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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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女を泣かせるのは……

 テトラトスは前回の戦闘のダメージが残っている様だ。

 背部の追加腕は元に戻っているが、コクピット周辺の装甲が所々剥がれており、吹き飛ばした右脚部も修理が完了していない。

 前回の戦闘のダメージが残っているので有利に戦えるだろう。

 それでも格闘戦に秀でたレイモンド・バージェスのテトラトス相手に接近戦で勝利する事は出来ない。

(勝利するには接近されないように戦う必用があるな。初手のミサイルでダメージを与えられば勝機があるんだけどな……)

 カーライル中尉はテトラトス目掛けてミサイルを発射した。

 テトラトスが接近を止め、チャフとフレアを射出した。


「馬鹿が! 前回の戦闘でお前の機体にミサイルが搭載されてる事を知ってんだよ!  何度も同じ手が通用すると思うな!!」


 発射したミサイルが全て、チャフとフレアによって追尾を逸らされた。

(予想通り対策してきたか。それなら、今度はコイツだ!)

 カーライル中尉はミサイル攻撃を防がれた事を気にせず、更にミサイルを発射した。


「阿呆が! 目の前で防がれたのに、またミサイル攻撃かよ! 俺はこんなザコの攻撃を受けたのか……前回の戦いはまぐれだったようだな」


 テトラトスが再びチャフとフレアを射出した。

 だが、ミサイルはチャフとフレアに誘導を逸らされる事はなく、真っすぐテトラトス目掛けて進んだ。


「何だ! 何故ミサイルが逸れない……コイツ! ミサイルの誘導を切ったな!!」

「それを知ったところで手遅れだ!」


 テトラトスがミサイルをビームライフルで撃ち落とそうとしたが、全て破壊する事は出来なかった。

 テトラトスが撃ち漏らしたミサイルを蹴とばし爆発で吹き飛んだ。

 カーライル中尉は吹き飛んだテトラトスをロングレンジライフルで狙撃した。


「これで終わりだ! レイモンド・バージェス!!」


 ロングレンジライフルから放たれたビームがテトラトスに迫る。


「そう簡単にやられるか!」


 テトラトスが右腕を犠牲にして、ロングレンジライフルのビームの直撃を避けた。


「しぶといな!」


 カーライル中尉はロングレンジライフルを放棄し、アルダーン・カスタムHE背部のウエポンラックからアサルトライフルとバズーカを取り出した。

 アサルトライフルで近づかれないようにけん制射撃を行いながら、要所でバズーカで追撃を行った。


「舐めるな! 今日こそお前に死のブルースクリーンを見せつけてやる。怯えて助けを乞う姿を楽しませてもらうぞ。狩りの始まりだ!」

「戦争で遊ぶんじゃねぇ!」

「戦争じゃない! お前の命で遊ぶんだよ!」

「お前の様な奴がいるから!」

「戦争ってのはなぁ。敵のパイロットを合法的にぶっ殺せるって事なんだよ!」

「ふざけるな! レイモンド! お前はここで俺が仕留める!」

「やってみろよ。無名のザコ野郎!!」


 カーライル中尉はテトラトスに決定打を与えられなかったが、粘り強く攻撃を続けていると、テトラトスの動きに異常がある事に気付いた。

(左方への動きが緩慢になった……右スラスターを破損したか?)

 最初のミサイル攻撃時にスラスターにダメージを受けていたのだろう。

 動きが制限されたのであれば、攻撃を与える事が出来る。

 アサルトライフルの攻撃が当たる様になり、テトラトスの装甲を削っていく。


「俺だけで死んでたまるか!」


 テトラトスの背部の左腕がアルダーン・カスタムHEではない方向を向き、ビームライフルで攻撃を行った。

 見当違いの方向に放たれたビームに向かって、カーライル中尉はアルダーン・カスタムHEを突撃させた。

 そして、左脚部を犠牲にしてビームを止めた。


「この卑怯者が!」


 カーライル中尉が自ら敵のビームに当たりに行ったのには理由がある。

 避難用のシャトルを狙われたからだ。


「ほぉ、それを庇うのか。道連れを増やそうとしただけなのに……これは当たりか? 自分の命より大事な相手が乗ってるのかな? 動いたらシャトルを撃墜するぞ!」


 ピピッ!

 避難用のシャトルから通信が入った。


「カーライル中尉! 私達に構わず敵機を撃破しなさい!」

「うるせぇ! 俺に命令するな!!」


 カーライル中尉はフィオナ艦長からの通信を一方的に切った。

(これが最後の会話になるとはね……最悪な遺言だ)

 テトラトスがビームライフルで、動きを止めたアルダーン・カスタムHEの腕と脚部を破壊した。

 そして、背部の両腕でアルダーン・カスタムHEを抱え上げた。


「どうだ! 見えるか? モニターを染め上げる青色が!」

「青くはねぇよ。装甲が剥げて煤けてるぜ!」

「強がりを言うな! 選んでくれよ! どっちが先に死にたい? お前か? あのシャトルの相手か?」


 カーライル中尉はコクピット裏の携帯火器に手を伸ばした。

(こんな事の為に用意した武器じゃねぇんだけどな。まぁ、役に立つから良いか……)

 カーライル中尉はコクピットを開け、対チャリム用ロケットランチャーを構えた。


「馬鹿が! 死ぬぞ!! やめろぉ!!」


 レイモンドがカーライル中尉が何をしようとしているのか気付いたようだ。


「何言ってやがる! 死ねと言ったのはお前だろうが!」


 カーライル中尉は対チャリム用ロケットランチャーの引き金を引いた。

(悪りぃなフィオナ。でもさ、女を泣かせるのは……これで最後だ!!)

 ロケット弾の爆発がダメージを受けて薄くなった装甲を打ち破り、テトラトスを破壊した。

 ついにE.G.軍を恐怖に陥れた死のブルースクリーンは爆発の中に消え去った。

 カーライル中尉の命と共に……

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