敵襲
宇宙ステーション『高山柳』での調査結果から、柳秀貴が高田博士と親交があった事が分かった。
人類史上最悪のテロリストとして歴史に名を残した高田博士であったが、彼はG.D.ジェネレイターの開発者でもある。
彼の死後、G.D.ジェネレイターの利権で得た莫大な資産が何処へ流れたのか記録は残っていなかった。
今回の調査で、柳秀貴が高田博士の資産を受け継いだ可能性が高いと推測する事が出来た。
断定せず推測としたのは、もう一人の人物についての情報が無かったからだ。
名前に『山』がつく女性。
彼女も高田博士の資産を受け継いだ可能性がある。
だが、両者共に250年前の人物だ。
250年後の世界の戦いを直接操る事は出来ない。
二人のどちらかの子孫……又は作った組織が今の世界で暗躍しているのだろうか?
今回の調査で、E.G.とB.o.D.の裏で暗躍する組織の核心に迫る重大な情報を得られたと考えられる。
だが、次の調査の手がかりを見つける事は出来なかった。
柳、『山』がつく人物は250年間の間に無数に存在する。
資産の動きも、今となっては把握する事は困難である。
3時間追加で調査を行ったが、これ以上情報が得られないので、アラン達調査隊は戦艦ブルーベリーへ帰還した。
調査隊帰還後、ブリーフィングルームで次の目的地について話し合う事にした。
既にE.G.軍宇宙艦隊は宇宙要塞ヘカトンケイルへ進軍している。
今から追いかけても決戦には間に合わない。
柳秀貴の調査を継続する為に、月面都市に向かう事も検討された。
I.C.22年現在も使用されている宇宙の拠点の中では一番古いからだ。
だが、正規軍ではない戦艦ブルーベリーが直接入港する事は出来ない。
次の目標を決めかねていたところに、ブリッジから通信が入った。
「大佐! G.D.ウエイブを検知! IFクラス3基、追加でVS2クラスを多数検知しています」
「どうやら本当の敵に補足されたようだね。どこで嗅ぎつけられたのか分からないけど、どうやら知られたくない情報に触れてしまったようだね。知り得た情報を同士に渡す前に死ぬことは出来ない。頼みますよパイロトの皆さん。私はブリッジに向かいます」
崔大佐がブリーフィングルームに向かうと同時に、パイロット達は格納庫に向かった。
アランもパイロット達と共に格納庫に向かった。
(検知されたのはIFクラス3基。戦艦3隻か……敵チャリムはVS2クラスの量産機だから性能ではシンセシスー2の方が圧倒的だ。問題なのは数だな……)
敵戦艦3隻に囲まれても、アラン一人なら生存は簡単だ。
隙を見て飛行形態で離脱すれば良い。
だが、大佐達は違う。
今いる場所は打ち捨てられた宇宙ステーションがある宙域。
不要となった過去の施設の残骸が散乱している。
戦艦が通行するには不便だ。
戦艦ブルーベリーが危機を脱する事が出来るかどうかは、チャリム部隊の活躍次第である。
戦艦ブルーベリーのパイロットはアランを入れて6人。
この6人で3倍以上の敵戦力を退ける必要がある。
最初にシンセシスー2がカタパルトに搬送された。
アランが一番年下だが、部隊の最大戦力である。
それ故、部隊が生き残れるかはアランの活躍にかかっている。
「アランさん、出撃お願いします」
「了解だ。アラン・バークス、シンセシスー2で出撃する」
シンセシスー2が戦艦ブルーベリーのカタパルトから射出された。
アランに続いて味方のパイロット達も次々出撃する。
(敵戦艦は戦艦ブルーベリーの前方、左方、後方の3か所。背後からの攻撃が一番危険だな。コイツは俺が落とすしかない……いや、他も同じだな。他のパイロットには大佐の護衛をしてもらわなければならない)
既に敵チャリム部隊が24機、戦場に展開している。
接近を許せば戦艦ブルーベリーが撃沈される。
それだけは避けなければならない。
「チャリム部隊は全員、戦艦ブルーベリーの護衛につけ。俺が敵戦艦を落とす」
「大丈夫なのかアラン。俺達が援護しなくて」
「俺の援護より、大佐の護衛を優先させてくれ」
「俺達は元々大佐の部下だから護衛するのは嫌じゃないんだけどさ、年下のアランに押し付けるのは気が引けるんだよ」
「目的を忘れるな。俺は兵長であり、部隊のエースだ。自身の任務を果たすだけだ。それに護衛も安全ではない。後ろの敵機は俺が逃さない。それでも戦艦2隻と16機の敵チャリムを相手にする事になる。皆の無事を祈っている」
アランはシンセシスー2を飛行形態に変形させ、後方の敵戦艦に向かって行った。
パイロットの皆から次々に通信が入った。
「しっかり上官してるね。最初は15才の上官なんて不安だったけどな」
「あぁ、俺も思ってた。でも、今は信頼している」
「危なくなったら逃げろよ。アランが俺達を見捨てても恨まないぜ」
「そろそろ接敵に備えろ。部隊が生き残れるかどうかは俺達次第なんだ」
「OK、大佐の事は俺達に任せてくれよアラン!」
圧倒的な戦力差で行われる無謀な戦闘。
それでも味方のパイロット達に絶望感はなかった。
(あぁ、大佐は任せたよ。敵は俺が排除するからさ)




