宇宙要塞ヘカトンケイル攻略戦7
既に敵戦力は第三艦隊によって追い払われていた為、先行している戦艦フリージアに追いつくのは簡単であった。
「遅いぞアーサー。流石に疲れてきたぜ」
カーライル中尉のアルダーン・カスタムHEが、戦艦フリージアのカタパルト上で攻撃を続けている。
「オリヴァーさんが疲れる程働いているとは思わなかったですよ」
「どういう意味だい? 俺は何時だって全力だろ?」
「速攻で撃退されて、ゆっくり休んでると思ってましたよ」
「おいっ! 最近俺の扱い悪くないか? 可愛い後輩のアーサーちゃんは何処いったのかね?」
「可愛い後輩の座はアランに譲りましたよ」
「それは……ねぇだろ! アランが一番可愛くねぇだろ?」
「どうしてですか? 見た目は可愛い少年じゃないですか?」
「あぁ、見た目はね。でも中身は歴戦の勇士だろ? ストイック過ぎるんだよ。子供なのに!」
「それは分かりますね」
「俺はアランの事を尊敬し始めちゃってるんだぜ!」
「オリヴァーさんにも敬意って感情があったんですね」
「あるさ! アーサーに対してはないけどね」
「それは残念。それなら尊敬して頂ける様に頑張りますか! 要塞砲を破壊するので援護をお願いします」
「任せておけ」
アルダーン・カスタムHEがロングレンジライフルで的確に狙撃していく。
戦艦フリージアの砲撃も的確だ。
要塞への進路上の敵チャリム部隊が排除されていく。
アーサーは安心してカリバーンを要塞に向けて最大速度で飛行させた。
(こんなにも安心して戦えるのは初めてだな。オリヴァーさんとフィオナ艦長が僕を守ってくれている。後は僕が役割を果たせば良い)
一気に敵要塞に接近出来ると思われたが、敵の戦艦の内1隻が行く手を阻んだ。
無理にカリバーンの進路に割り込んだので、戦艦フリージアの主砲の直撃を受けて甚大なダメージを受けている。
無謀な行動だが、ファングも必死なのだろう。
宇宙要塞ヘカトンケイルが破壊されたら後がない事を理解しているからだ。
半壊状態の敵戦艦がカリバーンの侵攻を阻止しようと対空攻撃を開始した。
(ここで無駄な力を使いたくはなかったのだが……やむを得ない!)
アーサーはトライ・レジェンズをランスモードに切り替えて、敵戦艦上部を薙ぎ払った。
トライ・レジェンズ先端から伸びた高出力ビームが敵戦艦の上部を撫で、搭載されていた武装を次々消し飛ばしていった。
アーサーは攻撃能力を失った敵戦艦を無視して宇宙要塞ヘカトンケイルに接近した。
要塞砲はカリバーンを撃墜しようと攻撃を続けているが、アーサーの技量なら余裕で回避出来る。
「要塞砲を破壊します! これが勝利の一撃だあああああ!」
カリバーンの右手のトライ・レジェンズの先端から高出力ビームが伸びる。
アーサーは一筆書きの様に、要塞砲をビームの先端でなぞった。
次々に沈黙する要塞砲。
要塞からの攻撃が無くなったので、E.G.軍第三艦隊が要塞に接近を開始した。
敵の要塞を守っていた敵戦艦が次々に撃沈していく。
(ファングに要塞を守るだけの戦力は残っていない。後は部隊の皆を守るだけだ。折角ここまで生き残れたんだ。全員揃ってアランを出迎えないとな)
アーサーは友軍を守る為、敵チャリム部隊を撃墜していったーー
*
「宇宙要塞ヘカトンケイルは沈黙した。我らE.G.軍宇宙艦隊の勝利である! この勝利はブレナン大将と第一艦隊の勇士が自らを犠牲にして活路を切り開いたからだ! E.G.軍に勝利をもたらした最強の剣、戦艦グラムと第一艦隊の英霊達に敬礼!」
ブレナン大将から指揮権を委譲されたパウエル中将から、E.G.軍宇宙艦隊の勝利が告げられた。
生き残った者達は敬礼をした。
パウエル中将に言われなくても、皆が敬礼しただろう。
この勝利に大きな犠牲が払われた事を、戦いに参加した兵士達全員が知っているからだ。
アース・ガバメントの……地球の未来の為に特攻した第一艦隊所属の戦艦。
要塞内部に侵入した第一艦隊所属のチャリム部隊は要塞内部の破壊に成功したが、誰一人戻らなかった。
パウエル中将が率いる第二艦隊は旗艦である戦艦バルムンク以外、全ての宇宙戦艦が撃沈している。
護衛のチャリム部隊はアルダーン3機しか生存していない。
エイベル少佐が率いる第三艦隊はフリージア隊は全員生存出来たが、所属の宇宙戦艦は4隻に減っていた。
E.G.軍宇宙艦隊は壊滅状態である。
もう、部隊を分ける必要は無くなったので、パウエル中将を中心に部隊を再編成する事になった。
この後、E.G.軍宇宙艦隊はブラック・ダンデライオン<タカネ>の占領に向かう事になる。
全長50kmの広大な人口の大地を占領するには戦力が足りていない。
それでも、援軍が期待できない以上、今の戦力で最後の目的を果たす必要がある。
所属チャリム部隊を回収したE.G.軍宇宙艦隊は、休む間もなく敵の本土の一つであるブラック・ダンデライオン<タカネ>に向かったーー




