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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
余話:ここにいるよ
120/228

平和を願った代償

 柳が高田研究所を去ってから1年。

 遂にG.I.N.ダイヤモンドを使用した動力機関、G.D.ジェネレイターの開発に成功した。

 仙李は発記者会見を行ったが、会見の内容について賛否両論であった。

 それは仙李が提示したG.D.ジェネレイターの利用条件が原因であった。


『核兵器の撤廃』


 そのたった一言が世界を混乱に陥れた。

 だが、仙李は迷わなかった。

 何度となく叫ばれても、一度も実現していない核兵器の撤廃。

 それを仙李は成し遂げようとしたのだ。

(柳は新しい大量破壊兵器を生み出したけど、俺達が生きる世界にそんな物は必要ないんだ。見ているよ柳! 俺は核兵器も根絶して、世界を平和にして見せるさ!)


 *


 G.D.ジェネレイター発表から半年。

 仙李の提案に賛同する国家は、G.D.ジェネレイターの恩恵で経済成長率は400%を越えた。

 それは当然の結果といえる。

 エネルギーのクリーン対応への経済負担が深刻であった世界で、エネルギー利用の経済負担が実質0になったのだから。

 逆に、核兵器を保有している先進国は、G.D.ジェネレイターへの非難を強めていた。

 発展途上国との経済格差が大幅に縮まっているからだ。

 今の状況が続けば、あと2年で追いつかれるだろう。

 遂に世界の全てが平等になる。

 仙李は更に多くの賛同者を集める為、世界各国を飛び回っていた。

 そんな仙李の元に予想外の嬉しい来訪者が現れた。

 親友の柳だ。

 彼は仙李が高田研究所にいる日を狙って、帰国して来ていたのであった。

 仙李が部屋に招き入れると、柳はすぐにソファーに寝ころんだ。

 以前と変わらない柳の態度に懐かしさを感じた。


「何をしてたんだい? 連絡をよこさないから心配してたぞ」

「私は挨拶なしで夜逃げしたの許してないからね! 今日は説教3セットだからね!」

「何って? 宇宙開発の研究だよ。説教はコイツで勘弁してくれ」


 柳が兎衣に土産を渡した。


「これはアメリカのアニメね。こっちはイギリス! 気が利くわね柳! 少し見てくるね。ちょっとだけだから!」


 兎衣が退出していった。


「兎衣は変わってないな。今夜は部屋から出てこないかもな」

「いいのか柳? 久しぶりに会ったのに話が出来なくても」

「いいよ。別に二度と会えなくなるわけではないし」

「でも、柳が宇宙開発か……驚いたよ」

「お前のせいだろ。宇宙が好きな仙李少年は何処にいった?」

「そうだったな。俺が宇宙を目指そうって誘った。それより、友達出来たか? 寂しかったら戻って来いよ」

「仙李のご想像通り友達はいないよ。でも、今はアークライト教授と研究してるから寂しくはないさ。覚えているか?」

「アークライト教授だって! 僕らの憧れで、宇宙開発の第一人者じゃないか! 羨ましいな!」

「そう思えるのは直接会っていないからだ」

「何があった?」

「カーボン板を恍惚の笑みを浮かべながら撫でていた」

「なんだよソレ。それで柳はどうしたんだよ」

「立ち尽くしていたよ。そしたらさ、新開発のカーボン板だよ。君も愛でてみるかいって言ったんだぜ!」

「キツイなソレ。俺の夢を壊すなよ! で、本題はなんだ?」


 仙李は真剣な眼差しで柳を見た。

 仙李の覚悟を感じた柳が、意を決して本題について話始めた。


「今すぐG.D.ジェネレイターの使用制限を無くせ!」

「それは核保有国にも分配しろって事かい?」

「そういう事だ。忘れたのか? 俺達の研究費用を負担したのが誰なのか」

「覚えているさ。先進国の全てが支援者だ。核保有国も多い。それが何か?」

「何かじゃないだろ? 研究費を払って研究成果が得られなかったら、どう思う? それどころか、世界のリーダーとしての立場を失っている。追い詰められた各国の指導者達が、何をするか分からない。危険を理解しているのか?」

「危険は理解しているさ。でも、何かを成し遂げるのにリスクは必ずあるだろ?」

「あるけど……俺はそのリスクの中に、お前達の命が入るのであれば阻止したい」

「柳は大げさだよ。世界各国を飛び回っている俺は暗殺されるかもしれない。でも、日本にいる兎衣や、関係ない柳には迷惑をかけないよ」

「関係ないか……その通りの様だな。わりぃ、言い過ぎた」

「別に気にしないさ。俺達3人は仲間だろ?」

「あぁ……」


 その後、柳は黙ってしまった。

 そんな柳を仙李はそっとしておいた。

 なぜなら、柳が黙った理由に気付いていたから。

 彼が黙ったのは仙李の手元を見た後からであった。

 仙李の指にはめられた指輪が彼を黙らせてしまったのだ。

(関係ないって、そういう意味じゃないんだけどな。でも、柳をG.D.ジェネレイター関連のトラブルに巻き込みたくないから、これでいい……)

 そして、柳は再び高田研究所を去っていったーー


 *


 柳と再会してから半年、恐れていた日は突然起きた。

 仙李は訪問先の空港で子供たちにサインをせがまれて、飛行機に乗り遅れてしまった。

 1日長く滞在したところで次の予定に問題はなかったので、乗り遅れた事を気にしなかった。

 だが、翌日に仙李の人生は一変していた。

 その日、高田研究所に多数の核ミサイルが撃ち込まれたのであった。

 研究所だけではない。

 高田研究所の為に新設された空港、工場、更に親交があった知り合いの研究所……

 全てが一瞬で焼き払われた。

 仙李はあらゆる伝手を頼って研究所を目指した。

 研究所の周辺は、見渡す限り焼けただれて建物の面影はなかった。

 今だに放射線濃度が高く危険ではあったが、仙李は気にせず足を踏み入れた。

(銀ダイヤ……あれが反応する周波数の電磁波を照射すれば……見えた!)

 仙李は弱々しく輝く白銀の光を目指して走った。

 そして、すすの中から小さな宝石を手に取った。

 初めて電子レンジの残骸から拾った時と同じように、白銀に輝く兎衣の銀ダイヤ。

 それは兎衣がこの世に存在しない事の証明であったーー

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