獅子の牙
アランにはパウエル中将の戦艦バルムンクが、何も成し遂げられず撃沈した事が信じられなかった。
「何が起きている?」
「何だろうね? カリバーンが10機くらいあれば可能だと思うけど」
「カリバーンが10機ね……親衛隊か!」
ジェイクが突然叫んだ。
「ジェイク! いきなり叫ぶな!」
「わりぃ、旦那。本当にカリバーンが10機……いや、10機以上出撃しているかもしれない」
「どういう意味だい? えっと、アランの部下のジェイクさんだっけ?」
「おう、ジェイクで合ってるぜ。でさ、閣下の親衛隊なんだけど、そのカリバーンってヤツと同じVVS2クラスのG.D.ジェネレイターを搭載している機体が10機以上配備されてるんだ」
「VVS2クラスのG.D.ジェネレイター……俺のシンセシスー2のベースになった、オリジナルのリベレーンか!」
「旦那の機体はリベレーンベースだったんですね。その通りですよ。親衛隊は、6年前のエリートパイロットを集結させた部隊なんですぜ」
ピピッ!
ジェイクの言葉を肯定するかの様に、VVS2クラスのG.D.ウエイブが多数検出された。
アランは消えかかっていた憎しみが込み上がってくるのを感じた。
(こいつらが親衛隊……俺の両親を殺した奴らの同類! 道連れにして……違う! 俺の為すべきことは!)
アランは憎しみを抑えた。
今のアランが為すべき事は、<タカネ>を止めて地球を救う事だからだ。
「聞こえているか? 親衛隊のパイロット! 今、<タカネ>は制御を失っている。我々は救援活動を行っている。共に戦ってくれないか?」
アランが共闘を呼びかけたが、親衛隊機に反応はなかった。
5機の親衛隊仕様のリベレーンが友軍を撃破しながら接近してきている。
(反応なし……全く動揺を見せないという事は、真実を知っているのだな。その上で攻撃を仕掛けているのだな!)
アランはセンサーシステム『百目』を起動し、シンセシス・ライフルをAIモードで起動した。
流石エリートパイロット、オート射撃では当たりはしない。
だが、けん制にはなっている。
1機でも2機でも遠ざける事が出来れば、戦力の差を埋められる。
アランは格闘プログラム『摩利支天』を起動してリベレーンに接近した。
右のビームブレイドで袈裟斬りにして敵のビームソードを薙ぎ払うと同時に、左のビームブレイドでリベレーンの胴体を横薙ぎにした。
(アーサーは3機の相手をしているか……残り1機を俺が落とせば!)
アランはAIモードのシンセシス・ライフルのけん制射撃で追い払った、残りのリベレーンに接近した。
「あぶねぇ、旦那!」
シンセシスー2の背後で爆発が発生した。
アランはモニターで背後を確認すると、シールドを破壊されたジェイクのアルダーンが見えた。
接近戦で仕留めようとしていたリベレーンが距離を取った。
「大丈夫か、ジェイク!」
「シールドをやられた。ロングレンジライフルを装備したリベレーンが居やがった!」
「ちょっと厳しいかなっ! まだやられる気はないけどねっ!」
アーサーの声色は、言葉と裏腹に余裕の無さを感じさせる。
レーダーを確認すると5機のリベレーンに包囲されていた。
(何機いるんだ? これ以上敵機が増えたらアーサーでも対処出来ない。敵の主力はここだけか? フリージアとカーライル中尉は無事だろうか?)
既にフリージア以外の宇宙戦艦は撃沈している。
最後の宇宙戦艦であるフリージアが集中攻撃を受けるのは明白だ。
アランは迷った。
ここで親衛隊と戦い続けるか……戦艦フリージアの元に退却するか……
「オリヴァーさん次第かな? 何とかしてくれるといいんだけどね!」
「何とか出来るのか……カーライル中尉が……」
「旦那、俺が道を切り開きますぜ!」
「何を言っている?」
「そうですよ。ただの量産機のアルダーンで何をするんですか?」
「旦那の逃げ道作んだよ! こんな所で死ぬんじゃねぇよ! 凛ちゃんと一緒に逃げろや!」
「出来るか! 今までどれだけの人が死んだと思っている! 無駄には出来ないんだよ!」
「そんなの旦那が背負う事じゃねぇんだよ!」
「俺が背負う事だ! 俺は逃げない!」
「どうするんだい? 言い争いしている余裕はないっ!」
アーサーの言う通りだった。
既に、敵の親衛隊機の集中攻撃を受けて防戦一方である。
「こうすんだよ! 俺の命で! 旦那達の未来を切り開く! でやああああああ!」
ジェイクのアルダーンが敵の親衛隊機に突撃をした。
3機のリベレーンがアルダーン目掛けてビームソードを振りかぶる。
「避けろ! ジェーイク!!」
アランの叫びが空しく響いた……と同時に赤い粒子が1機のリベレーンに降り注いだ。
そして、突撃してきた赤い機体がもう1機のリベレーンを蹴とばし、最後の1機をビームアックスで斬り裂いた。
「何をやっているジェイク! お前はまた自爆するつもりか!」
「旦那!」
ジェイクが『旦那』と叫んだ。
その一言だけで、待ち望んだ相手が来た事を喜んでいるのが分かった。
「宇宙の民を守る獅子の牙、ファングは失われてはいない! このイーサン・アークライトがいる限り! これより俺が指揮を執る。<タカネ>のファングは俺に続け!!」
イーサン・アークライトの声が、敗北感に打ちひしがれていた友軍を歓喜に染めた。
アランもリベレスティンの雄姿を見て心強いと思った。
(遅いぞ! イーサン!!)




