表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
99/228

凛との別れ

「アランは今後どうするの?」

「今後?」

「だって、戦争は明日で終わるでしょ? 今後もE.G.軍のパイロットを続けるの?」


 凛に問われて、アランは以前交わした約束を思い出した。

 ファングを滅ぼす以外の人生の目的を一緒に探すという誓い。

 でも、事情が変わった。

 E.G.軍宇宙センターで別れた後、アランは次の目的を得ている。

 戦争の裏で暗躍していた組織を追い詰める。

 でも、その目的は一般人の凛とは共有する事は出来ない。


「続けるよ。今まで通り大佐の部下としてね」

「ふーん、怪しいわね。アランのやりたい事って、福山少佐のモノマネ?」

「怪しくないぞ凛ちゃん。福山ってヤツは知らないけど、部隊には俺だっているからさ。俺達戦友と別れたくないのさ!」

「頼むから黙ってくれジェイク!」


 アランは急いでジェイクを黙らせようとするが手遅れだった。


「ねぇ、アラン。ジェイクさんって(さい)大佐の部下じゃないでしょ?」

「な、何でそういう事を言うんだい? 大人を疑うもんじゃないぜ」

「もう駄目だ5分も持たなかった……」

「諦めるなアラン。まだ何も始まってないだろ?」


 気楽にアランの肩を叩くジェイク。

 だが、既に勝負は終わっている。

 大佐の部下なのに、福山少佐を知らないのは偽物だって言ってるようなものである。

 アーサー達ならともかく、正式な戦闘履歴が無い、出会ったばかりのジェイクが戦友を名乗るのを怪しまない人はいないだろう。


「あのさ……まだ理由は言えないんだけどさ……まだやる事があるんだ……」

「それなら、ここでお別れかな?」

「そういう事になる……」

「頑張ってねアラン。お別れは残念だけど、応援してるからね」

「理由を追求しないんだな」

「しないわよ。私には何も出来ないし、今まで何も出来なかった」

「そんな事はないと思うけど」

「私はアーサーやカーライル中尉みたいに戦えない、E.G.軍に残っても役には立てない」

「通信士として仕事はしていただろ?」

「通信士は今後のアランにとって必要な存在?」


 アランには答えられなかった。

 悩んでいるのではなく、答えは決まっている。

『必要ない』、それが答えだからである。


「おい、旦那。何か言った方がいいぜ。軍に通信士は必要だろ?」

「軍にとって通信士は戦況を左右する重要な職務だ。でも、今後の俺達には必要ない」


 アランは仕方なく言った。


「そんな酷い事いうなよ。旦那がどういうつもりなのか分からないけど、必要ないなんて断言するな!」

「いいのよジェイクさん。私が聞きたかったのは気休めじゃないから。アランは本当の事を言ってくれている。不器用だけど誠実な対応だと思うわよ」

「不器用で済ましていいのかよ? 永遠の別れになるかもしれないんだぞ?」

「永遠の別れって本当なの、アラン?」

「永遠の別れになる可能性はある」

「死ぬかもしれないって事?」

「そうではない……とは言い切れないな。でも、そういう意味ではない。目的が果てしなくて終わる見込みが無くてね」

「珍しいわね。アランでも予想がつかないんだ。面白そうね」


 凛が楽しそうな声を出した。

(面白そう? どういう意味だ?)

 アランは凛の機嫌が良くなった理由が分からず困惑した。


「面白そうだって? 凛ちゃんも変わってるな」

「人を変人扱いしないでよ。アランが楽しそうなら良いよ。それに、永遠の別れになるとは限らないわよ。世界の何処かで生きているなら、また会えるよね」

「あぁ、また会えるさ……きっと……」


 凛に詰め寄られ、アランはまごつきながら答えた。


「覚えておきなさいよ! 私の事を忘れたら怒るからね!」

「忘れないと思うけど……」

「そんな事言っておいて、実際に再会したら忘れてそう。絶対に私が先に気付くと思うから」

「俺も凛ちゃんが先に気付く方に賭けるぜ」

「どうせ俺は鈍い男だよ」

「よしっ、食事も終えたから行くね。いなくなる時は挨拶しなさいよ」

「分かったよ凛」


 凛が食器を返却して去っていった。


「なぁ、アラン。凛ちゃんって凄い奴だったな」

「何が凄いんだ?」

「別れ際の彼女の輝いた目を見たか? アレ、絶対企んでるぞ?」

「企むって何を?」

「気が付いたら俺や旦那より凄いパイロットになって帰ってくるかもしれないぞ! あんなに野心的で希望に満ちた奴を初めて見たよ」

「ジェイクの思い込みだろ? 凛がパイロットになって俺を追いかけてきたら怖いぞ」

「その怖いが実際に起きるかもしれないな。どうやら逃げられそうもないぞ。追いかけてくるのが可愛いお姉さんで良かったな」


 ジェイクがアランの肩をバンバン叩く。

 アランは戸惑いを隠す様に皮肉で返した。


「追いつけはしないだろ? ジェイクは逃げるのが得意だからね。追いつかれそうになったら任せるよ」

「そいつは皮肉だね。さて、俺達も帰るとしますか」


 アランはジェイクと一緒に食器を返却して、自室に向かった。

 既にブラック・ダンデライオン<タカネ>の自治区代表アームストロング議長が、宇宙同盟ブルーム・オブ・ダンデライオンからの脱退を宣言している。

 そして、明日には正式にアース・ガバメントに帰属する事が発表される。

 第一次宇宙戦争から6年……今回の戦いを経て、ついに戦争が終結するのだ。

(これでいい……凛を巻き込む必用はない。後は俺達が戦争の裏で暗躍していた組織を追い詰めればいいだけだ)

 それぞれが色々な想いを抱えながら、平和が訪れる瞬間を待ったーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