最後の希望
「聞こえているかアラン?」
イーサンのリベレスティンから、E.G.の標準規格で通信が入った。
「聞こえている。ファング向けのご立派な演説からな。何のつもりだイーサン。B.o.D.に従わなくていいのか?」
「従う必用は無い! <タカネ>を兵器として扱っている非道なヤツラになど!」
「イーサンは知っているのだな。<タカネ>の暴走にB.o.D.が関わっている事を」
「知っているも何も、本人から直接聞いている」
イーサンの発言は、アラン達に衝撃を与えた。
アラン達もネイサン・アークライトの演説を聞いて、<タカネ>の暴走にB.o.D.が関わっていると気付いていたが、ネイサン・アークライト本人が直接指示を出しているとは思ってはいなかった。
(この戦いが謎の組織と繋がっているのであれば、ネイサン・アークライト……お前が柳の関係者なのか? それなら、B.o.D.は謎の組織に操られているのではなく、B.o.D.そのものが謎の組織という事になる!)
思わぬ所で手に入った真の敵の手がかり。
だが、その情報を活かすには生き延びなければならない。
「それが分かったところで何も出来ないと思うけど? 助けてくれるなら有難いけど、敵の戦力より劣っているでしょ?」
アーサーの言っている事はもっともだ。
ファング第一艦隊の援軍を足しても、敵の戦力より明らかに劣っている。
友軍が奮闘してくれているが、敵のエリートパイロット部隊に囲まれている状況は変わらない。
「今はな。地上の駐留軍が打ち上げ中だ。今を乗り切れば戦力は整う」
「でも、どうやって乗り切るんですかイーサンの旦那?」
「ジェイクの言う通りだ。地上部隊が宇宙に上がっても、<タカネ>の居住区を打ち込まれたら終わりだ」
「だから私達で<タカネ>を止めるのです」
遅れてきたイーサンの副官のアマンダが合流した。
搭乗しているチャリムはリベレスティアでは無く、量産機のリベレーンVEだった。
(リベレスティアの修理が終わっていないのか……俺がリベレスティアを破壊した事で戦力を減らす事になるとはね……)
アランは少しだけ後悔したが、ジェイクはアマンダが来てくれた事に歓喜していた。
「姉さん! 来てくれたんですね!!」
「姉さんではありません!」
「ふざけている場合ではない! <タカネ>の背部から中枢システムがある区画に侵入する」
「中枢システム? 何だそれは?」
「通常制御を行っているコントロールルーム以外に、ブラック・ダンデライオンの基盤システムを直接操作出来る中枢システムが存在する。ネイサン・アークライトの最高権限を越えて<タカネ>をコントロールするには、直接中枢システムにアクセスするしか方法が無い」
「なるほど。中枢システムを操作して<タカネ>の暴走を止めれば、地球からの増援で挽回出来るって事だな」
「その通りだ。侵入ルートを知っているのは俺だけだ。だから俺が先導する。アラン、援護を頼む!」
「分かった。俺がイーサンを援護する!」
「そういう事なら、僕が道を切り開けばいいんだね」
「援護してくれるのは有り難いけど、簡単に言ってくれる。敵は親衛隊だぞ! 高性能機の大群相手にどうする?」
「全てを倒す必要は無い。今から道を作る! 任せたよアラン!!」
アランはアーサーの一言だけで、何をしようとしているのか分かった。
(アーサーなら必ず言葉の通り道を作る! なら、アーサーが作った道を飛行形態で一気に突き抜けるだけだ!!)
「掴まれ! イーサン!!」
アランはシンセシスー2を飛行形態に変形させた。
飛行形態のシンセシスー2にイーサンのリベレスティン、アマンダのリベレーンVE、ジェイクのアルダーンが掴まった。
アラン達の準備が整ったのを確認したアーサーが、二丁のトライ・レジェンズをランスモードに切り替えた。
そして、<タカネ>後部へ向けてビームの穂を突き立てた。
2本の高出力ビームがレールの様に伸びて、敵の隊列に穴を開けた。
その隊列の穴を飛行形態のシンセシスー2が最大速度で通過した。
無事に敵エリートパイロット部隊の包囲を突破したアラン達。
だが、アーサーと友軍のパイロット部隊は、敵に包囲されたままである。
(死ぬなよアーサー! 俺達が必ず<タカネ>を止めるまで耐えてくれ!)
*
<タカネ>後端に辿り着いたアラン達の前方に敵戦艦が現れ、通信をつないできた。
「困りますねぇ。イーサン様。これ以上、閣下の邪魔をしないでもらえますかね?」
「戦艦リナリア! アンタが乗っていたのか。ギルモア博士!!」
ジェイクが叫んだ戦艦の名前をアランは知っている。
宇宙ステーション『高山柳』で戦艦ブルーベリーを撃沈した、敵戦艦の名だったからだ。
(戦艦リナリア……同志の仇! 運命に感謝するよ……世界を救うのと仇を討つのを同時に成し遂げられるからな!)




