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白の英雄譚  作者: 東ノ店
第二章 vs海王: 海の独裁者リヴァイアサン 海賊編
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9/15

邂逅

 空から見える景色は、また海一色だった。

 だけど、島から見るのとはまるで違う。


 島から見えていた、まばらだった海はその広大な姿を隠していた。


 上から見る海はこんにも美しいなんて、これを裸眼で見れないほとんどの人は損してるぜ。


 海以外は何もない景色だ。

 なのに、いろんな色がある。


 透き通った空色のような青に、入ったものを逃がさない群青。太陽光を反射するエメラルドのような青。海以外はなにもないのに、異世界を感じられる。

 

 風は、夏の日の扇風機みたいにゆるやかに吹いていて、このままじゃいつか寝てしまいそう。


 雲は空を泳ぐ魚みたいに、次々に後ろに倒れていく。


「気持ちい~~」


 この鳥はたぶん歴三十年を超えるベテランドライバーだ。乗り心地を優先しながら物凄い速さで移動している。


 このまま待っとけば、いつかは陸に辿りつけるだろ、たぶん。


「いいねぇ、ポケモンの空をとぶもこんなんだったんかな?」


 風の枕に仰向けに寝転がって、景色を見ることにした。

 こうしていると、いつかの車の中を思い出す。


 ノンビリとした冒険の始まりで、それはそれで心地が良くてかなりの満足感だ。


 始まりから忙しいゲームより、最初はその世界にじんわりと浸るように、ゆっくりと進む方が好き。


 すると、三十分近く飛んだ後、遠くの空にだんだんとまばらに灰色の空が見えてきた。


「ん、雨?」


 ただ、その雲は青一色の空に突然現れたように見えた。


 かなり先にあるおかげで全体像が何となくわかるけど、ある一点だけに雨雲ができているように見える。


 更に異様な物が見えた。


「なんだあれ?雷の、柱?」


 絵に描いたような雷が何本もの柱になって、水面に聳え立っていた。


 しかもそれは雲から出ているわけじゃなかった。

 その雷は水から天に突き刺さっていた。


 その柱に興味が惹きつけられ精一杯目を凝らしてみると、雷の源である水面には一隻の船が荒波に耐えながら浮かんでいた。


「人だ・・・」


 この広大の海に対してはちっぽけな存在である人が、どんなものよりも目を引いてくる。


 それがちょっと悔しい。


 てか、この距離でも目を凝らせば見えるのか?

 凄いな、やっぱこの身体。

 

 この身体の性能に若干の驚きと困惑と関心を感じていると、見えてきたのは船だけではなかった。


 視界には大蛇を彷彿とさせる、海の中のドス黒い巨大な影が飛び込んできた。


 たぶん、あの影はあんな一隻の船ぐらいならすぐに沈めることができるだろう。


「なんだ、あれ・・・?」


 最初に観測した魔物とは、生物としての格が違う。


 船が飴玉ぐらいの大きさに見えるこの距離でも、その影の存在感はちっとも小さくない。


 もし現実にあんなのがいれば、人間の想像できる範囲を優に超えて、人類を滅ぼすかもしれない。


 全世界の軍隊が束になっても敵わないかも。


 なのに、俺は恐怖は感じていなかった。

 いつも通りだ。


「意外と、怖くない?」


 おかしいな・・・。流石にあんなのを見たら、俺に限らず誰でも怖がると思うんだどな。


 ・・・まあ、いいか。

 俺が俺の想像よりすごいだけか


「なら、早くあの雲の中に」


 恐怖とは人間賛歌だという。


 恐怖を乗り越えたものはもっとも強く、誰にも負けない自信を得れるんだろう。そして俺は、自分でも気づかない間に、恐怖を乗り越えていたらしい。

 

 これは異世界で定番のイベントだ。


 この俺が一人で解決すれば、あの船にいる奴らは俺を神として敬う。できれば美少女がいてほしい。


 そう、俺のために行く。


「そのために俺は行く。うん」


「いくぞ!」


 なにより、この身体の力を試す機会にはちょうどいい。俺の指示に従い、鳥はそのスピードを上げていく。


 みるみるとその距離は小さくなっていき、数秒後には届いているだろう。


 船もだんだんとその真の姿を取り戻している。


 それでもその影を見れば、やっぱり道端の小石ぐらいにしか見えなかった。


 世界は加速したように動き、その怪物が水面から顔をだし、その小さく見えてしまう船を、ターゲットに襲いかかろうとしている。


 その巨体は弧を引いてから、槍のように真っ直ぐと船に落ちてくる。ただ違うには、槍と言うには大きすぎたことだ。


 一口で大阪城ぐらいなら丸のみできそうだ。

 船なんて余裕だろう。


 影の通りその姿は蛇やウナギのように首がなく、魚のような見た目ではなかった。


 太さは25メートルぐらいの厚さだろう。しかもその太さに加えて、鱗は未知の鉱石のような謎に包まれた何かでできていた。


 加えて、太陽は出ていないのに、その鱗はギラギラと汚い光をちらちらと見せびらかしている。


 これじゃあもう、ランクアップの龍だ。


 そんな巨体が、空間を刺し殺す槍になって襲いかかる。あの槍をあの船は防げるのか?

