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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
余話:ここにいるよ
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新種のダイヤモンドの秘密

「ただの装飾品だって? 女性なら宝石とか装飾品に興味があると思ってたよ」

「その言い方だと私が女性じゃないみたいじゃない。いつもの事だけど、柳は失礼ね!」

「失礼で申し訳ないね。はぁ、何でこうなるんだろうな……」


 柳がぼんやりと上を向いた。

 何をやっても結果を出す天才肌の柳が唯一目的を達成出来ない事ーー兎衣に好意を伝えるのを失敗した瞬間であった。

(何回目かな柳が失敗したのは。何でも出来る柳が失敗する姿を見せられ続けたから、俺は好意を伝える勇気が無くなってしまったんだよな……そんな事より、何で兎衣は安物の偽ダイヤを大切にしているのだろう?)

 仙李は兎衣が新種のダイヤモンドを特別視する理由に興味を持つことで、落ち込んだ気分を誤魔化そうとした。


「兎衣は何でそのダイヤが大切なのかい?」

「銀色に輝く未知のダイヤだよ! この子は絶対凄い力を秘めてると思うのよね」

「何を根拠に言ってるんだ? また根拠の無いアニメネタじゃないよな?」

「そういう言い方は良くないよ。柳だって好きなアニメあるだろ?」

「あるけどさ……俺達そろそろ30才になるんだぜ。少しは現実見ろよ。研究が進んでいない! 光熱費高い! 研究所を運営する予算が足りないのに、そんな安物の偽ダイヤで遊んでいられないだろ?」

「それは……その通りだと思うけど……」

「別にお二人にご理解頂けなくても良いですよー。私はこの銀ダイヤで世界を平和にするんだから! 早く無限の力を生み出してよね。私のダイヤちゃん!」


 兎衣の話で新種のダイヤモンドを特別視する理由が分かった。

 宝石に特別な力が宿っているのは創作物の定番だ。

 兎衣が好きなアニメだけでなく、マンガ、小説、色々な話に登場する。

 賢者の石が有名だが、兎衣が好きな作品の宝石は……

 そこで仙李は思い出した。

 そもそも、この新種のダイヤモンドは、調理場の爆発の要因を調べて出て来た物であった。

 恐らく、兎衣がアップルパイを温める時に落として、電子レンジで温めてしまったのだろう。

 調理場の爆発……電子レンジ……新種のダイヤ……

 そこで仙李は一つの仮説に辿り着いた。

(水晶が電圧で振動する性質を持つように、このダイヤは電磁波の影響を受けて、何らかのエネルギーを発振するのではないか?)


「兎衣、少しだけ借りていいかな?」

「私の銀ダイヤで何をするの?」

「気になる事があるから検証させてくれ。頼む!」

「仕方がないわね。壊さないでよね」

「ありがとう兎衣!」

「手伝いは必要か? 仙李が検証したいって事は、真面目な話なんだろ?」

「あぁ、協力してくれ」


 仙李達は仮説の検証の為に研究室に籠ったーー


 *


 仙李達は様々な周波数の電磁波を照射して検証を行った。

 そして、仮説通り電磁波の照射でエネルギーを発振する性質を観測した。

 だが、そこからが長かった。

 発電能力を安定させる事が出来なかったのだ。

 更に研究を進めるには、莫大な研究費用が必要になる。

 そこで、仙李達は研究費の援助を得る為に、新種のダイヤモンドの性質を発表する事にした。

 そこで、新種のダイヤモンドの学名を忘れている事に気付いた。

 仙李達は興味が無かったので忘れていたが、誰かに発見されているという事は、既に学名があるという事だ。


「仙李、コイツの学名知ってるか?」

「木星で発見されたから、木星ダイヤだったような気がするけど……調べたらジュピターダイヤって出て来たよ」

「何言ってるの? 銀ダイヤは銀ダイヤでしょ?」

「銀色だからって、銀ダイヤって名前は安直じゃないか?」

「安直じゃないよ! 日本人なんだから日本語に変えようよ!」

「それなら銀金剛石だな」

「柳の意地悪! 仙李は銀ダイヤの方が良いよね?」

「銀ダイヤか……海外の人には伝わらないよな。既に学名も決まっているし」

「何とか頑張ってよ! 銀ダイヤに莫大なエネルギーが秘められているなんて、世紀の大発見だよ! 世界中のエネルギー問題が解決出来るかもしれないんだから、学名なんて覆るって!」

「そう言われてもな……」


 仙李には良いアイデアが思い浮かばなかった。


「なら、こういうのはどうだ? こじつけだけど、何とか銀ダイヤにはなるだろう?」


 柳がホワイトボードに文字を書いた。


 発電能力を持った不変の天然ダイヤ『G.I.N.ダイヤモンド』

 発電機:Generator

 不変:Immutable

 天然:Natural


「やれば出来るじゃない! やっぱり柳は天才ね!」


 兎衣が柳に飛びついた。

 仙李は柳が褒められたのが悔しくて、少しだけ意地悪を言いたくなった。


「でも、G.I.N.だと『ジン』って読まれると思うけど」

「仙李が頑張ってよ! 柳が頑張って考えたんだから、頑張って読ませるのは仙李の仕事!」

「そういうこった。学会での発表は仙李に任せるから、必ず『ギン』って読ませろよ!」

「ハイハイ分かりましたよ! 世紀の大発見より、名前の呼び方が大事ですよってね」


 仙李達は学会での発表に向けて、研究データを纏める事にした。

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