アルゲース攻略作戦5
リベレスティンがシンセシスー2に接近されない様にビームショットガンでけん制射撃してきた。
(そんな雑な攻撃など当たりはしない。何を考えている?)
アランにはイーサンの行動が理解出来ない。
イーサンのリベレスティンは左腕と胸部、左脚部の装甲にもダメージを受けている。
得意な格闘能力が格段に落ちているから、今の状態で接近戦を挑まれても余裕で反撃出来る。
だから、接近戦を挑まれる事は無いだろう。
ビームショットガンでけん制射撃を行っても、接近戦という選択肢がないのであれば決定打に欠ける。
ビームショットガンの射程外からシンセシス・ライフルで狙撃するだけで十分対処可能だ。
不利な状況を打開するなら、広い宇宙空間での戦闘ではなく、障害物を利用して戦うべきだ。
だが、イーサンは障害物がある都市部へ撤退せず戦いを続けている。
「イーサン、何故後退して障害物を利用しようとしない?」
「障害物ではない! あそこにあるのは人生の全てだ!」
「住民の避難は済んでいるのだろう? 何故市民の生死を気にする? 自分の命よりビルを優先させるのか?」
「宇宙で人は生身で生きられない。過酷な宇宙空間から人を守る都市は人生の全てだ! 簡単に失えないんだよ! 都市をE.G.に明け渡したとしても、人類が宇宙での生活の基盤を失うよりいい!」
「命の危機を顧みず、人類の未来を憂う余裕がありながら、俺の言葉を聞き入れる余裕がないのは何故だ?」
「アラン、君が敵だからだ!」
「ジェイクが生きていてもか?」
「当然だ! アランの言った事が本当でジェイクが生きていたとしても、彼が俺の為に犠牲になろうとした事実は覆らない。そして、俺は今も部下を失い続けている! 俺が不甲斐ないせいで! 俺がE.G.軍の大将を討っていれば戦争を終わらせられたのに!!」
「それは俺が防ぐ。だから諦めてくれ。俺はファングを打倒して、E.G.軍も止める」
「私はファングを守る。宇宙の民を守る獅子の牙は折れない!」
「俺がへし折る! シンセシスー2の力で!!」
シンセシスー2とリベレスティンが飛び交いながら、互いにビームを打ち合う。
(強い……覚悟が違う。これだけ不利な状況で、まだ粘るとは……)
ほぼ無傷なシンセシスー2の方が有利なのに、リベレスティンに決定打を与える事が出来ずにいた。
「アルメリアが落とされただと! おのれ、アーサー! また俺が無駄話している間に……」
突如、イーサンが叫んだ。
(アルメリア……敵の宇宙戦艦の名前だな。アーサーがやってくれたみたいだな)
アランの想定よりかなり遅い敵の宇宙戦艦の撃沈。
E.G.軍第二艦隊が戦っていた相手が、ファングの精鋭である第一艦隊であり、友軍が苦戦していたからだった。
アーサーでも多数の敵チャリムを掻い潜って、敵戦艦に接近するのは大変だったのだろう。
ピッ!
更に友軍から通信が入った。
『E.G.軍第一艦隊が月面都市アルゲースの占領に成功』
(これでイーサンは撤退してくれるだろうか……死なせたくはない。今は敵同士だけど、俺達が戦う必要はないんだ……)
「イーサン、友軍がアルゲースを占領した。撤退してくれ。都市部を戦闘に巻き込みたくないのだろ?」
「くっ、E.G.軍の第一艦隊か! 何をやっているんだファング第二艦隊……レイモンド・バージェスは!」
「レイモンドもいたのか。サボっていたんじゃないか?」
「そうかもしれないな。だが、次はサボらせないさ。今日は撤退させてもらうよ。でも次が最後だ! 宇宙要塞ヘカトンケイルで待ってる」
リベレスティンが撤退していったが、アランは追撃しなかった。
戦況を有利にするには、無理をしてでもリベレスティンを撃墜しておいた方が良い。
だが、それを分かっていてもアランには出来なかった。
そして、リベレスティンと共にファングの残存戦力は月から撤退していった。
E.G.軍の完全勝利である。
だが、友軍艦隊の損耗も少なくない。
ブレナン大将が指揮する第一艦隊は2隻撃沈され、残り4隻となった。
パウエル中将が指揮する第二艦隊は一番被害が多く、戦艦バルムンクは健在だが、既に3隻落とされ、残り3隻となった。
エイベル少佐が指揮する第三艦隊は一番被害が少ないが1隻撃沈されて、残り5隻である。
月攻略作戦でE.G.軍の宇宙艦隊は三分の一の戦力を失ったのだ。
それでも、今の戦力でブラック・ダンデライオン本土を攻略する必要がある。
E.G.軍宇宙艦隊は次の戦闘に向けて、月面都市アルゲースで補給を行った。
次の攻撃目標は、月から一番近いブラック・ダンデライオン、ファング第四艦隊が所属する<タカネ>である。
宇宙の民の四分の一が生活する<タカネ>を占領出来れば戦争は終わる。
それはファング側も理解しているので、E.G.軍の侵攻を阻止する為、宇宙要塞ヘカトンケイルで最終決戦の準備を進めていた。
ファングとE.G.軍の行く末を決める大事な戦いだが、アランは作戦には参加しない。
アランは自身の目的を果たす為にアーサー達に挨拶をせず、崔大佐の元に戻った。
(友軍に気付かれず、こっそり抜け出す必要があったから挨拶する時間が無かったな。でも大丈夫さ……また会えるからさ……)