 

「まずい、クッソ!」

 

 速く、速く!!


 鳥の速さは、体感では光速にも届いたと思う。


 攻撃方法なんて考えていなかった。

 それどころか、何も考えてない。


「ヅッコメ!!!!」


 思いが重さに変わったみたいに、青く光る風がさらに鎧のように鳥に纏っていく。


 バン!!!と、青い閃光のようになった弾丸を、その海龍の目にぶつけてやった。


 身体はぶつかる瞬間にその鳥から脱出していた。

 よかった。なんとか防げた。


「よっしゃあ!!!」


 手応えはあったようで、怪物は水に逃げるように潜水していった。


 またすぐ襲ってくるかもしれないけど、とにかく今は危機を退けた。


 そのまま俺は、真下にあった船に落ちていくことにした。てか、自由落下だから選択肢がそもそもない。


 バキッ!と、俺が落ちた拍子に材料であった木の板が折れる鈍い音が船内を巡る。


 一応この船まるごと助けたんだし、これは許せ。


 サスケと、心で言いそうになり顔を上げると、そこには異様な目で俺を見てくる赤髪の少女が、野生のライオンのみたいな足さばきで俺に迫ってきていた。


 瞬きをすれば、すでに射程距離にこの少女は立っていた。


 長い赤色の髪を簡単に二つにまとめて、その上にサイズも色合いも全てが似合ってない帽子を被っていた。いや、被っているというより、着せられている。


 ただ胸は大きい。巨乳ロリッ子だ!


 服は白色を基調とした動きやすそうなノースリーブに、視線を引き寄せるために?胸元を緩めていた。


 ちなみに雨なのに、透けてはいなかった。

 まあガキの胸なんてどうでもいいけどな。

 

 ちくしょう!


 そして、自分がリーダーとでも全員に主張するような、海賊らしさを感じるマントを肩に羽織っている。


「お前、誰だ?」


 少女が甲高くも、歳を感じさせる声で話しかけてきた。


 "お前は誰だ?"って。


「え……?」


「急に現れて、勝手に船に入られると困るわ。でも今はこいう状況だわ。だからまずは名を名乗りなさい。話はそれからよ」


「いや・・・その、えっと」


「ああ!?何だよ早く言いなさいよぶっ殺すぞ!」


 口調に反して全然怖くない。

 なのに、怖くないのに、全然言葉が出ようしてくれない。


 息がおかしい。

 てか声もちょっと遠い感じがする。


 無意識に目を逸らすと、船内にいる10数人の男たちがそこら中から俺を一斉に異様な目で見てきていた。


 おかしい。なんだか息がし辛い。

 俺は助けたのに、なんだってそんな目で・・・。


 てか何怖がってるんだ俺は?

 あれ・・・?ここは異世界・・・だ。


 現実じゃないはず。


「いいから早く答えなさいよ!時間がねぇんだよ!」 

「船長早くしてくれ!またアイツが襲ってくるぞ」


 そうさ。何怖がってんだよな。

 早く言えば良い。早く・・・。


 周りの目が気になる。誰もが同じ目で見てくる。

 またなのか?


 すると、勝手にうろうろと泳いでいた俺の目が、何かに吸い込まれるように勝手に止まった。


 この数十人の中で、1人だけ異彩を放っている人物が、俺の網膜に刻まれるように捉えられたからだ。


 自由に出入りできるように開いた扉の部屋。そんな屋根のついた部屋で、静かにじっと座っている女の子。


 その子に、目をとらえれそうになる。

 

 その子は俺を見てはいなかった。

 ただじっと、目をつぶっていた。


 目を瞑っているからなのか、その子だけは何か違うものを纏っているように見えた。


「お前は誰なんだ?」


 ようやく船長らしい女の、甲高くも太い声が耳に届いた。


 さっきまではもっと遠くに感じていたのに、今は近すぎてうっとしい。


 さっきまではよく聞こえていなかった。


 おかしい。あの子こそ、誰なんだ?

 あんな子、見たことない。


 

 

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