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白の英雄譚  作者: 東ノ店
第二章 vs海王: 海の独裁者リヴァイアサン 海賊編
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全力で逃げろ!!!!!!!

 天変地異を引き起こすほどの化け物を、今から俺は相手取る。


 船で状況が似ているのもあって、モンハン4gを思い出す。あそこは砂漠だったけど。


「お前も私のことは船長って言いなさいよ!」

 

 命令してくるな、この。


「返事!?」


「わかったよ!」


 鼓膜がポロっと取れそうなぐらいの轟音と共に化け物は船に近づいてくる。


 そのくせして、こいつの影が見えてこなかった。


 船長が船員たちに「船底の守りの魔法だけは緩めるな」と少し前に言っていた。


 プラス、化け物もわざわざ一度水中から出て空から襲っていた。


 同じ状況なら、次もたぶん同じ方法のはず。


「ちなみにあの攻撃を防げるのも、この海域から脱出できる舵を取れるもの私だけだから、名無しが無理だったら終わりだから!」


「なら煽ってくんじゃねぇ!」


 こいつめ。そんな重い言葉を投げてくるな。

 ここを乗り越えたら絶対にぶん殴ってやる。


 文句は言いたいが我慢して、船尾の二階、全体を一番見渡せられる場所に移動した。


 影が見えたら、ここから一直線に突っ込む。


 前もってその時を、想像する。


 あの化け物に、剣を通せるような絵を描く。

 どんなものでも想像すればいい。


 でも、あの俺の初撃でこの暴れぶりだ。

 首を切れるのはあまり期待はしない。 

 

 想像と言う名の模擬試験を終えると、その時を待った。ただ、正直集中はできてない。 


 少しでも遅れると、それが致命傷になる。

 その条件が、脳裏をちらついてくる。


 俺が無理だったら、その時点で・・・。


 すると船体が海に飲み込まれるように傾いてきた。


 来る!!


 予想通り船体右斜め上にその化け物は、最初のように姿を現した。


 ありがたいことに反応は反射的だった。いちいち考えていたら、間に合わなかったと思う。


 この船と同じくらいの太さを持つ首に、この研ぎ澄まされた名刀を轟かせる。


 届くまでの歩数はたったの一歩。

 走るというより、一直線を描くように飛んだ。


 船との距離は数十メートルはあるけど、あの化け物にとってはこの距離がストロングポイントなんだ。


 こいつが先か、俺が先か・・・。


 こいつは遅すぎる。

 そして、俺の剣が速かった。


「よし!!」


 雷鳴を轟かせ襲ってくるそいつを、神を気取ったそいつを、俺は現実に落としてやった。


 ただ、切り傷をあたえることはできなかった。

 ちくしょうめ。


 悔しいけど、切るというより、剣で首を殴ったと言ったほうがいいだろう。


「よし!よくやったぞ!!!!」


 船員たちの安堵の声と一緒に、船長からお褒めの言葉が投げつけられた。


 恥ずいけど、ちょっと頬が緩みかけた。


 勘違いしないでよね!


 何照れてんだ俺、いや照れてないけど!

 

「この状況を維持してこいつの海域から出るよ!あんたら踏ん張んなさいよ!」


 おお!と、ほとんどの船員はある場所に手を向けている。が、今はそんなことどうでも良い。


 理屈も原理も、全てはその後を作ってからだ。


 視線を下に向ければ、とてもじゃないが海と呼べるようなものではなかった。


 いくつもの波と波が殺し合う地獄だ。


「もう一度、あの鳥を出さないと」


 船とはかなり離れてしまった。

 

 それにこれを何回もするなら、あの鳥はいつだって使えるようにしとかないと。


 もう最初の時みたいに深く考える暇はない。

 すぐに使わないと、終わる。


「こい!!」


 瞬きにも見えるほど素早く目を閉じ、目を開けた。


 思い通り、青い風はもう一度あの鳥を作り出した。しかも、一回目の時よりも素早くだ。


 空と海の狭間もわからないこの空間で、鳥の背中にまたがる。


 この鳥をもう一度出せたんなら、話は変わるぞ。

 嬉しいことに、完全に感覚も掴めた。完全感覚だ。


「このまま飛んで、船の上に身体を固定だ」


 鳥に指示を残し、真下の船に戻る。

 そしてもう一度船尾に身体を固めた。


 あの一撃が決まってから、良い感覚が続いてる。

 そうだな、ノッテルってやつだ。


「ハル、道は見えた!?」


 舵を取る船長が船内にいた少女に、崖っぷちから助けを求めていた。


 あの子は、航海士かなにかなのか?


「まだ・・・あと、少しッ」


 見てみれば、その小さな額から魔法陣のようなものが何枚も重なり、ツノのように生えていた。


 これも魔法なのか?


