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白銀のシンセシス  作者: 大場里桜
前編:Grayish future
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勝利無き戦い

「全軍に告げる! 惑わされるな! 敵が誰であろうと、我らが為すべき事は<タカネ>の暴走を止めて世界を救う事だ! 現時点をもって、ブレナン大将から託された指揮権を放棄する。誰かの指示ではなく、それぞれの未来の為に戦い抜いて欲しい!!」


 パウエル中将からの通信を聞いて、E.G.軍宇宙艦隊とファング第四艦隊の兵士達は覚悟を決めた。

 既に負け戦である事は明白であった。

 ネイサン・アークライトが準備した兵力の大小は関係ない。

 例え敵軍を退けたとしても、味方に損害が出た時点で<タカネ>を押し返す事は出来なくなる。

 <タカネ>を押し戻せず、地球の衛星軌道上に辿り着いてしまえば、居住区が地上に打ち込まれてしまうだろう。

 そうなれば、地上の都市は壊滅し、地球で生活する事は困難になるだろう。

 それが分かっているからこそ、敗北が確定していても諦める事は出来ない。

 戦艦バルムンクが先陣を切り、敵艦隊に向かって攻撃を開始した。

 敵艦隊も砲撃を開始し、次々にチャリム部隊が出撃してきた。


「どうやら敵は戦力を隠し持っていたようだね。これだけの戦力があれば宇宙要塞ヘカトンケイルだって守れたのにね。僕達が<タカネ>に辿り着けたのも敵の陰謀だったのかな?」

「それは無い。そもそも、俺達が宇宙に上がれたこと自体が奴らにとってイレギュラーだっただろ? 今、敵がやっているのは辻褄合わせだ。ズレた計画の修正に必死なのだろう」

「辻褄合わせね。何の辻褄を合わせようとしたら、こんな非道な行いを出来るんだ! 許せねぇ……こいつらは俺が始末してやるよ!」


 カーライル中尉の様子がおかしい。

 いつも以上に好戦的である。

(アーサーも暴走していたけど、今度はカーライル中尉か……まぁ、最初に暴走していたのは俺だから偉そうな事は言えないけどな)


「オリヴァーさんはフリージアの護衛をしてください」

「何でだよアーサー! 俺を除け者にするのか!!」

「冷静になってくれカーライル中尉。アーサーの判断が正しい。アルダーン・カスタムHEのメインウェポンは狙撃用の武装だ。無駄に前に出る必要は無い」

「理屈じゃないんだよ! 俺が戦う理由は!!」

「それでもお願いします。フリージアの皆を守れるのはオリヴァーさんしか居ないんですよ」

「その通りだ。無茶をするのは俺の役目だろ?」

「仕方ねえな。アーサー……アラン……任せたぜ」


 ようやくカーライル中尉が落ち着いた。

 アーサーのお願いが効いたのだろう。

 この戦いで全員が生き残るのは難しい。

 だからカーライル中尉は、一番守りたいフィオナ艦長(相手)がいる戦艦フリージアの傍にいた方が良い。

(前線で死線をくぐるのは俺とアーサーだけで十分だ……あと、ついでにジェイクもだな)


「任せて下さい。僕とカリバーンは簡単にやられはしないですよ」

「それに俺もいる。俺とアーサーの二人なら負けはしないさ」

「行くよアラン!」

「了解だ! 遅れるなよジェイク」

「いきなり無茶ぶりするな! この機体じゃ追えねぇよ旦那!」

「掴まれ!」


 アランは飛行形態に変形したシンセシスー2に、カリバーンとジェイクのアルダーンが掴まったのを確認した後、最大速度で最前線を目指した。

 最前線ではE.G.軍宇宙艦隊指揮下のアルダーンとリベレーンVEの混成部隊が敵のリベレーンVEと交戦していた。

 カリバーンとアルダーンがシンセシスー2から離れた後、アランはシンセシスー2を人型形態に戻した。


「アラン、ランスモードのリチャージは完了している。敵戦艦を破壊するから援護宜しく」

「任せろ! 道を開ける。ジェイクは適当に戦っていてくれ」

「あいよっ! 死なない程度に頑張っておくぜ!」


 アランはカリバーンが敵戦艦に近づける様に、護衛のチャリム部隊をシンセシス・ライフルで撃墜する。

 チャリム部隊の護衛を失った敵戦艦にカリバーンが接近して、トライ・レジェンズをランスモードで突き立てた。

 高出力ビームの穂先がブリッジから船底まで貫き、敵戦艦が轟音を立てながら爆発した。

 多数の敵チャリムとの戦闘に特化したシンセシスー2。

 敵戦艦を一撃で撃沈する一撃を持つカリバーン。

 二機の連携は一騎当千の活躍を見せた。

 圧倒的な戦闘力で、次々に敵チャリム部隊と戦艦を撃破した。

 だが、二人の奮戦も無駄であったと、友軍の通信を聞いて悟った。


「戦艦バルムンク撃沈! 我が艦も持ちまーー」


 友軍の戦艦からの通信が途絶えた。

(戦艦バルムンクが……パウエル中将が戦死しただと? 戦況はどうなっている?)

 アランは慌てて友軍の識別信号を確認した。

 レーダーに映る戦艦の識別信号はフリージアのみとなっていた。

 アルダーンと<タカネ>所属のリベレーンVEも半数が撃墜されている。

 敵艦を撃墜するのに集中し過ぎていたとはいえ迂闊だった。

 もう、<タカネ>を押し戻して救うどころか、敵を退けるだけの戦力すらない。


「アランとなら勝てると思ったんだけどね。余力はあるけど……戦線が崩壊してるから、これ以上持たないかな?」


 アーサーに問われても、アランに返せる言葉は無かったーー

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