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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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ブラック・ダンデライオン<タカネ>

 E.G.軍宇宙艦隊は地球に最も近い宇宙の居住区であるブラック・ダンデライオン<タカネ>に辿り着いた。

 地球圏に4基あるブラック・ダンデライオンの中でも最大の大きさを誇る<タカネ>の占領は困難を極めると思われていたが、予想外の事態により戦うことなく入港する事が出来た。

 <タカネ>の自治区代表パトリック・アームストロングがE.G.軍宇宙艦隊を受け入れる事を表明したのだ。

 大多数の戦力を地球侵攻に送り出してはいるが、最低限の防衛戦力は保有しているので、治安維持用のチャリムまで動員すれば、疲弊したE.G.軍宇宙艦隊と互角に戦う事も可能だった。

 それでも、戦いによる被害が及ぶ事を恐れて降伏し、宇宙同盟ブーケ・オブ・ダンデライオンからの脱退を宣言したのである。

 宇宙の民の代表であるネイサン・アークライトが支配する最古のブラック・ダンデライオン<セイヨウ>や、最も地球侵攻に意欲を見せている好戦的な<アカミ>であればあり得ない対応である。

 だが、地球に最も近い位置にあり、地球で暮らす人類への対抗意識が低い<タカネ>ではアース・ガバメントに帰属する事に抵抗が少なかった。

 実際、1年前に代表に選出されたパトリック・アームストロングは親地球派であった。

 ブラック・ダンデライオンの食料自給率が低い事も後押ししているといえる。

 戦争の長期化による飢えで苦しむより、自治権と引き換えに食料を調達しようという思惑もあるのだろう。

 アームストロング代表の宣言は<タカネ>に住む宇宙の民からも英断と評された。

 今後について、パウエル中将がアームストロング代表と交渉する事となった。

 本来であればアース・ガバメントの高官が交渉するべきであるが、6年前の第一次宇宙戦争で全ての通信衛星を失っており、地球との交信が不可能な為である。

 パウエル中将が交渉を行っている間、E.G.宇宙艦隊は<タカネ>所属のファング第四艦隊の基地で過ごす事となった。

 戦う必要が無くなったE.G.軍宇宙艦隊は休暇を与えられた。

 <タカネ>で久しぶりの休暇を満喫するE.G.軍の兵士達。

 その中でただ一人、険しい顔で武器を手に取る男がいた。


「私は休暇を与えたはずですよ。武装の持ち出しは許可しておりません」


 艦長のフィオナが拳銃とアサルトライフルを点検しているカーライル中尉に話しかけた。


「見逃してくんねぇかな、フィオナちゃん」


 カーライル中尉は武器を点検する手を止めずに言った。


「私を呼ぶ時はエイベル少佐か艦長にして下さい。タカネへの武器の持ち込みは見逃せませんよカーライル中尉」

「なら無理を押し通す!」

「許可できません! 武器を持ち込めばタカネの市民を刺激する事になります。不要な争いを起こすだけです」

「リスクは承知の上だ。それでも俺は行く」

「どうしてですか?」

「分かり切った事を聞くなよ! 俺が何の為に生き恥を晒しているか知ってるだろ?」

「そんな悲しい事を言わないで下さい。貴方は……」

「俺は今も罪を背負って生きている」

「貴方の罪ではないでしょ?」

「俺の罪だ。軽薄だった俺が見過ごした罪だ。E.G.軍のくそったれどものせいで多くの人を悲しませた……」

「それは軍の問題であって、貴方一人の問題ではありません」

「そんな正論はいいんだよ!」

「正論の何が悪いのですか? 貴方が間違った事をしようとするから言ってるのです!」

「間違っていようと、恨まれても構わない。俺は戦争犯罪を止める。その為に出来る事をする」


 カーライル中尉は過去を思いだしていた。

 所属していた部隊が起こした戦争犯罪。

 軍の力で市民を蹂躙した鬼畜共と同列に扱われた屈辱。

 死なせてしまった女性……

(悲劇は繰り返さない。俺が止めて見せる!)


「信じられないのですか? 一緒に戦った仲間を」


 フィオナ艦長が悲しそうな顔で言った。

 それでも、カーライル中尉の決意は揺るがない。


「信じられないさ。さんざん裏切られたからな。別に顔見知りのフリージア隊の皆までは疑ってはいない。だけど、他の奴らは知らねぇよ」

「貴方は……どうして……」

「ごめんよフィオナちゃん。迷惑かけるけど俺は自分の戦いをしてくるさ」

「艦長命令です! 誰か止めて下さい!」


 フィオナ艦長がカーライル中尉を止めるよう呼びかけたが、誰も止めようとはしなかった。

 ロサンゼルス基地でのロイド中将との因縁の再会時に、カーライル中尉の過去を知ったからである。

 軍人としては上官であるフィオナ艦長の指示を聞くべきである。

 それでも、カーライル中尉を止めなかった。

 同じ軍人であり、戦友だからこそカーライル中尉の心情に配慮してしまったのだ。

 カーライル中尉は誰にも止められる事無く、ファングの基地を出てタカネの市街地に向かったーー

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