「ッ!?名無し!」


 船長はまた一段と焦りの強さを上げて、真っ直ぐでダイヤモンドみたいな瞳で俺を呼んでくる。


「なんだ?」


「あの野郎本気だ!さっきまではただ私らを舐めてただけだった!」


 どいうことだ?あれが遊び?

 俺がいなかったら終わってたんだぞ?


「なんでだよ!?」


 何とか声を張り上げる。


「波のタイプが変わった!さっきまでとは別格だ、何か来るわ!

 君たち、船全体に守利の魔法をかけなさい!何がくるかわかるまで私も加わる!」


 船長は、固く不動だったその手を舵から離し、足元に手を力強く押し付けた。


「守りよ!!!」


 その言葉と共に、船全体に巨大な結界が張り巡らされた。こんなのを見せられると、ついつい置かれた状況を忘れて、感心して見入ってしまう。


「守りよ・・・」


 出なかった場合恥ずかしいから、誰にも聞こえない声で唱えてみた。


 ハハ、何も起こらないみたい。

 初めてこの爆音に感謝するよ。

 

「名無し、守りの魔法は!?」


 声抑えたのに!


「使えない・・・!」


「この役立たずが!!てめぇ人じゃねえぞ!!」


 ちくしょう何も言い返せねぇ。

 でも仕方ないだろ使えないんだから。


「ハルはわかったらすぐに、そこら辺にいる奴に伝えなよ!」


「はい!」


「この戦い、全力で逃げるわ!!」


 ゴゴゴとまた違う音色が響いてくる。船長の言う通り、何かが来るのかもしれない。


 何をするつもりなんだ?


 するとその謎が、化け物と共に姿を現した。

 正直、謎は謎だからこそ怖い。


 正体を知れば、意外と大したことないことが多い。


 だが、こいつは違う。本物だ。


「・・・マジか」


 本当にさっきまでのは、遊びだったのか?

 こいつは、本当に神かなんかなのか?


 俺も含め、船員たちも、この船に乗っている全員が、打って変わって下から見上げていた。


 何人かの船員は、恐怖を抑えるのに必死で、唾を飲み込むことしかできていない。


 ここは、現実なのか?

 逃げれるのか、あれから?


 あんな、化け物から?


 あんなのは、海の王どころじゃない。

 この世の神だ。


 ・・・だから何だ!

 俺はまだ、怖がってなんてない!

 

 もう下になんて、いってやらないんだ。


「船長俺が行く!

その、ハル?がわかるまで時間を稼ぐ!」


「ああ任せた!」


 船長は、流石に船長だ。

 まったくもって冷静だ。


 その海の王者はとうとう、天をも我が物としようとしている。こいつは上から俺たちを、正真正銘叩き潰すつもりらしい。


 さては、防がれたのが気に障ったとかか?


 この化け物は頭から下の体も水中から離れ、遥か深くの海中で折りたたみ隠していた翼を天に広げた。


 ざっと、100メートル以上。 

 てか、それぐらいしかわからない。


 とにかく、デカい。


 なのに水中には、まだその身体の大半が潜っている。実際波は依然地獄のままだ。


 海にも空にも、逃げ道はなかった。


「こい!」


 だから、今から俺たちで作る。


 何度だって海に帰らしてやる。


 船から飛び出し、鳥の背中に跨った。


 雲が上がっていて、このままじゃ宇宙に届きそう。 きっとこれもあの化け物の仕業だろう。


 正面から行くのは、いくらなんでも無謀だ。


 水面から高さ二十メートル、奴からしてしまえば低空飛行の位置から、背後を取るために回り込むように風を吹かせる。けど、時間はかけられない。


 翼には、模様に見えるくらい火花が散っていた。きっとあの翼こそが、稲妻の源なんだ。


 なら、まずはあれを何とかすれば、さっきみたいな近距離戦になるかもしれない。

 

 たぶん!!


 目標は決まった。


 船は稲妻の攻撃になんとか耐えている。


 早くこっちからも攻撃をしかけないと、長くは持たないかもしれない。


 けど、体を前のめりに倒すとその視線に気が付いた。

 

 たしかに奴は、船を攻撃している。

 ただ、あのスケールにしては見劣りする。


 これから本格的に攻撃するのかもしれないと、そう考えていた。でも、違った。


 今わかった。


 あいつの、剃刀よりもするどく、雷よりも尖った眼球は俺を追っていた。

 

 さらには、妙に知的さを感じさせた。


「何かを・・・疑っている?」


 ただの直観だ。

 なのに、謎の説得力が神経を巡った。


 あいつは俺を狙っている・・?


 それとも、疑っている?


 直感から妙に説得力を感じる疑問が出てきた。

 俺ではない誰かの感覚みたいに感じる。


 

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