俺ではない誰かが、戦っている。
「とにかく今は、何とかして道を作らないとッ!」
遠くに行きかけていた意識の首根っこを掴んで呼び止める。
今は頭の片隅に置いておけば良い。
「行くぞぉ鳥!狙いはやつの翼だ、もう回り込むのはやめだ。いつ本格的にくるかわからないからな!」
それにもう十分角度はついた。
ここあたりがボーダーな気がする。
これも直感だ。
「くそ、なんなんだこの感覚。
急に出てきやがって!」
化け物の目に気づいてから、完全感覚からさらに変わった感覚が頭を包み込んでくる。
スピードは出しすぎない。
そうだな、ゲームで言えばテクニック重視だ。
戦闘機のような軌道でやつに近づいていく。
高度は変えない。真正面は、デットゾーンだ。
て、これも直感だ、ちくしょう。
「クソ・・・、何なんだ?」
いや、気にするな。
今は目の前だ!
「あいつに近いたら、あいつより高く飛んでくれ。上から、頭、右翼左翼で奴に選択肢を与える。その繰り返しだ」
ヒットアンドアウェイ。これしかない。
「上がれッ!!」
雷鳴を轟かせているのがあの翼なら、翼を攻撃すれば隙ができる。そのうちに船も動けるはずだ。
船長が舵を放してから一向に進んでいない。
このままじゃ、あいつの思うつぼだ。
たぶん、沈めようと思えばいつでも沈めれる。
キュワーーー!!!!!と、その化け物は天高く叫んでいる。そして、そのバカみたいにデカい体を正面に移動さしてきた。
あの大きさの体を持ちながら、なんとも俊敏な動きだ。
あいつが動くだけで台風よりも凶暴な衝撃波が生まれている。
けど、この鳥は簡単に怯む生物じゃなかった。
偉いぞ。流石俺が出しただけある。
それにもう遅い。
お前よりも、俺のほうが速い。
だんだんと雲に近づいていく。あの化け物によって高度がありえないぐらい上げられた雲だ。
あいつが背伸びすればすぐに頭が天井につきそうた。でも、その雲を抜ければ?
あいつよりも、雲よりも上に。
重力の力も俺の力に変える。
ああ、いける!!
「よし!このまま上を取れれば・・・あれ・・・」
なんだ、なんなんだ、またあの感覚が。
おかしい。何だ、急に違和感が・・・。
これはなんだ?
「ッッ!!下がれ!!!」
鳥の首根っこを掴み、軌道を無理やりに変えた。
天井になっていた雲からは、何か嫌な予感がした。
あれは、普通の雲じゃない。そう言われた気がする。
「そうか、あの雲は重たそうだなんだ!」
空気であって、空気じゃない。
あのまま雲を突き抜けようとすれば、その時点で終わりだった。
高度が下がっていく。
早く軌道を修正しないといけない。
だが、奴は攻撃の狼煙とも受け取れる雄叫びと共に、翼に雷鳴が轟かせた。
少しは待てよ。
「避けろ!!」
針線みたいな稲妻が、クモの巣を水滴がはじけるよりも早く展開していく。
こんなの食らえば、船は跡形もなくチリになる。
急降下でその攻撃を避けていく。
一度喰らうぐらいなら、耐えれるとは思う。だけど、一撃でも喰らえば無限地獄に落ちる気がする。
奴の顔あたりにまであった高度は、水面すれすれまで下がっていた。
「ちくしょう、やっぱあいつ遊んでやがったな!!!ふざけんな!!」「船長今は頼みます!」
遠くからそんなやりとりが耳に入ってきた。
案外余裕そうでよかった。
上下左右、奥行きを使い、こいつの周りをぐるぐると飛んでいる。射程内に入ろうとすれば、翼から無数の弾幕が飛んでくるからだ。
もう角度とかは意味をなしていなかった。
来るかわからない、その時をひたすらに待つ。
「くそ、いつ攻撃できるんだ・・・?」
「・・・これで、まだ本気じゃない?」
これも直観だ。
自分でも口にしているのに気が付いてなくて、ハッとしてしまった。
「クソ!一旦離れる」
このまま飛んでいても何も起こらない。
正直、予想以上だった。
恐怖は感じていなかったからか、一度と二度目で攻撃があたったからか、予想が低くなっていた。
「絶対絶命って、やつか」
でも、心が折れたわけじゃあない。
一度目の攻撃のように、助走をつける。
弾幕も、あのスピードで行けば役割を果たせないはずだ。あの弾幕は、一撃一撃はそこまでだ。
まあそこまでって言っても、ビル一つなら粉々にできるだろうけど。
後ろからくる雷撃を、軌道を揺らしながら避けていく。
目標は、右翼だ。
エネルギーを逃がさないため、大きなUターンをする。ここからは直線勝負。
もうこれしかない。
「狙うは翼だ!!」
使い鳥は残像を作るほどの翼を見せた。
翼までわずか数秒だ。
バケモノも負けじと自分の翼を広げる。
相手が先か、こっちが先か、二回戦だ。
「え・・・?」
目の前に、爆発したようなレーザーが現れた。
こっちに向かってくる。
あれ?終わる?
これは、また一段と次元が違う。
死を、感じる。
死が迫ってくる。
避けられない。
意識だけが先行して体は反応していない。
奴の姿がこのレーザーのせいで見えない。
何をしたんだ?
あ、終わる。
「・・・・・・」
すると、俺の身体が、俺のではないみたいに、勝手に動き始めた。
実体のないこの質量の塊を、光の手捌きで左手の持ち替えた剱で、縦に4枚下ろしにした。
これは、俺なのか?
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