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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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白銀のフリージア

 E.G.宇宙艦隊とファングの共同部隊の奮闘も空しく、ブラック・ダンデライオン<タカネ>が月周辺まで辿り着いてしまった。

 再び射出される居住区。

 目標は親E.G.派の月面都タロース。

 大質量の<タカネ>の居住区が撃ち込まれ一瞬で消滅した。

 次の標的は地上……おそらく、ファング側が苦戦していたアフリカ方面に打ち込まれるだろう。

(もう猶予は無い……急がねばならんな)

 ウォルフ技師長は操舵席に着こうとしたが、ブリッジの入り口のドアが開いたので足を止めた。

 入室したのは整備班のメンバー達だった。


「何しに来やがった! 俺は避難用シャトルで撤退しろと言ったはずだ!」

「おやっさんを置いて逃げらないですよ!」

「私が操縦します! おやっさんは指揮をお願いしますよ!」

「俺は武装を担当するぜ!」


 整備員達が次々に着席していった。


「おめえら、本当に分かってるのか? フリージアに残ったら死ぬんだぞ!」

「分かってるから残ったに決まってるでしょ!」

「おやっさんが向かう所が俺達の向かう所ですよ。それが死地であってもね」

「俺達はおやっさんがいたから生きてこられたんだ。最後までお供させてもらいますよ」


 既に避難用シャトルは発艦している。

 もう、整備員達を避難させる事は出来ない。

 ウォルフ技師長は整備員達に作戦を伝える事にした。


「戦艦フリージアには大量破壊兵器のG.D.アウトバーストが搭載されている。<タカネ>の前方で起動させて、<タカネ>を退ける!」

「G.D.アウトバースト?! 何故禁止兵器がフリージアに?」

「製造データが現存していたのですか?!」

「おやっさん、どこで入手したのですか?」

「説明している余裕はねぇ! 最大戦速!」 


 ウォルフ技師長が指示を出すと、整備員達が的確に操縦を始めた。

 疑問はあってもウォルフ技師長の指示は絶対。

 それが整備班の鉄則だからだ。

(すまぇなお前ら……重要な事は何も教えてやれなかった……)

 これで最後だと分かっていても、ウォルフ技師長には真実を教える事が出来なかった。

 戦艦フリージアには250年前に全世界を恐怖に陥れ、禁止条約が結ばれた大量破壊兵器G.D.アウトバーストが搭載されている。

 搭載された目的は創主の目的を阻む敵を消し飛ばす為である。

 創主……柳が望んだ未来を創る為の指導者。

 ウォルフ技師長がファングに所属していた頃に出会った相手である。

 E.G.軍を退役し、戦災孤児を引き取り、ファングの技術者として生活していたウォルフ技師長は、柳が望んだ未来を担うに相応しい人材だという理由でスカウトされた。

 そして、ウォルフ技師長は大量破壊兵器G.D.アウトバーストの製造方法を与えられ、E.G.軍に潜入する事になった。

 だが、今はE.G.軍の仲間を守る為に命をかけている。

(守りたい者が増えた。でも、一番守りたかった奴らは守れなくなった。俺は正しかったのだろうか……答えは出ない。それでも終わらせはしない! 俺は必ず辿り着く! この先も人類が存続出来る可能性へ!!)

 <タカネ>の前方を目指す戦艦フリージアを阻む敵機は少なかった。

 予想以上に援軍のファング第一艦隊所属のチャリム部隊が善戦してくれている。


「当たらなくてよい! 撃て!!」


 戦艦フリージアは主砲と対空砲火を乱射しながら敵陣に飛び込んだ。

 敵を撃破する必要は無い。

 ただ、<タカネ>の前方まで辿り着きさえすればよいのだ。

 前線から突出した事で、敵の集中攻撃を受ける戦艦フリージア。

 被害報告が次々に表示され、モニターが赤く染まる。

 だが、気にする者は誰一人いなかった。

 死の覚悟を決めた特攻。

 戦艦フリージアが弾丸の様に敵陣を突き抜けた。

 そして、武装の大半を失い撃沈寸前であったが、何とかブラック・ダンデライオン<タカネ>の前方に辿り着けた。

 後は、大量破壊兵器G.D.アウトバーストを起動させて、<タカネ>を退ければ良いだけだ。


「よくやったな。この位置なら<タカネ>を退ける事が出来る」

「死にたくねぇよ……」

「おやっさんと、もっと楽しく生きていたかった」

「何で俺達が……俺達が死ななきゃいけなかったんだろうな……」


 整備員達がすすり泣き始めた。

 目的を果たして気持ちが切れたのだろう。


「馬鹿野郎! 今更なに言ってんだよ! だから逃げろって言っただろ!!」

「逃げたって私達に未来はないんですよ!」

「死にたくねぇ……でも、おやっさんを一人で死なせたくねぇ……」

「早く終わらせて下さい。後悔はある……でも、最後までお供出来て良かったですよ」


 ウォルフ技師長は後悔した。

 戦災孤児を引き取って整備員として鍛えたのは、こんな事をさせる為では無かった。

 組織に協力したのは世界を滅ぼす為では無かった。

 自身の行動が平和に繋がると信じていた……


「これがお前が望んだ未来か! ヤナギ!!」


 ウォルフ技師長はG.D.アウトバーストを起動させた。

 地上に死をもたらす|ブラック・ダンデライオン《黒き花》を押しのける様に、戦艦フリージアから白銀の光が広がった。

 絶望で染まった暗い宇宙を照らすように、白銀のフリージアが咲き誇ったーー

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