↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白の英雄譚  作者: 東ノ店
第二章 vs海王: 海の独裁者リヴァイアサン 海賊編
PR
14/15

俺がしたいことって、なんだっけ?

「はぁはぁはぁ」


 あの海戦から、どれくらい時間が経ったんだろ?


 紐で海から船に引き上げられてから、身体をずっと寝転がらせている。


 身体というより、内側の方が消耗したけど。


 それに俺だけじゃない。

 船員全員が下を向いて、肩を揺らしていた。


 船長曰く、ここまで来れれば大丈夫らしい。


「君たち、一旦全員休憩。見張りは私がしてるわ」、そう言った船長は、帆柱の上から動こうとはしなかった。


 ここだけ見れば、船長らしいんだけど。


「君たち、十分休暇は取れたわね。作戦会議よ」


 すると、帆柱から船長が降りてきた。


 作戦会議?

 もう大丈夫なはずなんじゃ?


「中央に気持ちを寄せなさい。あと、誰か作戦盤を持ってきて」


 そそくさと船員たちが中央に集まっていく。

 俺も、一応身体だけを向けることにした。


 さっきまでは勢いもあって、境界線が有耶無耶になってたけど、本来俺はこうだ。


「??名無し、なんでそんな離れてるんだ?」


「え?いや、別にいいだろ」


「良いわけあるか。私は中央に集まれって言ったわ」


 気持ちだけって言ってただろ。


「あ?なんか文句あるの?」


 ここは、素直に従うか。


 従うわけじゃあない。

 あんなのを相手にするのがめんどくさいだけ。


 船の隅っこから立ち上がり、中央に近づく。


 皆んな気持ちだけって言われてたのに、自然と中央に集まっていて、人の輪ができていた。


 船員は、海賊とは思えないほど仲が良さそうだ。

 お互いにお互いを讃え、褒め合っている。


 冗談も言い合う余裕もある。


 海賊というより、家族みたい。


「・・・」


 さっき、俺は勝てないかもって思った。

 おかしい。普段はそんなこと思わなかったのに。


 いつもの感覚が、薄くなっている。

 普段の俺じゃあないみたいに。


 俺はその輪の外にある、樽に腰をかけることにした。こんな輪に、入るわけがない。


 そうだ。


 あんな状況で勘違いしそうになって、成り行きでこうなってるけど、俺は人と群れるのが嫌いだった。


 仲良しごっこなんて、くだらねぇ。

 むしろ、ここまで近づいたことを感謝してほしい。


「・・・」


 てか俺って、なんでここにいるんだ?


 作戦盤を力強く床に置き、同じく船長が輪の中央に、力強く胡座をかいた。


「一度目はあんなものよ。だから気落ちはしないこと。改めて君たち、どうすればあの海王を倒せると思う?」


 ん?待て。

 倒す?は?え?はえ?あ?え?え?え?


「いや待て、倒す!?」


 頭の中のものが全部吹っ飛んだ。


「もう逃げれたんだ。このまま安全に陸まで行く方法を、考えるわけじゃないのか?」


「その陸に行く方法が、あいつを倒す以外ないのよ」


 そんなわけないだろ。このまま前に行けばいつかは陸があるはずだ。


 俺が困惑していると、なぜか船長が「ん〜〜」と困惑の鳴き声をあげている。なんでだよ。


「名無し。魔法もそうだけど、お前何者だ?」


「え?」


 一斉に船内にある目線が俺に向けられた。

 輪の外にいたから、尚更わかりやすい。


 その目の色は、純粋で、汚くはなかった。


「こんな陸から離れた海域を、船も無しで一人で彷徨いるなんて馬鹿すぎるし、ありえない。

 陸なんて、通常ルートなら三週間はかかるわ。風魔法だけでこの海域超えたなんて、馬鹿な話も聞いたことがない」


「なりより、何で魔法が使えないの?

