苦戦
後2kmで後方の敵戦力と接敵する。
アランはシンセシスー2を人型形態に変形させた。
更にセンサーシステム『百目』を起動して、肩部のシンセシス・ライフルをAIモードに切り替えた。
最速で敵戦艦を撃沈出来なければ味方が全滅する。
だが、対艦装備が無いシンセシスー2にとっては簡単な事ではない。
多少無理をしてでも、戦艦を撃沈する事に集中する必要がある。
(頼んだぞ『Synthesis ver.2』。お前の射撃能力だけが頼りだ)
アランはシンセシスー2に搭載された統合プログラム『Synthesis ver.2』に祈った。
プログラムに祈ったところで無意味である。
それでも、その無駄な祈りが不安を払拭してくれる。
(さぁ、戦闘の始まりだ!)
眼前には敵のチャリム部隊が展開している。
敵はアルダーン5機、リベレーンVE3機。
(E.G.軍とファングの主力機の混成部隊。大佐達の想像通り、敵は両軍の背後で暗躍している! 俺達の真の敵だ!!)
アランはシンセシスー2格闘プログラム『摩利支天』を起動して、先頭のアルダーンを斬り払い、そのまま敵戦艦へ向かって飛行を続けた。
周囲を敵チャリムに囲まれたが、シンセシス・ライフルのオート射撃のお陰で接近されずに済んでいる。
(このまま敵戦艦に取り付いて……何っ!)
アランはモニターに映し出された敵戦艦を見て驚いた。
視認出来た敵の戦艦はE.G.軍第二艦隊の旗艦バルムンクに似ていた。
(E.G.軍のバルムンク級戦艦……戦力を隠し持っていたのか。お前らの様な奴らがいるから……お前達のような奴らがいるからあああああ!!)
アランは敵戦艦のブリッジ目掛けてビームブレイド2本を突き立てた。
敵戦艦の耐ビーム装甲がビームブレイドのビームを弾き、激しい重粒子のシャワーを浴びる。
シンセシスー2にも耐ビーム装甲が搭載されているので致命傷にはならないが、細かいダメージは受けている。
敵戦力の全てを把握出来ていない状況でダメージを受けるのはリスクが高い。
途中で補給を受ける事すら困難な状況だからだ。
それでも、今は無理を押し通す必要がある。
敵チャリム部隊がシンセシスー2を排除しよと接近を繰り返すが、シンセシス・ライフルのけん制射撃が阻む。
ビームライフルを使用しないのは、味方の戦艦への誤射を恐れてだろう。
(愚かだな。誤射を恐れた結果、味方を見殺しにするとはな。これで終わりだ!)
シンセシスー2のビームブレイドが敵戦艦のブリッジを貫いた。
ブリッジから連鎖する様に、次々と爆発が広がっていく。
戦艦が撃沈したことで誤射の不安が無くなった敵チャリム部隊が、慌ててビームライフルで攻撃してきた。
(遅い。味方戦艦を巻き込んででも俺を撃てば勝機があったのにな)
1機、2機、3機……次々とビームブレイドで敵機を斬り裂いていった。
最終的に残っていた7機の敵チャリムを撃墜する事が出来た。
だが、想定より時間がかかってしまった。
謎の部隊はE.G.軍宇宙艦隊の友軍より錬度が高かったのだ。
敵は福山少佐が言っていた、軍から引き抜かれたパイロット達なのだろう。
アランはシンセシスー2を飛行形態に変形させ、戦艦ブルーベリーの元に向かった。
友軍のパイロット部隊の通信から悲痛な声が届く。
「オースティィィィィン! この野郎!」
「焦るなコンラッド! 言わんこっちゃない!」
オースティンとコンラッドの機体の反応が消えた。
「どうするエドワーズ! 持たないぞ!」
「敵がブリッジに取り付いたぞ! 何とかならないかグレゴリー!」
「敵が多すぎんだよ! このままでは大佐が!」
アランはシンセシスー2を最大速度で飛行させる。
(あれはシップデストロイヤー。急げよシンセシスー2!!)
戦艦ブルーベリーのブリジットに取り付いた敵のチャリムは、戦艦破壊用の携帯兵器シップデストロイヤーを携帯している。
これを使われたら、最新鋭の戦艦であっても簡単に撃沈する。
シップデストロイヤーを止める為、アランは最大速度で向かっているが間に合わない。
(戦艦ブルーベリーから離れ過ぎた。俺の失策だ……)
敵チャリムが戦艦ブルーベリーのブリッジにシップデストロイヤーを突き立て……背後から飛来したビームに貫かれて爆散した。
(何だ? 味方の反応?! カタパルトから!)
「おいおい、なんだこりゃ?! 何でリベレーンVEとアルダーンが一緒に襲ってくるんだよ!」
アランは通信から聞こえる声の主に心当たりがある。
「上手に焼けたじゃないかジェイク」
「そいつは笑えねぇ冗談だよ、アランの旦那!」
「兵士なんだろ? 嫌ならパン屋に戻れよ!」
「へいへい、今は敵を焼くのが得意なパン屋ですよ」
「ところで、何で出撃している?」
「私が許可したね。緊急事態だからね。巻き込まれた彼にも選択する権利がある。ここで戦うか、死ぬか」
ブリッジの崔大佐から通信が入った。
(ジェイクを開放したのは大佐だったか。大胆な事をする。でも選択肢が戦うか、死ぬかって、選択の余地がないな……)
「ところでアランの旦那。コイツらなんだよ」
「説明しただろ。こいつらが俺達の敵で、世界の敵だ!」
「世界の敵か……そいつはいい。気分が盛り上がる!」
「やれるかジェイク? 独房で体がなまっていないか?」
「快調だよ! このアルダーンってやつ、リベレーンVEよりぬるぬる動いてくれる。五十肩が治ったような気分だ!」
「そいつは良かった! やるぞジェイク!」
「おうよ!」
こちらの戦力はアランのシンセシスー2とジェイク、グレゴリー、エドワーズ、ランドルの4人のアルダーン。
敵のチャリム部隊はアルダーンとリベレーンVEの混成部隊で13機。
開戦時より戦力差は縮まったとはいえ、まだ戦力差は2倍以上ある。




