さようなら
戦艦リナリアがシンセシスー2を振り落とそうと加速を始めたが、アランは振り落とされる前にシンセシスー2を飛び立たせた。
「自分から離れたぞ! 馬鹿ですねぇ。これで撃ちたい放題ですよぉ!」
ブウィィィィン!
戦艦リナリアのCIWSの銃弾がシンセシスー2に迫ったがーー
アランはビームライフルでCIWSを次々に破壊した。
「何だ!? 何をした? 何でファングのビームライフルを使えるんだ!? 私が作ったウエポンセキュリティーは完璧なのだ! E.G.軍の素人のくせに、何故解除出来たのだ!?」
ギルモア博士にとっては想定外の事態であったのだろう。
だが、アランにとっては普通の事である。
シンセシスー2は元々、親衛隊仕様のリベレーンである。
同じ機体の武装が使えるのは当然の事である。
アランは撃破したリベレーンが持っていたビームソードを回収して、戦艦リナリアのブリッジに接近した。
「待て! 今のは間違いだった! 君を撃墜しようとしたのは、ファングに従っただけだ! 私は科学者だ! 本当は戦いに出るような立場ではない! 他のヤツはいい。私を助けろ! 私が持つ英知こそ、人類の未来に必要なものだ! 個人的な恨みを抑えて、人類の未来を守れぇ!!」
パァーン!
銃声が鳴り響き、通信が切れた。
(銃声?! 味方に撃たれたのか?)
アランはモニターに映し出されている戦艦リナリアのブリッジを拡大表示した。
ブリッジクルーが全員起立して、シンセシスー2に向かって敬礼をしている。
そのやつれた表情から、今までの行いに対しての後悔と諦めが伝わってくる。
(上層部の命令だったから仕方がなかった……というには重過ぎる罪だ……覚悟は出来ているのだな。それなら……終わらせるよ!)
シンセシスー2がブリッジにビームソードを突き立て続ける……耐ビームコーティングを突き破るまで……かき集めたビームソードを何本も……
そして、耐ビームコーティングを突き破ったビームソードによって、戦艦リナリアが爆発し、シンセシスー2は吹き飛ばされた。
(疲れたな……もう……俺には……)
アランは戦う気力を失い、意識を手放しかけていた。
トン!
コクピットを揺する軽い衝撃がアランの目を覚まさせた。
「アラン、生きてる?」
通信機から聞こえるアーサーの声。
別れて15分程度しか経っていないのに、何故か懐かしく感じる。
「アーサー?! 何故?!」
「何故って? 敵の包囲を突破してきたんだよ」
「よく突破出来たな。撃墜されている頃だと思ってたよ」
「それは酷いね。僕を誰だと思っているの……と言いたいところだけど、こっちも満身創痍って感じなんだよね」
アーサーの言う通り、モニターに映るカリバーンは満身創痍といっても過言ではない状態であった。
装甲は所々剥がれているし、アルダーン用のビームソードを装備しているという事は、カリバーンのメインウェポンであるトライ・レジェンズを失ったのだろう。
「ごめん、アーサー。イーサン達は撤退した。作戦失敗だ。もう<タカネ>の中枢システムに侵入する事は出来ない。もう救えないんだ……」
「そうか……一人で良く頑張ったね。アランも撤退してくれ。シンセシスー2のダメージは大きい。もう戦えないよね?」
アランはモニターにダメージ状況を映し出した。
右腕は戦艦リナリアを撃沈した時に吹き飛んでいる、左腕は左肩部を斬り裂かれた時に動作を止めている。
脚部は正常に稼働するが、腕部が稼働しないのであれば武装を使用する事が出来ない。
アーサーの言う通りシンセシスー2は、今度こそ本当に戦う力の全てを失ってしまった。
「なぁ、アーサー」
「何かな?」
「アーサーは逃げないのか?」
「そうだね。まだ友軍が戦っているからね。逃げる事は出来ないよ」
「俺が不安だから援護しろって言ってもか?」
「何それ、アランらしくないね。さぁ、時間が無いから早く逃げて」
「命をかけてでも友軍を守る必要があるのか? 簡単に降格させるような相手だぞ」
「それでも僕はE.G.軍の軍人だよ。それに、あの時は僕が悪かった。受け入れてもらっただけで満足さ!」
「お人好し過ぎるんだよ!」
「お人好しか……そうだね。僕はお人好しだからさぁ、アランが困った時は必ず力を貸すよ。だから、君が本当に成し遂げたい事が出来たら、必ず僕を誘ってくれよ」
「あぁ、そうするよ。いつか……俺の力で成し遂げられない事があったら、必ずアーサーを頼る!」
「それじゃ、行ってくるね。さようなら、僕の小さな友人。元気でね!」
アーサーのカリバーンが敵陣目掛けて飛翔していく……
(俺は忘れない……この悔しさを……己の甘さが招いた悲劇を……そして、こんな俺を守ろうとしてくれた友人がいた事を……)
アランはシンセシスー2を飛行形態に変形させ、戦場から離脱したーー




