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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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敗者の帰還

 アランは見る影もなく破壊された宇宙要塞ヘカトンケイルを視認して、自身の判断が正しかった事に安堵した。

 謎の敵の奇襲を受けて逃亡したアラン達が向かう候補は2つあった。

 一つ目は月面都市タロース。

 もう一つは、実際に向かったブラック・ダンデライオン<タカネ>である。

 万全を期すのであれば、親E.G.勢力が支配している月面都市タロースに向かうべきであった。

 だが、E.G.軍宇宙艦隊と合流する為にブラック・ダンデライオン<タカネ>を目指したのだ。

 それはリスクが高い選択であった。

 E.G.軍宇宙艦隊が宇宙要塞ヘカトンケイルでファングに敗北していれば、敵の要塞にチャリム2機で突撃する事態になっていたからだ。

 それでも、アーサー達が勝利すると推測してブラック・ダンデライオン<タカネ>を目指したのであった。


「どうやらアランの想定通り、E.G.軍宇宙艦隊が勝利したようだね」

「信じらんねぇ。最終防衛ラインが突破されるなんてよ……宇宙要塞ヘカトンケイルはファング最大の戦力が配備されていたはずなのに……」


 モニターに映るジェイクの顔は暗かった。

 事情があって同行しているとはいえ、ジェイクはブラック・ダンデライオン<セイヨウ>出身なのだ。

 味方の最終防衛ライン上にある宇宙要塞ヘカトンケイルが破壊されて、敵であるE.G.軍の侵入を許した事は気分が良いものではないのだろう。


「アーサーとカーライル中尉がいれば当然の結果だ……と言いたいところだが、違う理由だろうな」

「アランは、あれの事が気になるんだね」

「あぁ、そうだよ大佐」

「なぁなぁ、俺には意味が分からないんだが。教えてもらえないか?」


 アランと(さい)大佐は、ファング側が敗北すると推測していた。

(ジェイクは気づいていないのか。この戦争の違和感に……なら気付かせるだけだ)


「ジェイクは何でE.G.軍宇宙艦隊が侵攻出来たか知ってるか?」

「インドのE.G.軍宇宙センターに宇宙艦隊を集めたからだろ?」

「ファングはどうやって地球に侵攻した?」

「宇宙戦艦で大気圏を突破してだよ。俺がイーサンの旦那と地球に降りた時は、ファング第一艦隊の旗艦フェンネルに乗ってた。地球であの銀色に撃沈されたけどな」

「不思議だと思わないのか?」

「何がだ? 俺には普通だと思うけど。お互い軍備を整えて侵攻しただけだろ?」

「今回の戦争で、何でE.G.がファングの奇襲を受けたと思う?」

「奇襲っていうけどさ、6年前の第一次宇宙戦争から停戦してないんだぜ。E.G.が勝手に奇襲だと思ってるだけだろ?」

「違うんだよ。そもそも停戦状態になった理由を覚えているか?」

「あっ、そういう事か……俺達はどうやってスペースデブリを掻い潜って地球に降下出来たんだ?」

「分からないよ。そして、E.G.軍宇宙艦隊が打ち上げに成功した理由もね。何故か分からないが、地球外周を埋め尽くしていたスペースデブリの一部が消えていた。まるで、そこを通って侵攻して下さいと言っているかのように」

「俺の頭じゃ理解出来ねぇ。でも、とんでもねぇ事が起きている事は分かる」


 ジェイクが頭を抱える。

 違和感には気付いたが、理解しきれていないようだ。

 あと一歩踏み込んで説明すればジェイクが理解出来ると考えた(さい)大佐が、アランに代わって説明を続けた。


「それを感じ取っていれば十分ね。ファングは謎の技術で地球侵攻を開始した。この謎の技術はファング独自の技術だったのだろう。だから、E.G.軍は大気圏を突破して宇宙に上がる事は出来ないと思っていたんだろうね。E.G.軍が侵攻してこないと分かっているなら、宇宙に戦力を残しておく必要は無いね。だが、どういう経緯か分からないけど、E.G.軍が同じ技術を利用して侵攻を始めてしまった……」

「そんな事になったら、ファング側は抵抗出来ないじゃないか?」

「その通りだよ。宇宙要塞ヘカトンケイルは頑張った程度で突破出来るものではないからね」

「どういう事なんだ? 謎の組織はファングの勝利を目指していたと思ってたんだけど」

「その通りだろうね。今までの情報から推測するとね」

「なら何でE.G.軍宇宙艦隊が勝利したんだ?」

「謎の組織にも裏切者がいる……そういう事だ」


 アランは今まで把握した状況から導き出された答えを伝えた。

 ファングが敵であるE.G.に技術供与する事は無い。

 ファングの勝利を願う謎の組織も同様だ。

 それなら、謎の組織またはファングに裏切者がいると考えるのが妥当である。


「ホントかよ! 滅茶苦茶だな!」

「そんな物さ……世の中なんてものは。E.G.軍にも軍の力を私欲に使う裏切者がいたからさ」

「一応聞いておくよ。そういう奴はどうなるんだ?」

「死ぬよ……少なくとも俺の目の前ではね」

「なるほど。分かったよ。でも、アランみたいな子供にそういう事言って欲しくはなかったけどね……」


 ジェイクががっかりした様子を見せた。


「それは私も同意するね。可能であれば、戦いなどさせたくなかったよ」


 (さい)大佐までジェイクに同意した。


「子供扱いするなよ。過保護なんだよ!」


 アランは恥ずかしさを隠す為に悪態をついたが、悪い気分ではなかった。

(本当に心配してるんだな……家族でもないのにな……)

そのまま暫く3人で話していたら、ブラック・ダンデライオン<タカネ>が見えてきたーー

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