結末になったという事ですね!」


 笑顔のマスターの隣で、むーっと青年が膨れっ面をして、「どうせ私はラッキーキャットですよ」と、拗ねていた。



「いらっしゃいませ。お客様は、どのようなお話が?」

「実は僕、しばらく声が出なくなっていたんです」

「それは大変でしたね。ご病気だったのですか?」

「いえ。声帯には全く問題はなく、ストレスが原因ではないかと言われていました。でも、少し前に公園のベンチで途方に暮れていたら……。突然、後ろの茂みから黒猫が飛び出して来て、驚いた拍子に思い切り大きな声が出たんです」

「それはまた、ラッキーでしたね」

「ええ、本当に。黒猫は驚かすつもりだったのかも知れませんが、私には最高な出来事でした。それからしばらくして、それがラッキーキャットと呼ばれる黒猫だと知り、この辺によく出没すると聞いたのですが……。マスターは、ご存知ですか?」

「ええ。それはもう、よーく存じております」


 お客様とマスターの会話が弾む隣で、掃除係の青年がビクリッと肩を震わせていた。



 ーーカロンッ。



 そして店内に、カウベルの音色が響いて……。

 この帳珈琲店からまた一つ、()()()()()()()()が始まる予感を告げたのだった。



(了)




 最後まで読んで下さり有り難うございました☕️

 感謝でいっぱいです!!


 宜しければ、評価、ブックマーク、感想、レビューなど、何かリアクションを頂けると嬉しいです♪


 ナナセ


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