表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
33/228

赤髪の青年1

 ロサンゼルス基地での戦闘後、フィオナ艦長率いるデトロイトの新型機テスト部隊はE.G.の正規軍に編入される事となった。

 本来であれば、テストを終えた新型機を正規軍に引き渡して、次の新型機のテストを行うのが役目である。

 だが、チャリムの生産拠点であるデトロイトを奪われたため、次にテストする機体が支給される事はなく、テスト部隊としての役目を果たせなくなっていた。

 戦力不足の現状では、戦える人材は貴重である。

 実戦を目的としていないテスト部隊でも無駄には出来ない。

 その為、戦艦フリージアの搭乗員達は、正規軍としてファングと戦う事となったのだ。

 ロイド中将戦死の混乱が落ち着いた後、後任のカムデン少将から戦況について説明があった。

 ファング第一艦隊の侵攻を受けた北アメリカ大陸は、大陸中央を占領され苦戦している。

 ファング第二艦隊の侵攻を受けているアジアも、アメリカ同様に苦戦を強いられている。

 ファング第三艦隊の侵攻を受けたヨーロッパは、反E.G.団体の活動が活発であり、戦況は混迷を極めている。

 ファング第四艦隊の侵攻を受けたアフリカは、唯一ファングに対して優位に戦闘を進めている。

 アフリカ大陸のE.G.が善戦しているとはいえ、戦闘は全て地球上で行われている。

 E.G.側が一方的に攻撃を受けている事には変わりはない。

 そこで、フリージア隊に出された指令は、宇宙侵攻作戦への参加だった。

 戦艦フリージアはファングの技術を利用した宇宙戦艦である。

 本来の役目である宇宙戦闘の為に運用される時が来たのだ。

 だが、高性能な宇宙戦艦とはいえ、単独で大気圏を突破する事は出来ない。

 宇宙に上がるには、打ち上げ設備が必要である。

 そこで、戦艦フリージアを含む各地の宇宙戦艦は、ファングの侵攻を受けていないインド東部のE.G.宇宙センターに集結する事となった。

 そこで、フリージア隊はロサンゼルス基地からインドへ向かう中継地点として、一先ずハワイを目指す事となった。

 イノベーション・センチュリーのハワイは永世中立都市群となっていた。

 ハワイはIC3年に永世中立国家として独立を図ったが、国家としては認められなかった。

 だが、観光地として人気があったハワイは、政財界の重鎮の支援を受けて永世中立都市群として、無政府状態で独立を果たしていたのであった。

 そして、アース・ガバメントが樹立されたIC22現在においても、その独立性を保っていた。

 その様な情勢のハワイだからこそ、ブラック・ダンデライオン出身の宇宙民の移住者も多かった。

 だからこそ、E.G.軍とB.o.D.の私設軍隊ファングの戦争を嫌う人々にとって、ハワイは唯一の楽園であった。

 だが、戦争が無くても考えが異なる多様な人種が住んでいれば諍いは起きる。

 E.G.軍に所属している戦艦フリージアが一時的に寄港しても表向きは問題ないが、何が切っ掛けで暴動が起きるか分からない。

 それでも艦長のフィオナは数日間、ハワイに滞在する事を決めた。

 目的のE.G.宇宙センターへの集結予定日までに余裕があり、アラン達を観光地へ遊びに行かせるためだ。

 ロイド中将の一件で心の闇の一端を見せたアラン。

 危険な事に巻き込まれない様に戦艦フリージアで軟禁状態になってしまった凛。

 二人に息抜きで観光を楽しんで欲しいと願ったのだ。


 *


 アランは凛と一緒に海岸通りを歩いていた。

(さて、俺は何をすればいいんだ。泳ぐ気もないのに海岸通りを歩く意味があるのか?)

 観光を楽しむという感覚がないアランは悩む。

 隣でソフトクリームを食べながら歩く凛は楽しそうだ。

 だが、アランには何が楽しいのか分からない。

 楽しそうな様子の凛と、どの様に関われば良いのか分からず目を反らした。

 それが、良くなかった。

 ドンッ!

 前方から走ってきた中年男性が凛の肩にぶつかり、手にしていたソフトクリームが地面に落下した。


「あっ!」


 思わず凛が声を上げた。


「アイスが落ちたぐらいで文句あんのか!」


 ぶつかった中年男性が叫んだ。

 凛が声を上げた事が気に入らなかったのだろう。

(ミスったな。ぶつかる前に排除すべきだった。騒ぎになる前に制圧する!)

 アランが喚く中年男性を押さえつけようとしたが不可能だった。

 目に入ったのは、頬に拳を受けて吹き飛ぶ中年男性と、代わりに視界に入ってきた鮮やかな赤髪の青年。


「アイスが落ちたぐらいじゃねぇだろ! 食べ物を粗末にするな!」


 赤髪の青年が叫んだ。

(誰だ?! 食べ物を粗末にするなだと。言ってる事は分かるが、その程度の理由で他人を殴ったのか!)

 アランは混乱した。

 この赤髪の青年は知り合いではなく、アランの代わりに他人を殴り倒すだけの理由がある様にも見えない。

 今のハワイは国家ではないとはいえ、警察組織はある。

 ぶつかってきた中年男性が横暴だったとはいえ、殴り倒した赤髪の青年の方が罪に問われる。

 この青年にとって、何の利益もない行動だったのだ。

 騒ぎを見た周囲の通行人が通報したのだろう。

 警察官が走ってきているのが見える。


「やべっ、逃げるぞ少年」


 赤髪の青年がアランに逃亡を提案した。


「何で俺が?」

「一応当事者だろ! 何もしてないけどな。ついて来な!」


 赤髪の青年が走り出す。


「良く分からないけど追いかけましょ! 事情聴取されたらフィオナさん達に迷惑かけちゃうじゃない!」


 凛が青年の後を追った。

(俺達は悪くない。だが、事情聴取されればE.G.軍が問題を起こした事になり、皆に迷惑をかけてしまう。凛の言う通り青年を追いかけるか……)

 アランは仕方なく青年の後を追いかけたーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