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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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ウォルフ技師長の反乱

 カーライル中尉は焦っていた。

 既に友軍戦艦は全滅しており、敵チャリム部隊がE.G.軍最後の戦艦であるフリージアを攻撃する為に集まって来ていた。

 途中、ファング第一艦隊のイーサン・アークライトの参戦で一時的に持ち直したが、再び敵機が迫っている。

 敵機に接近されないようにロングレンジライフルで狙撃しているが命中率が低い。

 今までの敵より明らかに実力が高いのだ。

 前線に出ている部隊のエース、アーサーとアランも戻らない。

(もう駄目だな。<タカネ>を救うどころか、敵を撃退する事すら難しい。全滅コース一直線って感じだな)


「やべぇぞフィオナちゃん。敵を倒しきれねぇ。このままだと全滅だ」

「エイベル艦長です! あと、泣き言は死んでから言ってください」

「はいはい。それで、どうするよ?」

「<タカネ>を止める以外に選択肢はありません。ウォルフ技師長? 何故ブリッジに?」


 フィオナ艦長が会話の途中でウォルフ技師長に話しかけた。

(何故ウォルフ技師長がブリッジに?! さっきまで格納庫で友軍機の補給作業をしてたはずだが……)


「全員、避難用シャトルで退艦してもらおうか?」

「どういう事ですか?! 何故整備班が武装しているのです?」


 フィオナ艦長と通信中だったので、モニターにブリッジの様子が映っている。

 ウォルフ技師長を先頭に、整備班がアサルトライフルを構えてブリッジに侵入している。

(これは反乱か? ウォルフ技師長が何故? ただでさえ苦戦しているのに……)

 今すぐウォルフ技師長を止めたかったが、フリージアの外で戦闘中のカーライル中尉には何も出来ない。


「大佐としての命令だ。おめぇら、連れて行け!」


 整備班のメンバーに連れられて、ブリッジクルーが退去させられていく。

 そして、ウォルフ技師長以外の全員がブリッジからいなくなった後、ウォルフ技師長が話しかけてきた。


「カーライル中尉、聞こえているか?」

「何のつもりだウォルフ技師長? アンタが反乱を起こすとは思わなかったぜ」

「反乱ではないだろ? 俺は大佐なんだ。指揮官として命令しただけだ」

「それで、お偉いさんとして何をする気だ? この状況で」

「指揮官として責任を取るのさ。いや、私の罪を清算するだけだ」

「意味が分からねぇよ。罪? ウォルフ技師長、アンタ何をしたんだ?」

「俺が本当に所属しているのは、E.G.でもファングでもねぇんだ。今の状況を生み出した組織の一員と言えば、察してくれるかな?」

「ウォルフ技師長……」

「なぁ、カーライル中尉。お前も逃げろ。避難用シャトルを守ってやれ」


 ウォルフ技師長に避難用シャトルを守ってやれと言われたが、カーライル中尉には他の選択肢はない。

(何が守ってやれだよ……他に出来る事なんてないだろうが!)


「で、どうすんだよ。<タカネ>を見捨てて、地上が壊滅状態になった世界で何をするつもりだ?」

「残念ながら<タカネ>は見捨てる事になる。だが、世界の全てを終わらせはしない。地上だけでも守ってみせるさ」

「何が出来んだよ! 俺達全員が死力を尽くしても何も出来なかったのに!」

「特攻するだけさ。後の事は気にするな。死ぬのは俺の様な老人だけで十分なんだ」


 ウォルフ技師長の目を見れば、本気で特攻するのだと分かる。

 だからこそ分からない。

 戦艦フリージアが特攻した処で、全長50kmのブラック・ダンデライオン<タカネ>を止める事は出来ない。

 ウォルフ技師長は、そんな当たり前の事を理解出来ない人ではない。

(何をするつもりなんだよ。これが最後なのに、俺には本当の事を言えねぇのかよ……)

 戦艦フリージアから避難用シャトルが発艦した。

 カーライル中尉はウォルフ技師長を問い詰めたかったが時間切れだ。

 戦闘能力が無い避難用シャトルは恰好の的だ。

 戦場から離脱するまで護衛する必要がある。


「ウォルフ技師長。一応別れを言っておくぜ。特攻する相手に言う事じゃないだろうけど、ご武運を!」

「俺も同じだ。逃げる相手に言う事じゃねぇけど武運を祈ってる!」


 カーライル中尉は戦艦フリージアから離れて、避難用のシャトルの護衛についた。

 そして、戦場から離脱を始めたーー


 *


 ピピッ!

 高速接近するVVS2クラス一基のG.D.ウエイブを検知した。

(この反応は敵エース機……何故単独で追ってきている? 敵機からの通信だと?)

 カーライル中尉は通信を繋げた。


「やっと見つけたぞ緑色! 今日こそお前に死のブルースクリーンを見せてやる!」


 敵の声で追ってきた敵が誰であるか分かった。


「レイモンド・バージェス! 何故貴様が?」

「お前を恐怖のどん底に叩き落とす為に決まっているだろ? 前回の様にまぐれで勝てると思うなよ!」


 避難用シャトルではレイモンド・バージェスのテトラトスから逃げ切る事は出来ない。

 カーライル中尉がテトラトスを撃退する以外に生き延びる手段はない。

(俺がやるしかない! 頼むぞ相棒!!)

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