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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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宇宙ステーション『高山柳』

 アランは戦艦ブルーベリーに帰還してすぐ、ブリーフィングルームに向かった。

 ブリーフィングルームでは、他の搭乗員達が既に集まっていたので、アランは空いている席についた。

(どうにか作戦に間に合ったな。イーサンが手ごわかったから危なかった)


「アラン、お疲れ様。友達は助けられたかい?」

「あぁ、助けなくても大丈夫だったとは思うが、手助けは出来たと思うよ」

「それは良かった。それでは作戦の説明をするよ」


 (さい)大佐がモニターに建造物を映し出した。

(これは以前大佐に見せてもらった宇宙ステーション。ここで敵の手がかりが手に入ればよいのだが……)


「これは宇宙ステーションというものだよ。月面都市やブラック・ダンデライオンが建造される前は、この宇宙ステーションという建造物で生活していたのだよ。実際は生活というより、宇宙空間でしか行えない実験が主な目的ではあったがね」

「大佐、何故その宇宙ステーションという過去の建造物に向かうのですか? 我々は福山少佐の敵を討つために宇宙へ上がったと思っていたのですが」


 チャリム部隊のパイロットの一人が(さい)大佐に質問をした。


「君の考えは間違っていないよ。シニチの仇を討つのは我々の目的の一つだ。だが、仇とは誰の事かな?」

「ファングではないのですか? 我々の基地はファング第二艦隊の大部隊に包囲されて壊滅しました。ファングを倒す事が、仇を討つ事になるのではないでしょうか?」

「そのファングを操っている影の存在がいるとしてもかい?」

「ファングを操る?! そんな事が……」


 衝撃の事実を聞いて、質問していたパイロットが狼狽える。


「皆も聞いて欲しい。何故、ブラック・ダンデライオンの自治区は、E.G.設立後の僅か2か月で宇宙連盟ブーケ・オブ・ダンデライオンを樹立して開戦出来た? B.o.D.が設立した侵攻部隊ファングのリベレーンの性能は、当時のE.G.の主力であるティガー・マンを凌駕していた。私も第一次宇宙戦争『灰かぶりの夏』で戦ったけど、ファングの戦力は2か月で準備出来るものでは無かったよ。シニチ達エースパイロットがいなければ、地球圏はB.o.D.が支配していただろうね。今回も同じだよ。E.G.は敗北する」

「信じられません! 今は苦戦しているけど。アース・ガバメントが……世界政府が負けるはずがない!」

「負ける可能性が高いね。地球各地の戦況を知っているだろう。でも、今回もB.o.D.側にとってイレギュラーが発生しているから負けが確定したとは言えない」

「ブレナン大将の事か?」


 アランは今回の戦争でE.G.側の勝因があるとしたら、E.G.軍最高司令官であるブレナン大将が自ら艦隊を率いている事だと思っている。

 E.G.側に勝利の可能があるとしたら、ブレナン大将が率いるE.G.軍宇宙艦隊のブラック・ダンデライオン本土進攻作戦だけだからだ。

(E.G.軍に勝因があるとしたらブレナン大将だけだ。月面都市タロース、アルゲース共にブレナン大将が率いるE.G.軍第一艦隊が占領している。もっとも、彼が裏切者では無ければの話ではあるけどね)


「アランの想像通りだよ。ブレナン大将が率いるE.G.軍宇宙艦隊がブラック・ダンデライオン本土を占領すればE.G.軍が勝利する事が出来る。だが、彼も味方か分からない。B.o.D.の背後で謎の組織が暗躍しているのと同じで、E.G.の背後でも謎の組織が暗躍しているね。奴らの暗躍が無ければ、第一次宇宙戦争の時に我々が勝利していたよ。戦争中にも関わらずE.G.は軍事費を削減した。目覚ましい活躍をしたシニチ、メンサー大尉、ドーソン二等兵を反抗作戦から外した。明らかに不正を行っているね」

「それで、その不正と宇宙ステーションに何の関わりがあるのですか?」


 今度は操舵士が(さい)大佐に質問をした。


「私とシニチが謎の組織を調査したところ『ヤナギ』という言葉を聞いた」

「ヤナギ? 初めて聞きましたが、どういう意味ですか?」

「『柳』という樹木の名前だ」


 アランは『ヤナギ』をE.G.の共通言語で言い直した。


「樹木? アランは知っていたのか?」

「あぁ、知り合いに聞いた事があってな」

「アランが知っているのは……当然かな? 言葉を知っている仲間がいるからね。『ヤナギ』というのはね。我らの基地があった地、かつて日本と呼ばれていた国の言葉だよ。樹木の名前であり、家名でもある」

「それで、『ヤナギ』というのが宇宙ステーションと繋がりがあるのですね?」

「その通りだよ。私は樹木の名前で調査するより、人名として調べた方が確実だと思ったね。それで見つけたのが宇宙ステーション『高山柳』。出資者は柳秀貴。250年くらい前の事だから事実か分からないけど、これが唯一の手がかりだから調べるしかないね」


 (さい)大佐が男性の写真をモニターに映し出した。

 30代の頃の写真というが、やつれた顔のせいなのか、年齢以上に老けて見えた。

 宇宙ステーションに個人で出資する事は、莫大な資産が無ければ出来ない。

 莫大な資産を持つ人物であれば、普通は自信に満ちた顔をしているものだ。

 だが、やつれた顔からは後悔の念しか感じない。

(こんな後悔でやつれた男が、250年後の戦争に関わっているとは思えない……宇宙ステーションの名前の意味も分からない。柳は出資者の名前だけど、高山も人名か?)

 アランは柳秀貴が今回の戦争に関わっているのか疑問に思ったが、戦艦ブルーベリーの搭乗員達は納得したようだ。


「分かりました。パイロット部隊と整備班で調査を行います」

「宜しく頼むよみんな。アランも宜しく頼むよ。セキュリティーの解除は必須だろうからね」

「任せてくれ大佐」


 次の作戦目的が決まり、搭乗員達が次々に退出していく。

(大佐も『ヤナギ』を追っていた。柳秀貴……ウォルフ技師長が言っていた『ヤナギ』と関りがあるのか? 宇宙ステーションの調査が楽しみだな)

 アランは作戦開始まで休むため自室に向かった。

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