 魔法が使えない人間なんて、この世にいないわ。

 そのくせ、よくわからん魔法は使ってる。あんな状況でとりあえずは放置したけど、もう一度聞くわ」


「お前は、誰なの?」


 誰?また、この質問。


「え・・・いや、俺は」


 何なんだ、何で言葉がつまる?

 何で?また?


 何だって、どうして。

 俺の問題なのか?


 ・・・いや違う。これは俺が悪いんじゃない。

 こいつらが、俺をこんな目で見るからだよ。


 そうさ、こんな人を責めるみたいな目の色で見るからだ。誰だって言葉には詰まるさ。


 てか、何で俺はここにいるんだ?

 何で俺は助けたんだっけ?

 

 そもそも戦う理由もなかったはず。


 いやあった。あったはず?

 確か美人なヒロインがって・・・。


 でもそんなのはなかった。


 間違いなくあそこを切り抜けれたのは、俺のおかげ。なのに、誰も俺に礼を言わない。恩知らずな奴らだ。


 そうだよ。俺は悪くない。

 名前を言えないのも、俺の問題じゃない。


 あれ?ならもう俺ここにいる意味って?

 てか、俺って、何がしたいんだっけ?


 あれ?おかしい。


 さっきの意味のわからん感覚から、何かがおかしい。俺が俺じゃないみたいな。


 俺ってなんだっけ?何を考えてるんだっけ??

 

 本心?誰?誰?


 あいつは誰?俺は誰?何がしたいんだ?


 こいつらって、こんな顔だっけ?

 俺は結局、何がしたいんだっけ?


「もしかして、記憶喪失?」

「ん?ハル?」

「なんだか、凄く辛そうに見えて。それで何となく、記憶がないのかなって?」

「まあハルが言うなら、そうなのかも」


 俺の・・・言葉。


「そうなのか?」


「え?」


 自分が帰ってきたぞと、そんな感覚が体を巡った。


 考えている途中から、自分が自分じゃないみたいだった。記憶がごっちゃになって、見分けがつかない。

 

 俺は、なんて思ってたっけ?

 数秒前なのに、見分けがつかない。


「記憶、ないのか?」


 なんで?そんな急に、優しい声で。

 意味わかんねぇよ。


「・・・まあ、うん。記憶がなくて、名前もわからない」


「そう。そうなら悪かったわね。ただ、こっちが警戒するのも理解して欲しい。ん?これは言ったか?」


 ただ、都合がいい。

 なんでかわからないけど、俺は名前が言えない。


 でも、たぶん誰かのせいだと思う。

 それか、異世界での呪いとか。


「とりあえず、じゃあこれからも名無し呼びで行くぞ、はい決定。作戦会議しながら、色々と教えてやるから、そこは安心しなさい」


「・・・ありがと」


 色の判断が、つかない。

 俺は、何も思ってない。うん。


「よし作戦会議再開だ」


 ・・・俺は悪くない。

 だけど、いや・・・クソ。


 何なんだよ、クソ。

 

 喉の奥にある、見覚えのない言葉を飲み込んだ。

 船内では絶望的な作戦を、楽しそうに話してた。


 こいつらは、何なんだ?・・・くそ。


 記憶喪失。俺はそうなった、もう消せない。


 とにかく、忘れて切り替えることにした。このまま考えていたら、船酔いで吐きそうになる。


 時間が経てば治る。 

 ひとまずは、一応作戦会議に意識を置いておこう。


 自分でも、自分の行動がわからない。

 水中で足を掴まれて、身体を奪われそうになる。


 自分がわからないなんて、今までなかった。

 なかった・・・はず。うん。


 今は、外に意識を向けて聞いておこう。


 俺は、何も考えてないし、思ってない。

 うん。


 ただほんの少し、過去の記憶が顔を見せよとしてくる。




ブクマやいいね、感想などを良ければお願いします。

頂けるととても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。