友達
アランはブリーフィングルームで崔大佐と打ち合わせを行っていた。
ウォルフ技師長からE.G.軍宇宙艦隊の作戦データが送られてきたからだ。
「どうするね? アランはアーサー達の援護に向かうのか?」
「そうさせてもらおうと思っている。イーサンとレイモンドとの決着もつけなければならないからな。それに目的地は月の裏側の先にあるんだろ?」
「その通りだよ。目的地は月の裏側の先にある廃棄された宇宙ステーションだよ」
「宇宙ステーション? なんだそれは?」
「流石のアランも過去の遺物までは詳しくなかったようだね。これだよ」
崔大佐がモニターに建造物を映し出した。
「不思議な形をしているな。通信衛星か?」
「実験施設だよ。昔は宇宙ステーションで、宇宙環境でしか出来ない実験をしていたのだよ」
表示されている宇宙ステーションの大きさは、戦艦フリージアの半分程の大きさだった。
「こんな小さな施設で人が生活出来るのか? 窮屈じゃないのか?」
「その通りだよ。昔は宇宙で過ごすのは過酷な事だったからね。特別な訓練を受けた選ばれた人しか宇宙に行けなかったのだよ。今は地球と同じように生活出来る人工の大地、ブラック・ダンデライオンがあるからね。昔の人が見たら驚くだろうね。人類がこれほどまでに大きな建造物を作れるようになった事を」
アランは崔大佐の言う通りだと思った。
崔大佐が表示した宇宙ステーションの大きさは全長100m程度だが、今乗船している宇宙戦艦ですら全長200m前後あるのだ。
ブラック・ダンデライオンは最大の大きさの<タカネ>が直径約50km、最小の<セイヨウ>ですら直径約30kmある。
かつての宇宙ステーションとは規模が違いすぎる。
(生まれた時からブラック・ダンデライオンが存在した俺達にとっては普通だが、過去の人類が見たら驚くだろうな)
「さて、少し話が逸れたね。アランはフリージア隊所属として作戦に参加する事になるね」
崔大佐がモニターにウォルフ技師長から送られてきた戦術データを表示した。
月面都市アルゲースへ三方向から攻撃を仕掛ける作戦。
ブレナン大将の第一艦隊、パウエル中将の第二艦隊、エイベル少佐の第三艦隊で敵艦隊を包囲する事で、月面からファングの戦力を排除するのが目的だ。
アーサーには敵のエース、イーサン・アークライトを撃退するよう指示が出ている。
だが、アランには納得出来ない。
アーサーの処遇を知っているからだ。
除籍処分と言っておきながら、臨時処置といって戦争に利用するのは身勝手だと思った。
「身勝手じゃないか? ブレナン大将ってのは本当に味方なのか?」
「味方かどうかは分からないね。でも、軍なんてそんなものだよ。正確に言うと組織ってヤツはみんな一緒ね」
「そういうものなのか? E.G.軍が腐敗しているだけだと思うけどな?」
「ファングも腐敗していると思うよ。組織ってのは理想通りにはいかないものだよ」
「そうか……でも、アーサーは指示を受け入れるだろうな。アイツ、自分で抱え込む癖があるからな。虐げられてるのに、僕がみんなを守るとか言ってそうだよ」
「そうか。それなら助けに行ってあげなさい。友達を」
アランは一瞬固まった。
(大佐は何を言っている? 友達……俺とアーサーが?)
「大佐、俺とアーサーが友達だと言っているのか?」
「そうだよ。二人は友達じゃなかったのかね?」
「いや、そんな事一度も言ってないけど」
「なら、どうしてアーサーって呼ぶのかい? 上官だったのだろう?」
「アーサーは最初からアーサーって呼ばれていて。俺は軍人じゃなかったし、今までずっとアーサーって呼んでいたから……」
「私がシニチを名前で呼ぶのは友人だったからだよ。アラン、君だって同じだよ。軍に所属して上官となっても、グリント大尉とは呼ばなかったのだろう?」
「そうか……俺とアーサーは友人か……」
「戦友ってのは良いものだよ。さぁ、行ってらっしゃい。きっと、君の助けを待っているよ」
「あぁ、行ってくるよ大佐!」
「戦艦ブルーベリーは不正規の軍艦だから援護は出来ないけど、応援しているよ」
アランはブリーフィングルームを出て格納庫に向かった。
格納庫に着いて直ぐ、シンセシスー2に乗り込んだ。
(シンセシスー2の飛行形態なら単独で戦場に向かえる。戦場を知らない素人が考えた役に立たない機能だと思っていたけど、地獄にいるロイドに感謝しないとな)
アランはG.D.ジェネレイターの電源を入れ、『Synthesis ver.2』を起動した。
そして機体をカタパルトに移動した。
「アランさん、出撃準備OKです。カタパルトの操作を移譲しますので、好きなタイミングで射出願います」
ブリッジから出撃準備完了の通信が入った。
「ありがとう。アラン・バークス。シンセシスー2出撃します」
アランはカタパルトを操作してシンセシスー2を射出した。




