冒険のはじまり!!
キューキューと、鳥の囀りが目覚まし時計代わりに、俺の目を覚ましてくる。
ううーーんっと背伸びをしながら、砂の上で泥のように寝ていた体を起こすと、冷たくて気持ちの良い風が吹いてきた。
小さめの森やヤシの木も、その風に吹かれて気持ちよさそうだった。
「良い朝だ!!」
こんなにも気持ちいい朝があるなんて、まったく世界というのは素晴らしいですね!
「それじゃあ、早速色々と試していこうか」
今日中にはこの無人島から脱出したい。流石にこのままじゃ退屈だ。
「そのために、やっぱまずは魔法だな」
どうすれば?なんて事はわからない。でも、やってみれば案外何とかなるかもしれない。
「ウィンド!!ファイアー!!フリーザ!!サンダー!!」
とりあえず心のままに言葉にしてみたが、案の定何も起きなかった。
「くそ~~まあ無理だよなぁ」
わかってたことだし、気落ちはしない。
てか、最初の以外は全部ありきたりだし、魔法よりもポケモンを連想させる。
でもあいつら映画で普通に捕まってて、初めて見たときは純粋に驚いてたけど今見たら伝説なのか、疑いが強くなる。
だって、他の準伝のエンテイとスイクンはちゃんと映画で威厳があった。なのに、あいつらときたらまったく。特にファイヤーだな。
ん、ライコウ?たしか、映画での出番がダイパまでなかった奴か?そんなやつは知らん。
それに俺とは世代も違うしな。
「さて、次はどうするかな?
あれか?イメージの問題とか?」
ついつい無駄なことを考えてしまった。
今は魔法についてだ。異世界だし流石に使えると思いたい。
常に想像するのは最強の自分って言うし、魔法もイメージが大事かもしれない。
実際、魔法に限らずイメージするのは大事っていうのが俺の自論。
絵を描く時だってそうだった。
周りがどうかは知らないし、どうでもいいけど。
俺はそうだった。
「魔法をイメージ・・・イメージ・・・イメージ」
この無人島からでることができる魔法。
例えば、空を飛べる魔法とか。
想像しやすいように、瞼を深く閉じることにした。
背筋を真っ直ぐに伸ばして、さらに右手を前にかざし、それを左手で支える。
ただ、俺は瞼を閉じても、ちゃんと集中した試しがあんまりない。
嫌な記憶のせいだ。
目を瞑ればどんな時も俺の目の前に現れてくる。
ここに白紙の紙があれば、それだけを見続けているのに。そうすれば何も考えずに済む。
「いやとにかく想像だ想像。まずは飛ぶ。飛ぶと言えば、空・・・空か」
おかしい、変だな。
今、魔法以外で思い浮かんでくるのは昨夜の星空だ。いつもの記憶とは違う。
そういえば、昨夜はいつ寝たか、記憶にない。
星を見ていたら、気がつけば朝になっていた。
こんなのは久々だ。
それに、原因不明の胸のツッカエもマシになった気がする。てか今の今まで忘れてたぐらいだ。
絶対にあの夜空のおかげだ。
「あの星空を・・・飛んでみたい。魔法ならそれができる」
あの星空に少しでも近づけたら、それだけで人生は良いのかもしれない。
「あの夜空を、魔法なら飛ぶことができるかもしれない」
自分があの空を飛んでいる、そんな絵を脳裏に焼き付けるように、慎重に思い浮かべた。
いつだってどんな時だって、まず想像するのは自分。俺を中心に、あの夜空を飛んでいる絵を頭の中で描いていく。
たぶん、あの夜空を完全再現するのは不可能だ。
たとえ魔法でも。
それでも、魔法を使える気がしてくる。
アニメを見た時もゲームをした時も、自分ならって、その世界に自分を置いたことがある。
どれも、絶対に無理で届かないことだったけど。
ただ、あの星空は俺の世界にあるもの。
俺の世界にあるなら、俺だっていけるはずだ。
あの空を飛ぶ。この事実があればいい。
完全再現は無理でも俺を中心に描けば、ある程度は誤魔化せる。
主役は、俺なんだから。
「魔法みたいな空だったけど、現実にあったんだから」
だんだんと答えに近づいている感触がある。
昨日までは考えれば考えるほどわからなかったけど、今はその逆。
考えたら、すぐに次のステージにいける。
何でもできると思えてくる。
世界が、ようやく俺についてきたのかもしれない。
今俺が想像するのは、空を飛ぶ自分。
あの星空を飛ぶことができる自分。
「完全再現できなくてもいい。主役は俺だ」
飛び方なんてなんだっていい。
「俺なら、できる・・・」
この状態に何か一つ変化が生まれれば、その時が魔法を使える時だ。
そしてその変化は、自分で作る。
作れるんだ。
「イメージするのは・・・俺の世界!」
「飛べよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ついでに言いたかったセリフもおまけにつけて、深く閉ざしていた瞼を開けて、瞳を世界につなげる。
想像は、ようやく現実になる。
風が、その姿を青くして形にしていた。砂は、わたあめ機の中みたいに俺を中心に荒々しく舞っている。
そして青い風が足元から上昇していき、頭上にできていた。
「使えた……使えたぞ!!」
空を飛ぶ魔法。
この風が俺を運んでくれるのか?
しかし、青くなっている風は俺を運ぼうとはせず、頭上でなにやら一つになろうとしてしる。
薄い青だった風は、だんだんと一つになっていき色も濃くなっていく。
その空気の塊は、明確な何かになっていく。
「鳥?」
出来上がった物は朧げだけど、このシルエットは間違いなく鳥だ。
「俺、鳥は想像してないんだけどなぁ・・・」
羽を動かさず宙に舞っていた青い風の鳥は、等速直線運動みたいな動きで降りてきて、俺に対して首を出してきた。
よくわからんが、とにかく魔法は使えたんだよな?
・・・ぃよっしゃ~。
「えっと・・・これは乗れば、いいのか?」
鳥からの反応は特にない。
けど、俺が出したんだし、良いよな?
「まあ、空を飛んでくれたらいいからね〜……」
そ~おっとまたがると、途端に直角90度に上昇し、十分な高さに到達してから軍人みたく綺麗に止まった。
「うわあうあ、馬鹿お前急に動くな!」
今度はまったく動かない。
「あれ?これ指示待ち?・・・なるほど」
そうか、ポケモンか。
もしかして、ポケモンのことも考えてたからこんな感じになったのか?
「まあ、ポケモンと旅するのも夢だったからいいけど」
誰だって一度は想像したと思う。
想像しない人なんているのか?
「とりあえず前に進め。なるべく人がいそうなとこに。あとゆっくり!」
予想通り、鳥は俺からの指示を待っていたみたいで、指示を出すとおもむろに動き始めた。
またまた軍人のように素早く、簡潔に飛び始めた。
「おお!!!」
若干の想像のズレはあるけど、人生最高だ。
これだよこれ、これこそ異世界の醍醐味!
高さなんて、全く気にならない。
空から見る景色は、俺にようやく冒険のはじまりを知らせてくる。
これが俺の冒険の始まりだ!




