全人類の敵
E.G.軍宇宙艦隊とファング第四艦隊所属のチャリム部隊が次々に<タカネ>から出撃した。
ファングのリベレーンVE30機が周囲を警戒する中、残り19機となったE.G.軍のアルダーンが、<タカネ>後端のアポジモーターにシップデストロイヤーを設置していく。
戦艦の強固な耐ビームコーティングを破る為のシップデストロイヤーならアポジモーターにも甚大なダメージを与えられるだろう。
設置を終え、アルダーン部隊が離れるとシップデストロイヤーが稼働した。
G.I.N.ダイヤの生成時に発生する粉末を蒸着した特殊材製のドリルが、アポジモーターに食い込んでいく。
そして、シップデストロイヤーが停止したが爆発は怒らなかった。
内部までは破壊しきれなかったのだろう。
それでも、外装に穴を開けられた事は大きな戦果だ。
「全軍待機! 我が軍のカリバーンが目標を穿つのを待て!」
パウエル中将の指示を受けて、アーサーのカリバーンがアポジモーターに接近した。
全軍が見守る中、トライ・レジェンズをランスモードに切り替えて、シップデストロイヤーで開いた装甲の穴目掛けて突き立てた。
アポジモーターが激しい爆発を起こして動作を停止した。
続いて、もう一つのアポジモーターにもトライ・レジェンズをランスモードで突き立て破壊した。
残り3基。
ランスモードのクールタイムは15分。
両手のトライ・レジェンズを使い切ったカリバーンが後退した。
残りはE.G.軍宇宙艦隊5隻とチャリム部隊の火力で破壊する必要がある。
戦艦の主砲が残りのアポジモーターに豪雨の様に降り注ぐ。
アルダーン部隊とリベレーンVEもビームライフルで攻撃を続けた。
アランもシンセシスライフルで攻撃を続けた。
そして、E.G.軍とファングの攻撃により、全てのアポジモーターの破壊に成功した。
(こんな日が来るとは思わなかったな……ファングを憎み続けて戦ってきた俺の最後の戦いが、ファングとの共同作戦だとは皮肉が効いてる。悪い気分ではないけどな)
「アポジモーターの破壊によって<タカネ>は推力を失った。後は少しづつ押し返せばよい! 全軍<タカネ>の前方へ回り込め!」
パウエル中将が指示を受けて、全軍が<タカネ>前方へ向かった。
作戦は順調であった。
<タカネ>は慣性で地球へ向かってい続けている。
全長50kmの<タカネ>を押し留める事は困難である。
それでも、推力を失った今、全軍で押し返せば止める事は不可能ではない。
誰もが作戦の成功を疑わなかった。
ブラック・ダンデライオン<セイヨウ>から、世界中にE.G.の標準規格で通信が届けられるまではーー
モニターに映る赤い礼服を着た中年男性。
黒がイメージカラーであるブルーム・オブ・ダンデライオンの中で、赤い礼服を着る人物。
それは、イーサンと同じアークライト家の人間のみ。
「私は宇宙の民を束ねる宇宙同盟、ブルーム・オブ・ダンデライオンの盟主ネイサン・アークライトである。全人類を危機に晒す非常事態が起きたのだ。あろう事か、E.G.軍は我らの故郷の一つ、ブラック・ダンデライオン<タカネ>を地球へ向けて落下させている。既にアポジモーターを破壊され、<タカネ>を制御する事は叶わなくなった。<タカネ>が地球の衛星軌道上に辿り着いてしまえば手遅れになる。奴らは居住区を地上の主要都市に打ち込むつもりなのだ!」
全軍で何故通信が可能なのか探ったが原因は特定出来なかった。
6年前の第一次宇宙戦争時に通信衛星は破壊されている。
地球まで通信出来るはずがなかった。
「何だこの演説は! 早く止めろ!!」
パウエル中将が怒号を上げようと、ネイサン・アークライトの一方的な演説は止まらない。
「故に我は立ち上がった! 立ち上がらなければならなかったからだ! 何故なら<タカネ>のパトリック・アームストロング議長が欲に駆られ裏切ったからだ。このテロ行為には彼が関わっている。アームストロング議長が<タカネ>を制御してE.G.軍宇宙艦隊に協力しているのだ。人類全てを裏切ったファングに存在価値は無い! 我はファングを解体して、戦力の全てを親衛隊にの指揮下に置いた。これより全戦力をもって<タカネ>に巣くう悪鬼どもを討伐に向かう!!」
演説が終わると同時にブラック・ダンデライオン<セイヨウ>と<アカミ>方面から多数のG.D.ウエイブを検知した。
本国から来たにしては到着が早すぎる。
これより討伐に向かうと言っていたが、既に準備を終えていたのだろう。
(対応が早い! <タカネ>の異常は最初から計画に入っていた? ネイサン・アークライト……まさか柳の関係者か?!)
アランはネイサン・アークライトが謎の組織か柳と関りがあるのではと推測した。
だが、全てが手遅れであった。
E.G.軍宇宙艦隊は既に全人類の敵となっていたのだからーー




