宇宙要塞ヘカトンケイル攻略戦1
アラン達が宇宙ステーション『高山柳』の調査へ向かった後、E.G.軍宇宙艦隊は宇宙要塞ヘカトンケイル攻略の準備を進めていた。
最終防衛拠点である宇宙要塞ヘカトンケイルを迂回してブラック・ダンデライオン本土を攻撃する事は出来ないからだ。
E.G.軍が勝利すれば、ブラック・ダンデライオン<タカネ>を占領する事が出来る。
B.o.D.が有するファングが勝利すれば、劣勢を強いられている地上の主要都市を占領される。
この戦いに勝利した陣営が戦争に勝利するのだ。
文字通りの総力決戦。
E.G.軍宇宙艦隊はブレナン大将の旗艦グラムを中心とした第一艦隊を中央に、両脇を第二艦隊と第三艦隊で固めて正面突破する事にした。
アーサーは最終決戦に向けて改修される愛機を眺めていた。
目の前でウォルフ技師長がシンセシスー2のデータを流用して、カリバーンのプログラムを改修してくれている。
改修が完了すれば、メインウェポンの可変武器トライ・レジェンズを二丁装備出来る。
カリバーンにはG.D.ジェネレイターは高級機用のVVS2グレードが搭載されている。
だから量産機では扱えない高出力のトライ・レジェンズを二丁装備するだけの出力の余裕があるのだ。
二丁を使い分ける事で、対艦用の高出力モードであるランスモードのクールタイムが半減出来る。
アーサーには敵戦艦の撃沈と、宇宙要塞ヘカトンケイルの主砲の破壊を求められるだろう。
敵のエースがいなければ簡単な仕事である。
だが、イーサン・アークライトのリベレスティンとレイモンド・バージェスのテトラトスが立ち塞がるだろう。
月面都市アルゲース攻略作戦時に、アランがイーサンの副官であるアマンダが搭乗するリベレスティアを破壊してくれているから少し負担が減っている。
それでもアランが不在なのが非常に厳しい。
カーライル中尉の腕は悪くない。
歴戦の兵士であり、元々部隊のエースだったのだから。
一般の兵士相手では負けるとは思えない。
それでも、イーサンやレイモンドと実力を比べた場合、明らかに劣って見える。
(どちらを任せても、どれだけ持つか分からない。部隊のパイロット達と連携すればオリヴァーさんでも対抗出来るか? 難しいな。他のパイロット達から順番に撃墜されたら対抗出来ない。アランの不在は厳しいな……僕一人で何とかするしかないかな……)
アーサーが次の戦闘でどうするべきか悩んでいたところ、不意に肩に手を叩かれた。
「なぁ~に難しい顔してんだ? 戦う前から眉間にシワを寄せてたら疲れちまうぞ」
肩を叩いた相手はカーライル中尉だった。
「オリヴァーさんが心配だったのでね」
「俺の心配? 俺に惚れちゃったの?」
「オリヴァーさんには惚れませんよ」
「俺にはって事はアランならOKって事か?」
「なっ、何言ってるんですか! そんな訳ないでしょ!」
「でもアランの事を考えていたのは正解だろ? バークス少年は俺と違ってモテるなぁ」
「正解ですけど、惚れてはいないですよ!」
「まぁ、心配すんなよ。俺なりに何とかするからさ」
「オリヴァーさんの実力では、イーサンとレイモンドどちらが出てきても対抗出来ないでしょ」
「ハッキリ言ってくれるね。お兄さん少しへこむよ」
「ハッキリ言わないと駄目だからです。命に係わる事を誤魔化せない。撃たれたら死ぬんですよ!」
「知ってるさ。痛いほどにね。俺の実力じゃアイツらには対抗出来ないよな」
「なら、どうして何とかするって言ったんですか?」
「対抗しなければいいのさ。実力が劣っていても邪魔は出来る。イーサンの副官いただろ? あのアマンダとかいう女性。アイツのリベレスティア結構うっとおしかっただろ?」
「確かにうっとおしかったですけど……オリヴァーさんのアルダーン・カスタムはビームマシンガンを装備した接近戦仕様のカスタム機でしたよね」
「そうだよ。でも接近戦では敵わない。だから戦い方を変えるのさ。見てみろよ。シンセシスー1用に準備していた武装も全部積み込んでるんだ。宇宙では積載量を気にしなくても平気だからな」
カーライル中尉が指を差した先には、ウォルフ技師長以外の整備班の皆が総がかりで武装の取り付けを行っていた。
狙撃用のロングレンジライフル、バズーカ、ミサイルポッド……
多くの武装に加えて、追加装甲で既に2倍近いサイズになっている。
今までのカーライル中尉の機体とは真逆の重装甲の射撃戦用の装備となっている。
「決戦直前に戦い方を変えて大丈夫ですか? 慣れてないからやられちゃいましたなんて聞きたくないですよ」
「大丈夫だろ。後方からの射撃支援だから、いきなりやられる事はないだろうし。直ぐに慣れて援護するからさ!」
「期待してますよ。僕一人ではイーサンとレイモンド二人相手に勝てないですからね」
「任せてくれよ! 期待を越える機体に仕上げてもらうからさ!」
「オリヴァーさんを見てたら気分が楽になりましたよ。お気楽キャラも捨てたもんではないですね」
「お気楽キャラだって? 頼りになるカッコイイお兄さんだろ?」
「そういう事にしておきますよ」
「じゃぁ、俺は愛機の確認に行ってくるよ」
カーライル中尉が愛機の方に歩いて行った。
(弱気になっていたが、オリヴァーさんのお陰で吹っ切れた。アランが不在でも二人ならやれるさ!)




