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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
余話:ここにいるよ
119/228

高山柳

 学会での発表は大成功だった。

 世界中が無限の可能性を秘めた、未来のエネルギーの発見に歓喜した。

 そして、兎衣の希望であったダイヤの名前は、より性質を表していると言えるG.I.N.ダイヤモンドに変更された。

 多くの先進国から莫大な研究費が集まり、発展途上国の国家予算に匹敵する研究費を得た高田研究所は、年を追うごとに拡張されていった。

 元々存在した高田研究所。

 G.I.N.ダイヤモンドを利用した動力機関を製造する工場。

 新しいエネルギー機関に耐えられる新素材の研究機関。

 そして、論文の発表から3年が経った頃には、高田市と呼べる程に発展していた。

 G.I.N.ダイヤモンドを利用した動力機関の実用化まで、あと少し。

 全てが順調と思われる中、仙李は不審な資金の流れに気付いた。

 仙李自身が計画した研究以外に、研究資金が使用されている形跡があったのだ。

 資金が使われ始めたのは3年前。

 世界中の国家から支援を受けて研究が始まって直ぐである。

 それだけ初期の段階から研究資金が使われていながら今まで気づかなかったのは、仙李の資金管理が甘かったかったからではない。

 研究資金を使用していたのが、仙李と同等の権限で資金を自由に扱える相手……柳だったからだ。

 柳の事は信じたい……でも、莫大なお金は人を狂わす。

 真実を見極める為に、仙李は高田研究所の最高会議を開催した。

 仙李、兎衣、柳……幼馴染3人だけの話し合いである。


「久しぶりだな。最近はG.D.ジェネレイターの開発にかかりっきりだっただろ? 兎衣の銀ダイヤが人類の未来を変える日が近づいてきたな」


 柳は、いつも通りソファーで転んでいる。


「柳はだらしないんだから。500人の部下を抱えているって自覚ある? 優秀なんだからシャキッとしなさいよ」


 兎衣が仙李と柳の間に椅子を置いて座った。

 兎衣は察しているのだろう。

 これから、幼い頃から何度となく繰り返された仙李と柳の対決が繰り広げられるのを。


「これは何だ? 資金を使うなとは言わない。だが、俺達の研究に使われた形跡はない。何に使った?」


 仙李は調べた資金データを柳に見せた。


「あぁ、仙李も気付いたか。研究に使ったよ」

「何の研究に? 一緒に銀ダイヤを研究するのではなかったのか?」

「研究したさ。銀ダイヤの、もう一つの可能性についてだ」

「もう一つの可能性?」

「覚えているだろ? 最初の爆発。あの時の威力は絶大だった」

「何を……まさか……」

「仙李のまさかが何か分からないけど、俺が開発したのはG.I.N.ダイヤモンドを利用した大量破壊兵器……G.D.アウトバーストだ」


 仙李は柳の言葉を聞いて意識が飛びそうになった。

(3人で平和を目指していたはずなのに……)


「大量……破壊兵器?」

「そうだ。銀ダイヤに特定の周波数の電磁波を照射するところは、仙李が開発中のG.D.ジェネレイターと同じだ。だが、少し工夫する事でね、銀ダイヤを暴走させる事が出来るんだよ。そして銀ダイヤの消失と同時に、核兵器を越える高エネルギーの爆発を生み出せるんだ」

「何の為に! 銀ダイヤは平和の為に使うって決めただろ!」

「その通りだ。だが、願いを叶えるには力が必要だ。俺はG.D.アウトバーストで世界を平定する」

「恐怖で世界を支配しようというのか? そんな事をしなくても、G.D.ジェネレイターが……新たなエネルギーが人類の未来を照らしてくれる!」

「そう思えるのは仙李だからだ。世界は悪意に満ちている。綺麗な未来しか見据えていない仙李には現実が見えていない。それでも俺は良いと思っている。それが仙李の良いところだからな。だから俺が代わりに叩き潰す。俺達に向けられた悪意の全てを!」

「誰に何の悪意を向けられた! 世界中が俺達の研究を支援してくれている! 世界は平和を求めている!!」

「違うね。俺達に向けられているのは欲だよ。莫大な研究資金を上回る利益を求めている」

「兎衣! 俺のG.D.ジェネレイターと柳のG.D.アウトバースト! どちらを選ぶ?」


 仙李は兎衣に判断を委ねた。

 幼少の頃から何度となく繰り返された、兎衣の判断による決着。

 今回はーー


「うーん、ごめんなさい。柳の気持ちも分かるけど、私は仙李の理想を信じてみたいの。私は大切なこの子に人殺しをさせたくないから」


 兎衣がペンダントトップの銀ダイヤをそっと握りしめた。


「知ってたよ……最初から。だから俺は隠れて研究してたんだ。G.D.アウトバーストは諦めるよ」

「いいのか? ずっと研究してきたのだろう?」

「俺達が揉めたら兎衣の判断に従う。それが俺達のルールだろ?」

「ハイハイ、暗いのは終わり! 仲直りの記念に写真を撮りましょ! 私達が世界を平和にした、世界最高の科学者ですってね!」


 仙李と柳は兎衣の両脇に立った。

『高』田、『山』根、『柳』で『高山柳』

 兎衣が高山に生えている柳みたいだからと言って決めた、俺達の定位置。

 写真を撮り終えた3人は、それぞれ自室に戻っていったーー


 *


 深夜1時。


「兎衣に別れを言わないのか?」


 仙李は研究室から出ていく柳に声を掛けた。

(柳は行動が早い。そして、こっそり行動する時は昔からこの時間だ)


「必要ないさ。俺達は高山の柳。高山はセットだけど、柳は元々別物扱いだろ?」

「俺はそんな風に思っていない。俺達はいつも3人一緒だ」

「俺もそう願ったよ。でも、俺達32歳になったんだぜ。中途半端に俺が関わってるせいで、仙李達が一緒になれないんじゃないかって、本気で悩んでたんだ」

「それは俺も同じだ。ライバルを気取っているけど、俺は柳に甘えているって自覚がある。本当は柳と兎衣が……」

「それ以上は言うな! 俺が去る。それでいい。俺は仙李と違ってモテるんだよ」

「なんだよソレ。初めて聞いたよ」

「当然だ! 初めて言ったからな。ほらっ、餞別だ」


 柳が何かを放り投げたので、慌てて受け取って確認したらメモリースティックだった。


「餞別って見送る側が送るものだと思うけど?」

「そういうしきたりは興味ない。そいつはG.D.アウトバーストの研究データだ」

「何のつもりだ?」

「諦めるって言ったんだ。そいつを置いていかなきゃ嘘になるだろ。じゃあな! たまに連絡ぐらいはしてやるよ!」


 柳が手を振りながら去っていった。

(あっけないな。ずっと3人一緒だったのに。これからは俺一人で兎衣を支えていかな

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