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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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『高山柳』の本当の意味

 独房から戻ったアランは宇宙服に着替えた後、調査隊と合流した。

 戦艦ブルーベリーの乗員に調査専門の職員はいない。

 調査に参加するのは、チャリムのパイロット5名と整備班の4人とアランの合計10人である。

 打ち合わせをした結果、防衛システムが稼働している等の危険が予測されるので、戦闘訓練を受けているパイロットが先行して、安全が確保された後に整備班とアランが続く事になった。

 戦艦ブルーベリーが宇宙ステーション『高山柳』の横に停泊したところで、調査ミッションが開始された。

 搭乗口のハッチが開いた後、先頭のパイロットが宇宙ステーションの入口までワイヤーを張った。

 次に整備班のメンバーが呼ばれて宇宙ステーションの入口に取り付いた。

 整備班のメンバーが操作パネルの様な物を10分ほど操作した後、首を振った。

(セキュリティーが解除出来ないのか? いや、ソーラーパネルが死んでるから動作しないんだな。内部の設備も動作しないのであれば調査が難航しそうだな)

 宇宙ステーションの電力を賄っていたソーラーパネルは外観上は破損していないが、製造後250年近く経っているので劣化して機能不全となっているのだろう。

 整備班のメンバーが戻った後、パイロット達が爆薬を設置して、ハッチのロック部を爆破した。

 ハッチを開ける事に成功した調査隊は次々に宇宙ステーションに乗り込んでいった。

 アランの予想通り、内部も電力が通ってなく、酸素もない状態であった。

 だが、良い事もある。

 電力が通っていないので、防衛システムが動作する心配は無くなった。

 暗いままでは作業は行えないので、整備班が次々に作業用のライトを設置していった。

 宇宙ステーション内部の隔壁も動作しなかったが、爆破せずに解体する事にした。

 爆破した方が早く調査出来るが、大事なデータまで爆破してしまう可能性があるからだ。

 ロック部の解体に時間がかかると思われたが、整備班が手際よく解体していった。

 外壁部にある入口のハッチよりロック部の強度が弱いのだろう。

 各モジュール間の隔壁解体に少し時間がかかったが、宇宙ステーション内部は狭いので、直ぐに全部のモジュールの探索が可能になった。

 問題なのは、どのモジュールを探索するかだ。

 宇宙ステーションの重要施設は実験モジュールだ。

 だから整備班のメンバーは各実験モジュールを中心に探索を始めている。

 だが、アランの考えは違う。

(250年前の実験施設に価値は無い。どこかにあるはずだ。出資者の写真、メッセージ、出資者を称える言葉、記念碑……出資者につながる何かがあるはずなんだ)

 実験モジュール以外を重点的に確認しようと調査を開始したアランの目の前に、不自然な台座が現れた。

 場所は宇宙ステーション中央の結合モジュール。

 台座の前のコンソールを触ってみたが反応が無い。

 アランは通信で整備班のメンバーを呼び寄せた。

 整備班のメンバーがコンソールの下部を解体して、非常用電源を繋げてくれた。

 電力が通ったのでコンソールを操作すると、台座の中央に目的の男性のホログラムが浮かんだ。

(あたりだ! さて、どれを再生しよう。柳秀貴のインタビュー記録……これだ!)

 ホログラムの柳秀貴が語り始めた。


「何故宇宙ステーションの名前が『高山柳』なのかですか……宇宙ステーションって、地上より遥か高い処にあるじゃないですか。そして、この宇宙ステーションは私の分身の様な物。だから私、柳が遥か高い処にあるという意味で『高山柳』にしてみたんですよ。高山の柳って絵になりますよねーー」


 ホログラムの柳秀貴が語った内容は期待外れだった。

(違う何かあるはずだ。情報があるならここしかない。隠しメッセージを表示する操作は無いのか? 何か見落としている事はないのか?)

 いくら操作しても同じ映像しか出ない。

 アランが操作した後、整備班が操作しても同じメッセージしか再生されなかった。

(整備班の皆が操作しても隠しメッセージは出ないか……)

 アランはぼうっとしながら映像を眺めていた。

 柳秀貴がインタビューを受けている。

 恐らく自室なのだろう。

 研究者の部屋らしく、本棚には専門書が沢山収納されている。

 机の上は綺麗に整理されており、パソコンの隣にはフォトフレームが置いてある。

(フォトフレームか……男性二人と女性一人が映っている。左の男は若い頃の柳だな。白衣を着ているから、他の二人は柳の研究者仲間か。写真下部に不思議な文様が書かれている……違う! これは過去に使われていた文字だ)

 アランは整備班の皆と一緒に携帯端末を使用して文字の解読を行った。


『高山柳』それが俺達の定位置。

 Transparent desire……透明で無垢な欲望。

 あの日の願いを……未来へ……


 後半部は何かの願いの様だが、具体性が無くて意味がハッキリしない。

 だが、最初の一文は分かる。

 写真の人物を表しているのだろう。

 左が『柳』がつく名前の人物であり、柳秀貴を表している。

 中央の女性が『山』がつく名前の人物。

 右の男性が『高』がつく名前の人物。

 真ん中の女性には心当たりがない。

 だが、右の男性なら想像がつく。

 250年前……科学者……高田博士。

 人類史上最悪のテロリスト、高田仙李しか思いつかない。

 柳秀貴、彼は一体何者なのだーー

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