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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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宇宙要塞ヘカトンケイル攻略戦6

 イーサンの足止めを行っていたアーサーは、E.G.軍宇宙艦隊総司令官であるブレナン大将の宣言を聞いた。

(指揮権をパウエル中将に委譲するだと! 戦艦グラムが……ブレナン大将が特攻を開始したのか?! オリヴァーさんも気になるが、第一艦隊の状況も気になる。このままイーサンの足止めを続けて良いのだろうか……)

 このままイーサンの足止めを続けるべきか。

 カーライル中尉の援護に向かうべきか。

 第一艦隊の援護に向かうべきか。

 アーサーは決断出来なかった。

 決断出来ない理由は戦況が読めなかったからだけではない。

 イーサンのリベレスティンの猛攻を捌くので手一杯であり、今だ敵チャリム部隊に包囲されている状況だからである。

 指揮官であるイーサンのリベレスティンへの誤射を恐れているから集中砲火を受けずに済んでいるが、リベレスティンから離れた瞬間に全方位からのビーム攻撃で蜂の巣にされるかもしれない。

 ピピッ!

 戦艦フリージアから通信が入った。


「グリント二等兵。カーライル中尉がレイモンド・バージェスを退けました。現在、帰還して補給作業を行っています。また、第一艦隊が特攻で要塞への進路を切り開いてます。これより、第三艦隊は第一艦隊の援護に向かいますので、援護をお願いします」


 通信士の凛が的確に状況を連絡してくれた。

 凛が言ったことを裏付けするかのように、敵戦力が中央側へ移動を開始している事に気付いた。

(オリヴァーさんがレイモンドを退けた?! しかも、補給中という事は大きなダメージを受けていないのか……一体何をやったんだよオリヴァーさん! アランと互角と言っていいくらいの戦果じゃないか! 後はイーサンのリベレスティンさえ撃墜すれば!)

 もう敵のチャリム部隊には囲まれていない。

 後はイーサンのリベレスティンの一騎打ちに勝利すれば良いだけだ。


「凛ちゃん。申し訳ないけど、直ぐに援護は出来ない。イーサンのリベレスティンを退けてから追いかけるよ。僕の援護は不要だから、中央に移動した敵の追撃をお願いするよう艦長に伝えてもらえるかな?」

「分かりました。グリント二等兵、ご武運を!」


 アーサーは凛の返答を聞いた後に通信を切った。


「さて、どうやら。ファング側の敗北が濃厚となったようだね」

「まだだ! まだ終わっていない!! ここには私がいる! 戦える戦士がいる限り、ファングに敗北はない!」

「戦争は一人で行うものではないよ。E.G.軍宇宙艦隊が要塞を撃破したら、アースガ・バメントが勝利して戦争は終わる」

「一人でも戦い抜くさ! 止めたければ俺を殺して見せろ!」

「殺す気はないよ。まぁ、撃墜したら結局死なせてしまうだろうけどね。それでも、殺したくて戦ってはいない」

「甘いんだよ!! そのような甘い考えでは私を退ける事は出来ない!」

「大丈夫だよ。操縦の技量は考えで決まるものはないから」


 アーサーはカリバーンを後退させながら、トライ・レジェンズをアローモードに切り替えて射撃攻撃を行った。

 射撃武器を失ったリベレスティンは遠距離での反撃手段がない。

 だから、カリバーンを全力で追いかける必要がある。

 リベレスティンがトライレジェンズから放たれるビームを最小限の動きで避けながら

 カリバーンに接近する。

 だが、全てのビームを回避しきる事は出来ない。

 避け切れないビームは、リベレスティンが両手に持つビームアックスで全て薙ぎ払った。

 イーサンの技量だから為せる技。

 リベレスティンが無傷でカリバーンに追いつき、ビームアックスで斬りかかった。

 アーサーはトライ・レジェンズをソードモードに切り替えてビームアックスを受け流した。

 通常の機体であれば、イーサンの攻撃を受けきれなかっただろう。

 普通であれば射撃武器から格闘武器へ持ち替える余裕がないからだ。

 3形態に変形出来きるトライ・レジェンズだからこそ為せる戦い方である。

 武器を持ち替えなくても、射撃と格闘をこなせるのである。

 アーサーはビームアックスとトライ・レジェンズの衝突の反動を利用して、リベレスティンから距離を離して射撃攻撃を続けた。

 カリバーンとリベレスティン、互いの性能を最大限に生かした戦い。

 お互いに何度も攻撃を行ったが、互いの機体に明確なダメージは無い。

 それ故、互角に見える戦いであったが、アーサーは勝利を確信していた。

(後少し。そろそろ、チャンスが巡ってくるはずなんだけど……)

 リベレスティンのビームアックスが光を失った。

 想定通りであれば、ビームを弾いている内に破損したのだろう。

 ビームアックスは射撃攻撃を弾く為に作られている武装ではない。

 無理がたたれば破損するのは当然の結果だ。


「くそっ、こんな甘い相手に俺は負けるのか……いや、認めるべきだな。見事だ、E.G.軍の英雄!!」

「僕は英雄じゃないよ。僕はアーサー・グリント二等兵。与えられた責務を果たした、ただの軍人だよ」

「ただの軍人か……過ぎた謙遜は嫌味に聞こえるよ。ファング最強のパイロットが、ただの軍人に負けたら部下に示しがつかないだろ! アランにも約束をすっぽかされるし、今日は最悪な一日だ……」

「それは申し訳ない。でも、こちらにも事情があってね。英雄は止めたんだ」

「逃がしては……くれないよな?」

「そうだね。見逃しはしないよ」

「それでもあがいて見せるさ!」


 イーサンのリベレスティンが最大速度で撤退を始めた。

 アーサーはトライ・レジェンズをアローモードに切り替えて、リベレスティンを狙い撃った。

 一撃だけ、左肩部に直撃したが、リベレスティンは無事に戦場から離脱していった。

(イーサン、全力で逃げてくれて有難う。君を見逃さないっていうのは嘘だよ。君に全力で逃げて欲しかったからね)

 カリバーンの性能であればリベレスティンを追撃出来た。

 だが、アーサーは要塞攻略を優先させたかったので追撃しなかったのだ。

 一部の要塞砲は第一艦隊が破壊したが、戦艦フリージアが向かった要塞右側の要塞砲は今だ健在である。

 要塞砲の破壊にはカリバーンのランスモードが有効だ。

 イーサンを退けたアーサーは先行している第三艦隊を追った。

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