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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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宇宙要塞ヘカトンケイル攻略戦5

 フリージア隊が敵のエースであるイーサンとレイモンドと戦闘を行っていた同時刻、ブレナン大将は決断を迫られていた。

 一番損害が大きいパウエル中将が指揮する第二艦隊は、既に戦艦バルムンクしか残っていない。

 第二艦隊が侵攻している右の侵攻ルートは一番手薄だが、要塞を攻略するだけの戦力が残っていない。

 被害が最も少ない第三艦隊の戦艦は残り5隻と多いが、左の侵攻ルートは敵のエースを含めた敵の最大戦力が集中している為、戦線が膠着している。

 それ故、総大将であるブレナン大将が率いる第一艦隊が敵中央を突破して敵要塞を攻略する必要がある。

 だが、ブレナン大将が指揮する第一艦隊も残り3隻であり、戦力が十分とは言えない。

 敵の宇宙要塞ヘカトンケイルは耐ビームコーティングに覆われた全長10kmの構造物だ。

 要塞の前面に設置されている要塞砲の攻撃によって接近を阻まれている。

 戦艦の主砲で要塞砲を破壊しようと試みたが、耐ビームコーティングが施されたシールドアームによって阻まれた。

 ミサイル攻撃もSIWS(近接防空システム)によって全て迎撃されてしまった。

 どれだけ戦略を練っても戦力が足りな過ぎて、要塞を攻略する手立てが思いつかない。

(アース・ガバメント……世界政府の軍の最高司令官でありながら戦力不足とはな……)


「無様だな……」

「何が無様ですか?」


 副官に問いかけられて、声に出ていた事に気が付いた。


「軍の最高司令官である大将が丸裸同然で最前線に出ているのでな。だから無様だと思ったのさ」


 ブレナン大将は自嘲気味に言った。


「私はそうは思いませんよ。丸裸と理解した上で戦場に立っているではないですか。お偉いさんが丸腰で戦場に立つとは思いませんでしたよ」

「そうでもしなければE.G.軍はろくに抵抗もせず敗北していた。自ら宇宙の民に喧嘩を売っておきながら、やり返されたらまともな抵抗をしない」

「どこにでもいますよ、見かけ倒しな人。アース・ガバメントもハッタリだけの情けない組織だったのでしょう」


 ブレナン大将は副官の顔をまじまじと見た。


「今まで傍で仕事をしていたが、このような男だったとは知らなかった」

「上官の前では猫をかぶりますよ。特に最高司令官相手なら念入りにね」

「猫をかぶらなくなったという事は、上官だとは思われなくなったという事かね?」

「その通りですね。ブレナン大将は上官でも指揮官でもない。E.G.軍最高の戦士です」

「私が戦士か?」

「そうですよ。大将なら例えE.G.が敗北しても、安全なところで余生過ごす事が出来た。それなのに戦力が足りなくても地球を守る為にこの場に立った。全員が覚悟を決めております。どうか迷わないで下さい。我々は未来の足枷にはなりたくありません」


 ブリッジを見渡すと、皆が副官の意見を肯定する様に頷いていた。

 ブレナン大将は自身の決断の遅さを後悔した。

 副官はブレナン大将が、これから下す決断を予測していた。

 そして、決断を鈍らせている要因が副官を含めた部隊の皆である事を理解していた。

(決断するのが指揮官の仕事なのに、最後まで迷ってばかりの人生だった。私の迷いのせいで余計な事を言わせてしまったな。未来の足枷になりたくないか……老人である私ならともかく、未来がある者達に言わせたくはなかった。それでも、それが皆の決意なら……最後は戦士として胸を張って戦おう!)


「全軍に通達する! 今よりE.G.軍宇宙艦隊の指揮権をパウエル中将に委譲する! 戦艦グラム最大戦速! 我らが盾となる! 第一艦隊続け! 一隻で良い、敵要塞に接舷して要塞砲を叩け!」 


 前方で戦闘中のチャリム部隊を掻き分けて、戦艦グラムが宇宙要塞ヘカトンケイルに向かって突撃を始めた。

 敵の攻撃を受けて、次々に報告される損傷個所。

 だが、そんなものはどうでも良かった。

 例えブリッジを撃ち抜かれても、戦艦グラムが止まらなければ盾としての役割は果たせる。

 後ろに続く、友軍の戦艦とチャリム部隊さえ健在であれば良かった。

 そして、戦艦グラムは敵艦隊の間を通り抜け、要塞目前に辿り着いた。

(特攻は初めてだが、結構攻撃が当たらぬものだな。私は運が良い……最後に一言残せる時間があった……)


「忘れるな! 未来を切り開いたE.G.軍最強の剣の名を!!」


 宇宙要塞ヘカトンケイルに戦艦グラムが突き立てられた。

 戦艦グラムの爆発によって要塞前面のシールドアームが吹き飛んだ。

 残り2隻の内1隻は敵の宇宙戦艦に激突して撃沈したが、最後の一隻が要塞に接舷する事に成功した。

 零距離での砲撃。

 敵の攻撃を受けても気に留めず、主砲を撃ち続けて要塞砲を破壊した。

 だが、集中砲火を受けて最後の戦艦も撃沈した。

 E.G.軍第一艦隊に所属する戦艦は全滅した。

 それでもE.G.軍の攻撃は止まらない。

 要塞砲の攻撃が止まった事で、チャリム部隊が要塞に接近出来るようになったからだ。

 帰る場所を失った第一艦隊所属のチャリム部隊が、ハッチを破壊して要塞内に侵入していった。

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