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第24話 挨拶

更新がだいぶ遅れました。申し訳ないです。

これからもちょくちょく予告なしに更新がないことがあると思います。

温かい目で見守ってくださると幸いです




「――ブレム様」

「オリヴィア」


 ブレムは手元に広げていた本から、声のした方に視線を移す。

 オリヴィアが少し離れたところから、小さく微笑みながら、ブレムへ歩み寄ってくる。


「話は終わったのか?」

「ええ。ひと段落着いたので、解散となりました」


 別館を出た後、ブレムは時間を潰すために、再び図書館へとやって来ていた。


 謎の魔物の襲撃に見舞われた本教会ではあったが、被害区域は礼拝堂だけと限定的で、その頃には既に中層階の避難指示も取り下げられていたため、図書室も問題なく使用できた。


 ブレムはそこで、一旦は完成させた魔術式をさらに洗練できないか、1時間ほど試していたのだった。


 その成果は……先程とは異なり、あまり芳しくなかった。

 まあブレムは魔力が殆どない身である以上、実際に魔術を行使して、不具合がないか確かめるトライアンドエラーが出来ないので、ただ既存の魔術式と照合して、理論上の不整合を潰していくということしか出来なかったのもあるが……。


 オリヴィアはブレムの隣まで歩み寄ると、そのまま椅子に腰掛けた。

 そしてブレムが先程まで格闘していた紙を覗き込んだ。


「転移術式ですか。ですが、これでは上手く発動しないと思いますよ」

「え、マジ?」

「はい。魔力を通した際に、魔力が相殺してしまう箇所が複数見られます。

 それらしい魔術は発動するかもしれませんが、成功する可能性は低いですね」

「そうか……」


 オリヴィアの指摘を受け、ブレムは頬を掻く。

 やはり、転移術式はこれまで学んだ魔術式の中でも、格段に複雑で、再現が難しい。

 しかも、紙に記述するだけでこれほど苦労するのだ。戦闘中に魔術として発動するなど、文字通り神技なのだろう。魔術が使えないブレムでも分かる。

 

「……そう考えると、キキョウってすげぇな。当たり前の顔して転移術式を連発して……」

「はい。キキョウは昔から、飛び抜けて優秀でした」


 オリヴィアは自分が褒められたのかのように――否、むしろそれ以上に嬉しそうに微笑むので、ブレムは思わず息を呑んでしまう。

 

「どうかされましたか?」

「いや、すげえ嬉しそうな顔をするんだなって」


 ブレムが率直な感想を告げると、オリヴィアは首を傾げる。


「そうですか?確かに、キキョウとは昔からの付き合いなので、自分のことのように嬉しくなる……のかもしれませんね」

「ふうん」


 昔からの付き合い……それがいつからの話かは分からないが、言動からしてオリヴィアとキキョウは、昔は仲が良かったのだろう。

 しかし今は、キキョウの方から距離を取っているように見える。

 これも、オリヴィアが【聖女】に就いたことが関係しているのだろうか?


「あ、勿論キキョウも大切ですが、私にとっての1番はブレム様ですよ」


 じっとオリヴィアを見つめていると、オリヴィアは何を勘違いしたのか、そう言いながら、慌てて顔の前で両手を左右に振った。


 そういうわけじゃない、とブレムが苦笑しながらそう告げようとしたところで――。


 ぐーっ、と。

 ブレムの腹が鳴った。

 まだこんな時間か、とブレムは少し驚いたような気持ちになりながら、オリヴィアの方へ視線を向ける。

 

「今日は色々なことがあった気がするけど、まだ昼飯も食ってなかったな。てっきりもう夕刻くらいかと」

「ですね。どこか街に食べに行きますか?」

「そうだな」


 元々は、午後からまたオリヴィアと出かける予定だったしな、とブレムは思い出しながら、机の上の紙束を片付けようとする。


「私がお持ちしますよ」


 しかし、先ほどの魔術式が書かれた紙に手を伸ばそうとした瞬間、机の上に広がっていた紙束がその紙も含めて、まるで元々から存在しなかったかのように消え去った。


「……ああ、ありがとう」


 空間魔術――いや、魔術式が発動した気配はないから、空間魔法でどこかに収納したのかとブレムは今更驚くことでもないかと思いながら、席を立った。


 ◇

 

「ブレム様に一つ、お伝えすることを忘れておりました」


 本館の廊下を進みながら、オリヴィアがふと思い出したかのように切り出した。


「明日の正午ごろから、本来は私の【聖女】就任の挨拶を教会の前の広場で行う予定だったんです。

 ですが今回の魔物の襲撃で、民も混乱しているでしょうからという第一席次殿の計らいで、急遽ですが民衆への説明も合わせて行うこととなりました」

「へえ……それは俺も見に行って良いんだよな?無論、一観衆としてだけど」


 なんだかんだ言って、オリヴィアの【聖女】としての姿を今まではっきりと見たことがないしな……とブレムは内心でそう思いながら隣を歩くオリヴィアに尋ねた。

 オリヴィアはニコリと笑うと、頷く。

 

「勿論です。楽しみにしておいてくださいね」

次回は1週間以内に更新できるように頑張ります

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